なんとダイスは消滅していなかった!
依然としてその場に立っている。
ただ、
服も全身も魔法による影響でボロボロ。
呼吸は荒くて、
泥酔しているかのように足がフラフラだ。
見るからに瀕死状態なのが分かる。
それでもこの威圧感。
まだ僕たち程度なら簡単に抹殺できそうな
力を残しているのかも。
なんとダイスは消滅していなかった!
依然としてその場に立っている。
ただ、
服も全身も魔法による影響でボロボロ。
呼吸は荒くて、
泥酔しているかのように足がフラフラだ。
見るからに瀕死状態なのが分かる。
それでもこの威圧感。
まだ僕たち程度なら簡単に抹殺できそうな
力を残しているのかも。
まさか神聖魔法を
使うとは思わなかったぞ。
正直、舐めすぎていた。
素直に褒めてやる。
そりゃ、どーも♪
だからこそ、
貴様らはここで
消しておかねばならん。
なんとしてもな!
脅威になる、確実に!
その芽は
摘んでおかねばな!
ヒッ!
執念に満ちた目。
全てをなげうった相手の恐ろしさを
あらためて感じる。
その空気に僕の足は金縛りにあったように
動かなくなってしまった。
直後、ダイスの掲げた手の中で
魔法による業火が生まれ、
渦を巻いて大きく成長を始める。
このペースで魔法が練られていくと、
海岸一帯を焼き尽くすくらいにまで
巨大な火の玉に成長しそうだ。
はぁああああぁ……。
逃げるぞ、トーヤ!
あ、足が……
動かないんだ……。
なんだとっ!?
くっそ!
俺の結界魔法で
防ぐしかないか!
ひゃひゃ
ひゃひゃ!
おぶぅっ!
っ!?
その時、ダイスは全身から血を吹き出し、
その場に倒れ込んで動かなくなった。
成長途上にあった炎は
エネルギー源であるダイスの魔法力が
途切れたことにより消滅する。
そして肉塊と化したダイスの
かたわらに立っていたのは、
両手にダガーを持ったクレアさんだった。
頬や体には返り血が付いていて、
視線を下に向けつつ
ニタニタと微笑んでいる。
ダイス、私がいることを
忘れていたのかしら?
蚊帳の外で
ちょっと寂しいわね。
さっき言ってたわよね?
隙を見せる方が悪いって。
その言葉、お返しするわ。
…………。
あらっ♪
私としたことが
ダイスはすでに返事が
出来ないのを忘れてたわ。
でもあなたは私の存在を
忘れていたんだから
お相子よね?
仲間である僕であっても
気分が悪くなるくらいの非情さだ。
でも魔族はクレアさんみたいな方が
多数派なんだよね。
僕の回りにいるみんなのように
優しい魔族の方が珍しい。
それに今は戦いの最中なんだ。
こんな時代を変えるためにも
今は涙を越えて進まないといけない。
立ち止まったらいけないんだ。
そうだ、トーヤ。
こいつの衣を剥いで
身につけておくといいわ。
えっ?
ボロボロだけど
多少の効力は
残っているから。
どういうことです?
ダイスの纏っている衣は
多くの魔法を弾き、
自動回復もするという
チートなアイテムなの。
もしかして、
アポロの破邪魔法が
効かなかったのも!?
そういうこと。
でもさすがに神聖魔法は
防ぎきれなかったみたい。
それを知ってるなら
もっと早く
教えてくれよな。
教える前に勝手に
戦いを挑んだのは
誰かしらね?
う……。
さすがにアポロは
何も言えなくなってしまう。
そうだよね、
クレアさんがその説明をする間なんて
なかったもんね。
それにしても僕の察した違和感は
やっぱり気のせいじゃなかったんだ。
破邪魔法を食らったら
魔族なら無事で済むはずがないもん。
ほら、トーヤ。
早くコイツの衣を。
僕には必要ありません。
みんながいますから。
みんなが僕の最強の
武器であり防具であり
守るべき存在です。
兄ちゃん……。
トーヤさん。
さすがトーヤだぜ!
そうねっ♪
トーヤならそう言うと
思いました。
僕の正直で本気な気持ち。
それに対してエルムたちも
嬉しそうな顔をしてくれていた。
唯一、クレアさんだけは苦笑いをしている。
やれやれ……。
ま、そういうことなら
そのままに
しておきましょうか。
そうだそうだ!
こんなボロ、
トーヤが汚れるだけだぜ。
こいつの墓標代わりに
しておきましょう。
それがお似合いかも
しれません。
墓標といっても
すでにダイスの肉体は
消滅してしまって
いますけどね。
こうして僕たちはダイスの襲撃を退け、
副都の入口へ向かったのだった。
でも最初からこんなにピンチになるなんて
やっぱりそう簡単に副都を
攻められるわけじゃないってよく分かる。
今後も気を引き締めていかないと……。
次回へ続く!