僕がエリクサーを調薬できることを
知っているのはお父様だけ。
そのお父様がいない今は、
僕だけがその事実を胸に秘めている。
そして今後もそれを
誰かに話すつもりはないし、
話すわけにはいかない。
例えそれがアレスくんであったとしても。
僕がエリクサーを調薬できることを
知っているのはお父様だけ。
そのお父様がいない今は、
僕だけがその事実を胸に秘めている。
そして今後もそれを
誰かに話すつもりはないし、
話すわけにはいかない。
例えそれがアレスくんであったとしても。
ライカさん、エルム。
ユリアさんのことを
お願いします。
僕はアポロが
魔法を使った直後、
治療に向かいます。
分かりました。
はいっ!
では、トーヤさんに
身体能力が上がる
魔法をかけておきます。
ありがとう、
ライカさん。
クロードは敵襲に備えて
周囲を警戒していて。
敵の一味が卑怯な手を
使ってくるかも
しれないから。
ですね。お任せを!
僕はライカさんから身体能力向上の魔法を
かけてもらった。
おかげで体が軽くて俊敏に動ける。
思いっきり踏み込めば
ケンタウロス級のスタートダッシュも
可能な感じだ。
食らえッ!
断罪の光!
おぉおおおぉ!
アポロから放たれた神々しい光の塊が
ダイスに命中してそのまま包み込んだ。
耳なりのように耳の奥に響く
甲高い音と炸裂音。
そばにいるだけで僕たち魔族は
気分が悪くなってくる。
思わず耳を手で塞ぎ、
その場でうずくまって
耐えることしか出来ない。
さらにトドメを刺すかのように、
間髪を入れずに遥か天空から
光の矢が雨のように降り注いでいく。
ようやく音と光が止まり、
徐々に視界もはっきりとしてくる。
それにしてもこれが神聖魔法か。
その名前とは裏腹にエグい攻撃だ……。
…………。
ぐ……。
アポロ!
僕はアポロに駆け寄り、
膝から崩れかかった彼の体を支えた。
直後、エリクサーの入った瓶を
彼の口に添えて中身を飲ませる。
これですぐに回復するはずだ。
どうだ……トーヤ。
俺の凄さが分かったろ?
弱々しく口を開くアポロ。
でもエリクサーを服用したなら、
普通ならすでに自力で
立てていてもおかしくない。
それが出来ていないということは、
神聖魔法を使った影響が
それだけ大きいということなんだろうな。
エリクサーの力を持ってしても
ここまで回復が鈍いとは……。
神聖魔法を扱うことがどれだけ魔族の体に
負担がかかるのかが分かる。
――いや、そもそも魔族が扱える魔法じゃ
ないんだけどね。
アポロ、すごいよ。
こんなに強力な魔法が
使えるなんて。
だろ?
でもトーヤもさすがだな。
飲ませてくれた回復薬、
よくキクぜ……。
こんなに早く
楽になったことは
ないからな。
そう言ってもらえて
僕も嬉しいよ。
さぁ、みんなの
ところへ行こう。
あんま行きたくねーな。
ユリアにゲンコツを
食らいそうだ。
それは仕方ないよ。
アポロはわがままを
通したんだから。
でもタンコブが出来たら
また治療してあげるから。
うぅ……。
余計な気遣いだっての。
僕たちは思わず声をあげて大笑いした。
たった今まで強敵と戦っていたのに、
ちょっと気が緩みすぎ泣きもするけど
勝ったんだからこれくらいはいいよね?
待て!
喜ぶのは早いぞ!
いぃっ!?
バカなッ!
っ!
振り向いてみると、
光が完全に収まったその場には
ダイスが立っていた。
血走った目で
こちらを呪い殺そうかという勢いで
睨んできている。
次回へ続く!