僕はユリアさんの治療を続けながら、
アポロの様子を見守っていた。
一方、ユリアさんは下唇を噛みつつ、
瞳を潤ませている。
これからアポロがやろうとしていることを
止められなかったのが悔しいのかも。
……でもユリアさん自身を
大切に思ってのアポロの行動だから
嬉しい部分もあるはずだ。
そう考えると、心の中はぐちゃぐちゃで
自分でもどう反応していいか
分からないというのが正直なところか……。
僕はユリアさんの治療を続けながら、
アポロの様子を見守っていた。
一方、ユリアさんは下唇を噛みつつ、
瞳を潤ませている。
これからアポロがやろうとしていることを
止められなかったのが悔しいのかも。
……でもユリアさん自身を
大切に思ってのアポロの行動だから
嬉しい部分もあるはずだ。
そう考えると、心の中はぐちゃぐちゃで
自分でもどう反応していいか
分からないというのが正直なところか……。
おい、お前!
まさか自分が
ザコだと罵った俺から
逃げねーよな?
逃げるわけがなかろう。
ザコの攻撃くらい
武人の情けで受けてやる。
むしろ逃げれば
私自身のプライドが
傷付くからな。
その言葉、
後悔させてやるぜ。
うまい!
アポロ、うまく相手を
攻撃に誘い込んだぞ。
……でも破邪魔法が
通用しない相手に
何をするつもりだろう?
まさか相手を道連れに
自爆するわけじゃ
ないよね?
それに近いことよ……。
ユリアさん……。
どうやら僕の心の声が
思わず漏れていたみたいだ。
それを聞いたユリアさんがアポロの方を
じっと見つめながら呟いた。
それにしても
自爆に近いことだなんて……。
トーヤくん、
アポロを止めちゃダメよ?
これは彼の覚悟と
意思なんだから。
で、でも……。
この攻撃でアポロ自身も
大きなダメージを負う。
だからその時、
トーヤくんは彼を
治療してあげて。
それが仲間である
キミの役目だよ。
っ!?
そうだ、ユリアさんの言う通りだ。
僕はアポロの意思を尊重するとともに
彼の力を信じてあげなきゃいけない。
そして傷付いた時にはその治療をする。
僕はグループのリーダーだから。
僕は彼の仲間だから!
僕は薬草師だから!!!
はぁぁぁ……。
魔法の詠唱に入ったアポロ。
ほどなくその足下に魔方陣が浮かび上がる。
でもあの魔方陣は
明らかに僕たち魔族が使うものじゃない!
……まさか……まさかあれはっ!?
あ、あれはっ、僕たちと対を成す種族、
天族が使うものだ!
天族とは天界に住む種族で、
魔界はもちろん
平界ですら接触をすることは
数百年に一度あるかないかとされている。
ただ、かつて交流があった時代に伝わった
彼らの使う魔法や技術を応用したものは
平界や魔界でもわずかに残されている。
僕が作る薬の一部にも
それに該当するものがあって、
お父様の書庫で天族に関する書物を
読んだことがある。
アポロの足下に浮かんだ魔方陣は
その中に記されていたものと同じだ!
バカなっ!
それは神聖魔法っ!?
へへ、さすがに
知ってやがったか。
だが、もう遅いぜ。
テメェはすでにこの魔法に
ロックオン
されてるからな。
ぐ……あ……。
確かにダイスの体には
いつの間にか黄金色の光の帯が
絡みついていた。
それによって体を拘束され、
身動きがとれないようだ。
ダイスの表情が焦りと苦痛に満ちている。
同時にアポロの額には脂汗が浮かび、
呼吸もどんどん乱れていく。
ぐ……。
アポロ……。
神聖魔法はね、
本当の意味で
私たち魔族にとって
扱えざるべきもの。
人間が生み出した
破邪魔法とは次元が違う。
えっ?
相反する光と闇が
同居しているような
ものだからね。
体にかかる負担は
相当なものなのよ。
気を抜けば
自身が消滅しかねない。
そんなっ!
安心して。アポロは
完全に操る技術を
身につけているから。
そういう点では
彼自身が言うように
魔界一の魔術師かも。
天才には違いないわ。
こんな奥の手を
隠していたのか……。
ただ、これを使うと
しばらくはインターバルが
必要になるわ。
満足に体を動かすことさえ
出来ないでしょうね。
大丈夫です。
その間は僕がアポロを
サポートしますから。
何があっても!
……うん。
お願いするわね。
そうか、アポロの存在そのものが
消滅しかねない状況になるのか。
そうなると、
自己治癒能力に頼る回復薬よりも
外部からエネルギーを供給するタイプの
回復薬の方が適しているだろうな。
そして魔法力の回復も同時に出来る方が
魔術師であるアポロには向いているはず。
その条件に合う回復薬というと――
霊薬(エリクサー)だ。
万が一、
敵に奪われたら逆にこちらが危険だから、
これを持っていることは
誰にも言っていない。
最大の武器は最大の脅威にもなりうる。
つまり――諸刃の剣!
次回へ続く!