とうとう僕たちの船は
副都のすぐそばまで到着した。
水平線にはうっすらと副都が見えている。
今のところ襲撃してくる気配はないみたい。
でもここは敵地だから油断はできない。
いつ何が起きるか分からないから、
常に警戒をしておかないと。
とうとう僕たちの船は
副都のすぐそばまで到着した。
水平線にはうっすらと副都が見えている。
今のところ襲撃してくる気配はないみたい。
でもここは敵地だから油断はできない。
いつ何が起きるか分からないから、
常に警戒をしておかないと。
それじゃ、
手はず通りにお願いね。
バラッタ船長。
おう、任せておけ。
今後の作戦だけど、
バラッタ船長はこの船で副都を砲撃。
僕たちはその間に小型艇で副都へ近付いて
敵の本拠地を叩くことになっている。
ちなみにクレアさんがアレスくんたちと
繋ぎをつけてくれているから、
副都攻撃グループも
それに呼応して動くはず――。
ぅわぁっ!
不意に背中を叩かれた。
振り向いてみると、
そこにはアポロがいて
ケタケタと笑っている。
なーに深刻そうな顔を
してんだよ?
そうかな?
でも深刻な顔をしていても
おかしくない状況だと
思うよ?
魔界一の大魔術師である
俺がいるんだぜ?
安心しろって!
魔法容量に
難があるくせに
安心なんて出来るわけが
ないでしょ。
続いてユリアさんがやってきた。
ユリアさんはアポロに歩み寄ると、
指で彼の額を軽く突く。
バ、バッカ!
トーヤの魔法力回復薬が
あるだろーが!
それを使えば問題ねーよ。
つまり魔界で最強の
コンビだね、僕たちは。
――あ、それは違うな。
俺たちのコンビは
魔界で二番目だ。
えっ? それじゃ、
魔界一のコンビは
誰と誰なの?
するとアポロはキザっぽく『ヒュー』と
口笛を吹き、
額の上にかかったフードを掻き上げた。
そして立てた親指でユリアさんを指し示す。
俺とユリアのコンビさっ♪
…………。
ちょっと、アポロ!
トーヤくんが反応に
困ってるでしょーが!
あはは、いや、
よく考えてみると
そうかもなぁって
思ってただけ。
でもその最強のコンビと
二番目のコンビが
一緒にいるんだから
大丈夫だよね、きっと。
トーヤ……。
トーヤくん……。
ふたりはキョトンとして僕を見ていた。
何か変なことを言ったかな?
本当にそう思って言ったんだけど……。
やっぱ、お前いいヤツだな。
魔族らしくねーよ。
そ、そんなぁ……。
でもこれからの魔界は
お前みたいな魔族が
増えていくと良いな。
俺たちは時代の変わり目に
立っているのかもな。
そしてその真ん中にいる。
そんな気がする。
アポロ……。
そうかもね。
だから私たち、
もっとがんばらないとね♪
ユリアさん……。
うんっ、そうだねっ!
僕たちは笑顔でハイタッチをした。
頼もしい仲間が一緒にいてくれて
僕は本当に心強いし、幸せだ。
その後、僕たちは船から海面へ降ろされた
小型艇に乗った。
これは陸走船と同じように
魔法力で海面からわずかに浮かんでいて
海でも陸でも滑るように動けるらしい。
サンドモービルみたいなものかな?
運転するのはクロード。
ただ、操作方法がサンドモービルと
似ているらしく、
万が一の時のためにライカさんも
運転できるように練習をしたとのこと。
では、バラッタ船長!
行ってきます!
あとはお願いします!
おう!
気をつけて行ってこい!
戻ったら一緒に
酒でも飲もうや!
イリスさんも無理せずに
がんばってください。
うぃ、トーヤ提督。
では、出発します。
落ちないようにしっかり
掴まっててください。
トーヤやエルム様は
帽子が飛ばされないよう
気をつけてくださいね。
うん、分かった。
はいっ!
小型艇はゆっくりと動き出し、
戦艦を離れていった。
その直後、
戦艦も動き出して
あっという間に僕たちを追い抜いていく。
こうして端から見ていると
その機動力をより強く実感する。
ちなみに追い抜く瞬間、
船員さんたちはこちらに向かって
敬礼をしていた。
一瞬のことだったから敬礼を返すことは
出来なかったけど、
その代わり心の中で彼らへの敬意と無事を
想ったのだった。
次回へ続く!