射撃のコツを掴んだ僕は
その後も敵艦を撃沈していった。
エルムも順調に潰していっているみたい。

その様子を見ていくつかの船は
逃げだそうとしていたけど、
逆にそれは『沈めてください』と
言っているようなものだ。

だって逃げることに精一杯で
反撃をしてこないんだから。


その全てに攻撃をたたき込み、
もはや僕たちの船の前に
立ちはだかる敵艦は
一隻もいなくなっていた。

周囲には潮の香りに混じって
火薬の臭いが充満し、
海面に浮かぶ敵艦の残骸をかき分けて
僕たちの戦艦が戒めの海域を突き進む。
 
 

イリス

殲滅完了です、トーヤさん。
エルムさんも
お疲れさまでした。

イリス

あとは私たちだけでも
対応可能ですので
おふたりは艦橋へ。

トーヤ

分かった。
じゃ、エルム。
艦橋へ戻ろう。

エルム

はいっ!

 
 
こうしてこの場はイリスたちに任せ、
僕とエルムは艦橋へ戻った。

するとアポロが駆け寄ってきて
後ろから僕に抱きつき、
無造作に頭を撫でてくる。
 
 

アポロ

スゲェよ、トーヤ。
あんなに正確に射撃が
出来るなんて。

アポロ

敵艦がどんどん
沈んでいく様は
圧巻だったぜ。

トーヤ

ありがとう。

バラッタ

確かに俺の想像以上の
結果だったぜ。
ここまでやるとはな。

ライカ

さすがトーヤさん。

トーヤ

いやぁ……てはは♪

クレア

あまり褒めすぎないの。
天狗になるから。

ライカ

でも今回の戦果は
褒めすぎても
褒め足りないくらい
素晴らしいものですよ。

バラッタ

ま、姉ちゃんの
言うことにも一理ある。
勝って兜の緒を締めよ。
まだ油断はするなよ?

バラッタ

無事に副都へ辿り着いて
ようやくスタートライン。
最終目標はさらに
その先にあるんだからな。

トーヤ

そうですね。

バラッタ

だからみんな
見張りを怠るなよ?
これで敵の襲撃が
終わりとは限らねぇ。

ユリア

はい!

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、僕たちは周囲の警戒を続けながら
副都へ向けて航海をしていった。
幸いなことにそれ以後は敵の攻撃がなく
順調に進めている。

そして夜になり、
僕たちは艦橋で今後の作戦について
話し合うことになった。
 
 

クレア

それじゃ、
副都攻撃作戦を
説明するわね。

クレア

副都攻撃グループは
この戦艦からの
艦砲射撃を合図に
突入する手はずに
なっているわ。

クレア

バラッタ船長、
その後も断続的に
艦砲射撃を
お願いします。

バラッタ

任せておけ。

 
 
バラッタ船長は
得意気にサムアップをした。


同じ船長でもウィル船長と違って
信頼できるし、
頼もしく感じるのはなぜだろう?

それが人徳ってやつなのかな?
 
 

クレア

私たちは小型艇で
この船から離脱して
副都へ向かう。

クレア

そして艦砲射撃による
町の混乱に乗じて城へ。
あくまでも
目立たないようにね。

エルム

それでも
見つかってしまうのは
時間の問題では?

 
 
そうだよね。
副都の一般市民は逃げだそうとして
町の外へ向かうわけで、
僕たちはその流れと逆行するんだから。

少なくとも動きが不自然だとは思う。
 
 

クレア

それでいいの。
私たちは敵を引きつけ、
副都攻撃グループを
サポートするのが
役目だから。

クレア

また、
さらなる攪乱を狙って
遊撃グループを2班に
分けようと思うの。

ユリア

ふたつに?

クレア

1つは副都攻撃グループと
合流する班。
もうひとつは隠し水路から
城へ忍び込む班。

トーヤ

隠し水路ですか?

クレア

どこの城にも
抜け穴のようなものは
あるものよ。

クロード

では隠し水路を進む班が
遊撃グループとしての
囮なんですね?

トーヤ

えっ?
隠し水路を進む方が
本隊じゃないの?

 
 
隠し水路を使えば
そこから城の奥へ忍び込める。
だからそっちが本隊だと思うんだけど。

囮というのはおかしいんじゃないのかな?
 
 

クロード

普通はそう考えます。
でも敵は王都側の戦力が
隠し水路を
通ってくることを
想定していて当然です。

クレア

隠し水路の情報に関して
ミューリエが知っていると
敵も分かっているから。

クレア

つまり待ち構える戦力が
配置されていて当然。

クレア

だから隠し水路班は
副都攻撃グループへ集まる
敵の戦力を分散させるのが
役割ってこと。

トーヤ

なるほどぉ……。

 
 
戦略っていうのは奥が深いなぁ。
先の先まで
読まないといけないんだもんね。

僕には出来ないよ……。
 
 

クレア

私たちの主力は
アレスたちと合流して
直接サポートする。

クレア

問題はメンバーを
どう分けるかよね。

クレア

ちなみに副都でも
私たちの魔法は
使えないと
考えた方がいいわね。

ユリア

アポロは戦力に
ならないってことか。

アポロ

こらっ!
その通りだけど、
言い方ってもんが
あるだろ!

クレア

じゃ、アポロとユリアは
隠し水路班決定ね。

ユリア

私もっ!?

クレア

別々よりはいいでしょ?
ねぇ、ユリア?

ユリア

え……あ……。

ユリア

……うん。

クレア

トーヤには
ふたりの回復を
お願いするわ。

トーヤ

えっ?
だって隠し水路班は
囮なんだよね?
本隊に僕がいないと
ダメなような気が……。

トーヤ

っ!?

 
 
その時、
僕はクレアさんの意図を理解した。
隠し水路班は囮と見せかけて
実は本隊なんだ。


だって僕を敵のボスのところへ
辿り着かせるのが最終目標。

そこから推測するなら、
僕の入る隠し水路班が
本隊だと考えるのが自然だ。



つまりこれは敵の裏の裏をかいた戦略。
うーん、やっぱり戦略というのは奥深い。
 
 

トーヤ

分かりました。
僕は隠し水路班の
回復を担当します。

クレア

ライカ、あなたには
合流班の回復担当を
お願いしていい?

ライカ

えっ?

クレア

薬草師がふたりいるなら
分散する方が
メリットあるでしょ?

クレア

それに別々の方が
再会するまで死ねないって
気持ちを強く持てるから。
そうよね、ライカ?

ライカ

っ!?

ライカ

分かりました。
合流班に入ります。

 
 
なんだかライカさんは頬を真っ赤に染めて
照れているみたい。

それになんか僕の方を
チラチラと見ているような……。
どうしたんだろう?
 
 

クレア

エルムは隠し水路班に
入ってもらえる?

クレア

あなたにはあとで
あらためて魔法を
ラーニングしてもらうわ。

クレア

戦力として
期待してるから。

エルム

はいっ!

トーヤ

エルム、
無理はしないでね?

エルム

……多少なら
無理もしますよ。
兄ちゃんのために。

トーヤ

エルム……。

 
 
そう言ってもらえるとすごく嬉しい。

でもエルムにはニーレさんの分も
生きてほしいから複雑な気分だ。
 
 

クレア

私とクロードは合流班。
こちらの班は
私がリーダー代行として
指揮を執るわ。

トーヤ

お任せします。

クロード

がんばります!

クレア

それじゃ、
副都の近くへ着くまで
準備をして待機ね。

トーヤ

みんな、
絶対に勝とうね。
生きて会おうね。

 
 
僕たちは息を合わせ
『おぅ!』と声をあげた。



副都突入まであと少し。
この作戦は絶対に失敗は出来ない。

しっかりと準備をしておかなきゃ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第197幕 始動! 副都侵入作戦!!

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