ガンツ

一点突破だ。
先に正面から来る
左の軍を片付ける。

ガンツ

一丁あがり。

勢いよく突撃してきた敵将は、

一合も切り結ぶことなく

ガンツに討ち取られた。



 騒然とする敵兵達。

ざわめく敵兵からは

「七戦鬼」だの「サヴァン様」と

数多く聞こえた。

おそらくこの敵将のことだろう。

兵士

ガンツ様、
一部の兵が
敵兵に囲まれております。

ガンツ

っく、
真正面と言ったはずだぞ!
なぜ回り込んだ!?

そう言いながらも

もう一軍に騎首を向けるガンツ。



遠目に兵士が苦戦を

しているのが分かる。

ガンツ

俺が行くまで
持ち堪えろよ!

騎首を返すガンツ隊の左右からは

将を失ったが戦意を失っていない

敵兵が迫りくる。



それを切り開くガンツ隊の兵士達。



遠くではもう一人の敵将――

おそらくは七戦鬼と称される将が

回り込んだ兵士達を

次々となぎ倒している。

ガンツ

おらぁっ!!
そこのヘボ将!
遊ぶ相手は
俺がしてやる!

レジーナの本隊は

各自が前面の敵と激しくぶつかる。



落馬する者、

槍に突かれる者、

武装した馬に跳ね飛ばされる者。



踏み荒らすかのような濁流の如き突撃は

速さと激しさを兼ね備えていた。

七戦鬼ネロ

馬鹿共め!
我等相手にしかも、
これほどの数的不利を
覆せると思っているのか?

七戦鬼アッシュ

じわりと後方から包囲を強め、
殲滅しろ!

七戦鬼カイン

レジエレナ王女!
身の安全は保障する。
無謀な戦いは避けるべきだ!

七戦鬼の三人は

突撃してくるレジーナ軍を迎え撃ち、

そして包囲しようと軍を動かしてくる。

レジーナ

ユベイルの騎士達よ!
返答は剣で答えよう!

レジーナはカインと、

アッシュとネロが、ギュダと交差する。



レジーナの剣をカインが受け、

アッシュとネロの同時攻撃を

ギュダが捌いたのだ。



そして雑兵を跳ね飛ばしながら

道を切り開くレジーナ達。



そして躊躇うことなく

七戦鬼を無視して

ユベイル城に馬を進める。

七戦鬼アッシュ

我等を蔑ろにするか!

レジーナ

七戦鬼などと
他と並列に冠され
居丈高になっている貴様等は
我々からすれば
雑兵と変わらん!!

七戦鬼カイン

ぞ、雑兵だと。

七戦鬼アッシュ

おのれぇ~、許さん!
皆殺しだ!!

レジーナ

皆殺しだと!?
我が精強なる兵は
容易く負けん!!

雪崩のように突き進むレジーナ軍。



しんがりの兵が奮闘して

回り込む敵を寄せ付けていない。

ギュダ

ブルチズ!
ベッチー!
姫の兵がどれだけ精強か
奴等に見せつけるのだ!

七戦鬼ネロ

あん?
雑兵の分際で七戦鬼である
私を討ちにくるなど……

兵士

うおおおおぁ!!

七戦鬼ネロ

なっ、にぃぃぃ

兵士

ナイス!
ベッチーー!!
おらぁトドメだ!!

 ベッチーと呼べれた兵士が

七戦鬼ネロを負傷させ、

ブルチズと呼ばれた兵士が

連携でトドメをさした。

レジーナ

期待どうりだ我が兵よ。

後方の戦いを視野に収め、

思いを言葉にするレジーナ。



姫が見ていてくれる――

そんな思いが兵士の

戦意を高める。

七戦鬼アッシュ

ば、馬鹿な……
ネロがあんなにあっさりと。

兵士

次はお前だ!
レジーナ軍を
舐めるなっ!

七戦鬼アッシュ

俺は奴のように……

一突きの切っ先が

アッシュの首元に吸い込まれていた。



突撃の勢いをそのままに

自分の馬から跳躍しての捨て身の攻撃。



それは七戦鬼アッシュを

絶命させるには充分な威力だった。

ギュダ

モルテの奴め。
無茶をする。

レジーナ

素晴らしい!

突撃の脚を止めてから、

レジーナは振り返り

モルテと呼ばれた兵士を褒め称えた。



ギュダもその活躍ぶりに

珍しく口角を上げている。

七戦鬼カイン

な、なんてことだ……

七戦鬼カインは、

自身も手傷を負わされ

レジーナ軍の精強さに驚いていた。




将でない兵士の強さが

想像を越えているのだ。





そして兵士達が

包囲を突破したレジーナの元に集結する。

レジーナ

分かったか。
肩書きなどにあぐらを
かくものではない。

七戦鬼カイン

ぐ……

レジーナ

それではカイン。
まだ続けるか?
君はあの二人と違って
見込みがありそうだ。

七戦鬼カイン

私に降伏しろと言うのか?

レジーナ

そうだ。だが返事を
待っている間はない。

ユベイル城の東西から

サロディア軍、タキア軍が

進軍してきているのが見える。

レジーナ

我々はユベイル城に突撃する。
私の元で戦うにせよ
まだ我々と剣を交すにせよ
どちらでもよい。
我々の後に続け。

あっという間に整列し

ユベイル城に進むレジーナ軍。



カインはレジーナ軍の強さ、

思いもよらぬタイミングでの降伏勧告、

機敏にして思惑外の進軍、

全てに驚きを隠せなかった。



無論、

降伏などするわけもなかったが、

レジーナの放った言葉が

どれもこれも胸につっかえて離れない。

七戦鬼カイン

レジエレナ王女……、
私は見極めねばならん。

カインは残る兵を纏め上げ

レジーナを追いかけた。

ユベイル城勧告戦での戦死者

ルリ





テオフィルス





ペルペーン





ズィルバー





アイチェス





その他37名、計42名

恐れを知らぬ雄姿を見せ

永眠

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