僕たちの乗っている戦艦には
機動力を高める機構が備えられていた。
でもこれだけではなく、
まだまだ秘密がありそうだ。
――と思っていたら、
やはりというべきか
バラッタ船長がさらに話を続ける。
僕たちの乗っている戦艦には
機動力を高める機構が備えられていた。
でもこれだけではなく、
まだまだ秘密がありそうだ。
――と思っていたら、
やはりというべきか
バラッタ船長がさらに話を続ける。
それに敵の戦艦は
砲台の数こそ多いが、
それは射程の短い
臼砲だということも
示している。
性能に劣る分、
数でカバーしている
わけですね。
そういうことだ。
しかも船体に砲身を出す
穴がたくさんあるから
船体強度はどうしても
落ちるんだよ。
対してこの船が
装備しているのは
カノン砲。
射程が長くて威力もある。
だから砲台の数や
船体の穴は少ない。
なるほど、
攻撃力も守備力も
こちらの船の方が
上なんですね?
そういうこった。
だが、大砲の数が
多いのはやはり厄介だ。
敵の射程外から
さっさと潰していかないと
接近されて攻撃を受けて
こちらがジリ貧になる。
そうか、こちらから接近するということは
敵の射程にも近付くということなんだ。
そしてブレーキをかけたとしても
水の上では慣性が強く働いて
すぐには止まらない。
また、スピードや重さがあるほど
進んでしまう距離は長くなる。
機動力の高さが逆に仇になるわけだ。
しかも激しい動きをしていると
弾丸を命中させるのだって難しいし。
そこで確実に目標を
潰せる技術を持った
砲撃手が重要になる。
砲撃手ですか。
そうですよね、
分かります。
トーヤ、お前がやれ。
僕がですかっ!?
聞いた話によると
お前は普段から
スタッフスリングを
使っているんだろう?
スタッフスリング?
あ、フォーチュンの
ことですね?
フォーチュン?
あ、いえっ、
愛称ですので
気にしないでください。
するとバラッタ船長は
訝しげな顔をしつつも
『そうか?』と呟き、
軽く咳払いをしてから話を続ける。
要するにトーヤは
遠くからの狙撃には
慣れているはずだ。
そ、そうですけど
大砲なんて扱ったこと
ありませんよ!
だが、投てき系の武器を
メインに使っているなら
打っているうちに
すぐ慣れて
コツを掴めるだろう。
弾の装填は
俺の部下がやる。
トーヤは照準を合わせて
狙撃するだけでいい。
うーん、
それなら確かになんとかなるような
気はするけど。
まさかフォーチュンで磨いてきた技術が
そんな分野で役に立つなんて
思ってもみなかったなぁ……。
でもよ、
トーヤだけだと限界が
あるんじゃねーか?
はっはっは!
もう1人、
適任者がいるだろ?
クロードから聞いてるぜ。
誰のことですか?
エルムのことよ。
あっ!
そういうことですか!
ハッと息を呑むエルム。
もしかして投てき系の武器を使ったことが
あるのかな?
でも今までそんな話を聞いたことなんて
なかったけど……。
どういうことだよ?
ラーニングです。
兄ちゃんの狙撃技術を
ラーニングするんです。
そっか!
あの技はそういう使い方も
できるんだね?
でも命を削るのは
魔法をラーニングする時と
同じなので、
多用は出来ませんけど。
天才的な砲撃手が
2人いれば
攻撃力は申し分ない。
なるほど……。
色々と作戦が練られているなぁ。
クロードたちはこちらの持つ戦力や技術を
最大限に活用できるように考えて
準備をしていたんだね。
さすがというか恐れ入るよ。
そして殲滅を勧める
理由の3つ目は
地理的なことだ。
地理ですか?
ここから敵に背を向けて
逃げると、
戒めの海域の中心部へ
入り込んじまう。
一方、敵の艦隊の
いる辺りは
戒めの海域の外だ。
敵は魔法が使えて
こちらは使えない位置関係に
あるんだよ。
なにぃ~っ?
あいつら汚ねぇ!
アポロは思わず憤慨していた。
でもそういう状況もふまえて
僕たちを罠に嵌めようとしたのは
戦術的には納得いくかも。
敵も知恵が働きますね。
だから万が一の時は
この海域を突っ切って、
姉ちゃんの魔法で
離脱することもできる。
トーヤ、
これでも逃げを
選択するか?
分かりました。
敵と戦いましょう。
承知!
みんなもそれでいい?
はい!
分かりました。
任せておけ!
がんばりましょう!
こうして僕たちは
艦隊と戦うことを決めた。
そしてこの作戦を成功させるには
僕の役割も大きい――というか、
攻撃面においては
鍵を握っているといっても過言じゃない。
だから気を引き締めてがんばらないと!
次回へ続く!