なんと艦橋へ入ってきたのは
僕に色々と話をしてくれた
おじいさんだった。
その後ろには臨時雇いの船員さんたちが
立っていて、
彼に続いてぞろぞろと艦橋に入ってくる。
そして船員さんたちは斬り殺された
ウィル船長一派の船員さんたちの亡骸を
運び出し始めた。
なんと艦橋へ入ってきたのは
僕に色々と話をしてくれた
おじいさんだった。
その後ろには臨時雇いの船員さんたちが
立っていて、
彼に続いてぞろぞろと艦橋に入ってくる。
そして船員さんたちは斬り殺された
ウィル船長一派の船員さんたちの亡骸を
運び出し始めた。
あなたは!
よぅ、坊主。
立派にリーダーを
務めてるじゃねぇか。
感心感心!
この方はバラッタ船長。
勇者アレス様の
お仲間のおひとりです。
アレス様の紹介で
部下の船員さんとともに
今回の作戦への
ご協力をお願いしました。
バラッタさん、
その節はどうも。
おぅ、姉ちゃんも
元気そうだな。
そうか……そうだったのか……。
僕の思った通り、
おじいさんは只者じゃなかったんだ。
アレスくんに縁のある人なら
色々と納得が出来る。
そういうことですので、
ウィル船長がいなくても
問題ないわけです。
ご理解いただけました?
う……うぅ……。
では、絶望して
いただいたようですし、
そろそろお別れです。
クロードはウィル船長の口に布を詰め、
さらにその上から猿ぐつわを噛ませた。
こうなるとウィル船長は
唸ることしか出来ない。
その直後、
クレアさんはダガーをウィル船長の
喉元に突き立てる。
その勢いで切っ先が少し突き刺さったのか
わずかに血が滲む。
一方、ウィル船長は絶え間なく涙を流し、
体を必死に震わせて唸っていた。
――さよなら。
っっっっっ!
ダガーがウィル船長の喉に
突き刺さる直前、
彼は失禁をしながら気を失ってしまった。
口から泡も吹いている。
ちょっと可哀想かも……。
脅しすぎましたかね?
いいんじゃない?
命までは取らないんだから
あれくらい怖がらせて
ちょうどいいわよ。
えっ? 命を取らない?
トーヤはウィル船長を
殺した方がいいと
お考えですか?
さすが魔族の
端くれですね。
ち、違うよ。
そういう意味じゃないよ。
クロードもクレアさんも
ウィル船長を殺しそうな
雰囲気だったから。
残念ながらそれは
出来ないのよ。
アレスとの約束だから。
ウィル船長の命を
助けるという条件で、
アレス様からバラッタ船長を
紹介していただいたので。
でもウィル船長の部下の
船員さんたちは……。
それはアレスとの
約束に入ってないから
遠慮なく
殺させてもらったわ。
っ!?
アレスくんにはそのことを
説明していないんじゃ
ないですかっ?
えぇ、その通り。
だってそんなことをしたら
助けろって言うに
決まっているもの。
勇者様は
“お・や・さ・し・い”
からっ♪
クレアさんッ!
僕は怒りが収まらなかった。
例え仲間だとしても、
いや、仲間だからこそアレスくんを
騙すようなことをしたのが許せない。
――ううん、僕が怒っているのは
騙す騙さないということよりも
クレアさんがアレスくんを
揶揄するような態度をとったからかも。
クロードもこのことを
知っていて
やったんだよね?
もちろんです。
……そっか。
トーヤ、私は魔族です。
私はあなたのように
純粋ではありません。
昔も今もこれからも。
…………。
やめてよ、クロード。
自分だけが悪者に
なろうとするなんて。
っ!?
僕やみんなや
多くの人のためを思って
決断したんでしょ?
罪を背負うことになっても
それが最善だと考えてさ。
…………。
キミは純粋じゃ
ないかもだけど、
完全な悪でもない。
僕はそう信じてる。
だからその罪、
僕も一緒に背負うよ。
そもそも僕のこの手も
すでに血に染まって
いるんだから……。
トーヤ……。
そう、僕はすでに自分の意思で
お父様の命を奪っている。
たくさんのモンスターや薬の材料となる
生物の命だってこの手で奪ってきている。
それにアレスくんだって生きるために
動物の命を奪って食料にしたり、
戦いの中ででやむを得ず敵を死に
至らしめたりしたことがあるはずだ。
きっとこの世の中に
完全に無垢な存在なんてあり得ない。
だからせめて命を落とした者たちに
敬意を払い、
その者たちの分まで長く生きて
供養していくのが大切なんだ。
僕だって魔族だよ。
むしろ命を助ける役割の
薬草師なのに
命を奪ったことのある
僕の方が罪深いよ。
それに僕はこのグループの
リーダーだ。
部下のしたことは
上司である僕が背負う。
それが当然じゃないか。
クロードは何も悪くない。
悪くないんだ。
キミの意思も罪も
僕のものだ!
トーヤ……
あなたという方は……。
クロードは服の袖で涙を拭っていた。
その姿を見る限り、
やっぱり彼は自分が全てを背負おうと
していたんだと思う。
トーヤさん……。
兄ちゃん、
僕は兄ちゃんの
使い魔であることを
誇りに思います。
さすが心の友だぜ!
いいねぇ、
気に入ったぜ坊主!
いや、トーヤ提督!
でも感激し合うのは
これくらいにして、
今は迫る危機を
退けないとな。
そうよね、
あの艦隊をなんとか
しないといけないもんね。
あ、そうですね……。
そうだ、操船はバラッタ船長たちが
担当してくれるとしても、
敵の艦隊がこのまま素直に僕たちを
見逃してくれるとは思えない。
少しでも逃げる素振りを見せたら
ウィル船長に何かが合ったと気付かれて
たちまち距離を詰めて
攻撃を仕掛けてくるだろうし。
まだピンチを全て回避したわけじゃない。
次回へ続く!