クレアさんが王都から戻り、
全ての準備が整った僕たちは
陸路でウェイブの町へ戻った。
そして今はクロードの案内で
桟橋の横に停泊している戦艦のところへ
やってきている。
もっとも、戦艦といっても側面に大砲が
いくつか装備されている程度で
想像していたよりも攻撃力は高くない。
むしろ船体が金属で出来ていて
防御力の方を重視している感じだ。
周囲では船員さんたちが
たくさんの大きな木箱や樽、布袋など
物資を積み込む作業をしている。
クレアさんが王都から戻り、
全ての準備が整った僕たちは
陸路でウェイブの町へ戻った。
そして今はクロードの案内で
桟橋の横に停泊している戦艦のところへ
やってきている。
もっとも、戦艦といっても側面に大砲が
いくつか装備されている程度で
想像していたよりも攻撃力は高くない。
むしろ船体が金属で出来ていて
防御力の方を重視している感じだ。
周囲では船員さんたちが
たくさんの大きな木箱や樽、布袋など
物資を積み込む作業をしている。
これが私たちの乗る
戦艦です。
払い下げなので
色々と心許ないですが。
確かにパッと見は
スゲーって思うけど、
よく見ると
あちこち腐食してるし
中古感は否めねーな。
いや、
僕は充分だと思うよ。
装備してある武器は
あとから追加した
感じですね。
てはは……。
エルムくんの仰る通り。
買い取った時には
何も武器がなかったので
急いで装備させたのです。
つまりそれだけ余計に
おカネがかかってるって
ことでしょう?
さすがクロードさんは
大商人ねっ♪
いえ、全てはマイルの
やったこと。
私は手配と指示を
しただけですよ。
いえ、それだって
クロードさんだから
出来たことだと思います。
マイルさんの
信頼も厚いしね。
恐縮です。
みんな、話はそれくらいに
しておきなさいな。
私はさっさと
船に乗りたいんだけど?
――ですね。
では、
船室へ行きましょう。
僕たちはクロードに先導され、
タラップを上って甲板へと移動した。
するとそのタイミングで船室から
ウィル船長が現れる。
彼は僕たちを見るとニヤリと頬を緩めた。
よぉ、久しぶりだな。
まさかまた会うとはな。
よろしく頼むぜ、
雇い主さん方よ。
よ、よろしく……。
まっ、船のことなら
俺様に任せておけ。
確実に副都へ
送ってやるからよ。
…………。
――やっぱり違和感がある。
ウィル船長から
邪悪さしか伝わってこない。
僕たちのためにという意思が
全く感じられないんだ。
んっ?
おいっ、そこのジジイ!
…………。
イモの入った
布袋を運んでいる
臨時雇いのクソジジイ!
お前だよ!
その時、ウィル船長は船員のおじいさんを
指差して怒鳴った。
その人は僕の身長くらいはある、
イモの入った布袋を肩に載せて
埠頭をゆるゆると歩いている。
それはあっしのこと
ですかい?
ほかにジジイがいるか?
あっしは人間でして
年齢だけなら
あっしよりもジジイが
周りにたくさんいますが?
っっっ!
見た目がジジイなのは
テメーだけなんだよ!
人を見た目で
判断するのは
感心しやせんねぇ。
うるせー!
船長様に対して
口答えすんな!
すいやせーん♪
おじいさんはヘラヘラと笑いながら
軽く頭を下げた。
どう見ても反省しているようには
感じられない。
でもウィル船長より
頭の回転は良さそうだ。
なんとなく気品みたいなものもあるし。
それであっしに
何かご用ですかい?
ジジイ! サボるな!
もっとキビキビと動け!
ひとりがそんな姿でいると
ほかの船員にも悪影響が
出るんだよ!
そりゃ、こんな年寄りに
肉体労働をさせるのが
悪いんじゃ
ないですかねぇ?
船長ってのは、
各船員の得意分野を
把握して
適材適所に配置して使う。
あっしが今まで
働いてきた船では
どこもそうでしたがね?
つまりそれが
出来ていないアンタは
船長として無能ってこと
でさぁね。
なっ!?
このクソジジイ!
口ばっかり達者で
いやがって!
テメーはクビだ!
へぇ……。
なぁ、坊ちゃん!
そこにいる坊ちゃんは
この船の
オーナーさんでしょう?
ぼ、僕っ?
おじいさんは僕に向かって
声をかけてきた。
突然のことで戸惑ってしまったけど、
すぐに気を取り直して大きく頷く。
船長はあんなことを
言っとりますが、
あっしのクビを切ることに
同意なさるので?
なっ!
このクソガキは
関係ないだろう!
ウィル船長。
雇い主に対して
クソガキだなんて
失礼ですよ?
むしろあなたのクビを
切りますよ?
う……。
じょ、冗談だよ……。
どうかお許しを、
トーヤ……様……。
なんか言い方が
たどたどしくて、
抵抗感ありありなのが
丸わかりだなぁ。
で、オーナーさん。
どうなさいます?
僕たちの意思を無視して
勝手に船員さんを
クビにするのはダメです。
ぐ……。
はーっはっは!
船長さんよ、
そういうこった!
残念だったな!
くそ……。
苛つくジジイだ……。
でもおじいさんも
船員という立場なら
船長の指示に従って
仕事をしてください。
なっ……。
ひゃひゃひゃ!
言われてやんの!
ざまーみろ、クソジジイ!
むむむ……。
プッ……ククク……。
なぜかクロードが手で口を押さえ、
笑いを必死に噛み殺していた。
そんなに面白いやり取りだったかな?
やれやれですね……。
それにしても、
あのふたりのやり取りって
普段のアポロさんと
ユリアさんに似てますね。
ボケとツッコミ具合が。
あ? どこがだよ!
エルムくーん?
あとで船倉の裏ででも
少しお話を
しましょっか?
っ!?
エルムは『しまった!』という
顔をしていた。
口が滑ったという感じ。
すかさず僕の後ろに隠れてくる。
仕方ないので僕は間に入り、
アポロとユリアさんをなだめたのだった。
次回へ続く!