トーヤ！

何か用？

マイルがトーヤに
話したいことが
あるそうです。

薬草の話かな？

あはは……。
それは違うと
思いますよ……。

やぁ、トーヤくん。
呼び出して悪いね。

何かありましたか？

いや、まだ特にない。
だが、今後に備えて
手を打っておこうと
思っている。

やるべきことは
決まっているのだからね。

もしかして回復薬の
増産依頼ですか？

…………。

ま、まぁ、
それも必要なことだね。
でも私が言いたいのは
そのことではない。

トーヤくんたちは
これから副都を目指して
進むのだろう？

はい、おそらくは
そうなると思います。

陸路で進む気かい？

そのつもりですけど。

それでは時間がかかる。
ウェイブの町へ戻って
そこからギガル川を
船で進む方が結果的に
早く副都へ着けるはずだ。

あ……なるほど……。

ギガル川は魔界の中でも
随一の川幅の広い大河だ。
交易船も頻繁に
数多く行き交っている。

武具や食料など、
特に戦時は平時と比べて
物資の補給が
増えるからね。

そこに紛れて
入り込むわけですね？

チッチッチ！
敵だってバカじゃない。
副都へ入る船に対しては
厳しいチェックを
している。

紛れて侵入するのは
不可能でしょう。

こちらがとる作戦は
その逆だ。
正面から攻撃を仕掛け
立ちはだかる全てを
殲滅して突破する！

いぃっ!?

あ、もちろん、
それをやるのは
私ではない。

私は商人としての力と
ネットワークを駆使して
交易船の動きを止め
補給を断つ。

いわゆる兵糧攻めという
戦術ですね。

これは私にしかできない。
よって、正面突破は
トーヤくんたちの役目だ。

無理ですよ、そんなの！
船を動かせる人なんて
いないですし！

トーヤ、誰かを
忘れていませんか？

えっ？

では、ヒントです。
アンカーポートから
副都へ行く時、
私たちはどうしました？

あっ！
もしかしてあの時の
ウィル船長!?

はい、ご名答です。

で、でも……
あの人は信用できるの？

彼はすでにこちら側に
引き入れてあります。
船員の半分は彼の部下、
残りは臨時で雇いました。

また、払い下げの戦艦を
私たちが購入して
ウェイブに
停泊させてあります。

これは全て
クレア殿からの依頼だ。

……つまり
決定事項なんですね。
拒否権なんて
ないじゃないですか……。

はっはっは！
そういうことになる。

せいぜい派手に暴れて、
副都攻撃グループの
囮としての役割を
果たしたまえ！

ッ!?

そうか、マイルさんは
実は僕たちこそが
本隊であることを
知らされていないのか。

分かりました。
作戦に
組み込まれているなら
それに従います。

うむ、それでよい。
その手でカレンさんを
助けるまで
決して諦めるなよ？

はいっ！
もちろんです！