僕たちは地下の最深部へ到着した。

そこは広い空間になっていて、
まるで闘技場のようだ。


――ううん、もしかしたらかつては
闘技場として使われていた場所なのかも。

そしてその奥で佇んでいたのは
見知った顔。
不敵な笑みを浮かべるクロウ、
その隣にいるのはアーシャさんだ。
 
 

クロウ

ようこそ、トーヤ。
まさかキミたちが
生きているとは。

クロウ

そのことを知った時は
驚きましたよ。

トーヤ

くっ……。

クロウ

面目を潰された僕は
こんなへき地に派遣され
ザコを相手にする
退屈な毎日です。

クロウ

これじゃ、
出世だって期待できない。

 
 
楽しそうに語るクロウ。

でもその裏に潜む怒りと憎悪が
僕には感じられる。
 
 

クロウ

だからね、さっさと
この地域を滅ぼして
勇者の首を取りに
行きたいんだよ。

クロウ

そういうわけだから、
さっさと死んでっ♪

クレア

出来ると思うの?

クロウ

クレア……か……。
確かにキミと
マトモに
ぶつかるのは分が悪い。

クロウ

でもね、それって
マトモに当たらなければ
勝機があるってこと。



クロウは懐に手を入れ、
何かの液体が入った注射器を取り出した。

液体は赤黒く淀んでいて
見ているだけで気持ち悪くなってくる。
 
 
 
 
 

 
 
 

クロウ

ギーマの知識を利用して
作り上げた戦力増強剤。
これを使えば
余裕で勝てます。

 
 
クロウはキャップを外すと、
針を自分の首に突き刺して液体を
体に注入していった。

すると途端に魔力が大きく膨れあがり、
肉体も一回り大きくなる。


全身からドス黒い力があふれている……。
 
 

クロウ

ははは……ははははっ!
力が漲ってくる!
最高の気分だよ!

クレア

くっ……これは……。

 
 
クレアさんの表情が曇る。
つまりクロウの言葉は
ハッタリではないってことなんだろう。


僕も勝手に足が震えてしまっている。
これは魔族としての本能に
由来する反応だと思う。

震えを抑えようとしても出来ない。
 
 

クロウ

呆気なく終わっては
面白くないです。
だからクレアくんの
相手をするのはアーシャに
任せることにします。

クロウ

キミが充分に
消耗したあとで
トドメだけ
刺してあげるよ。

クレア

相変わらず悪趣味ね。

クロウ

残りはまとめて
僕が始末してあげます。
かかってきてください。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
その言葉が終わると同時に
フロアの中心に描かれていた魔方陣が
淡く赤色に輝いた。

するとそこからモンスターが
せり上がってくる。
 
 
 

 
 
 

トーヤ

モンスターっ!?

クロウ

あぁ、忘れていました。
そろそろモンスターたちが
召喚される時間でした。
彼らも相手して
やってください。

ユリア

外道が……。

クロウ

それは最高の
褒め言葉です。

クロード

トーヤ!
クロウは私とユリア様が
攻撃します。

ユリア

ライカさんは
トーヤくんを守りつつ
モンスターたちを。

ライカ

承知しました!

 
 
クロードとユリアさんは剣を抜きつつ
クロウに向かって突進していった。

ふたりの前に立ち塞がった
召喚されたばかりのモンスターは
瞬時に切り捨てられて灰と化す。
 
 

ライカ

では、防御魔法を。

ライカ

…………。

 
 
 

 
 
ライカさんは防御魔法を使った。
すると僕たちの体を
白い光が薄く包み込む。


さて、僕たちはモンスターを
倒さないといけないんだけど、
あの魔方陣がある限り
キリがないような気がする――。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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