無事に宿屋を見つけた僕たちは、
近くの酒場で食事をとっていた。
周りを見回してみると
生傷のある傭兵さんらしき人ばかり。
そしてどこそこにモンスターが出たとか
何匹倒したとかという話を
大声でしている。
無事に宿屋を見つけた僕たちは、
近くの酒場で食事をとっていた。
周りを見回してみると
生傷のある傭兵さんらしき人ばかり。
そしてどこそこにモンスターが出たとか
何匹倒したとかという話を
大声でしている。
こりゃあ、
情報収集のために
走り回らなくても
この場だけで事足りるな。
どうかな。
ここで集まるのは
あくまでも一般的な
情報だけだと思うよ。
ですね。
もちろんそれも必要ですが
それだけで判断するのも
危険です。
あははははっ♪
トーヤくんや
エルムくんの方が
しっかりしてるじゃん。
うるせ……。
それにしても
思った以上に
自警団は
善戦してるんですね。
そうみたいですね。
かなり強い
傭兵グループが
いるみたいですから。
聞こえてきた話をまとめてみると、
どうやらこの町を守っている自警団には
おカネで雇った傭兵たちが含まれていて、
彼らが主力となっているようだった。
その中でも『とあるグループ』は
各人が達人クラスの強さを誇り、
自然と傭兵の全体を束ねる存在に
なっているという。
どんな人たちなんだろうなぁ……。
大変だっ!
トイトイ砦が陥落した
らしいぞ!
その時、息を切らせながら
酒場に駆け込んできたのは、
ひとりの傭兵さんだった。
全身から滝のような汗を流し、
大きく息を乱している。
それは本当か?
確度の高い情報だ。
新種のモンスターのほか
アンデッドの集団が
襲ってきたとか。
砦の兵士たちは
ウエストサイドまで
撤退して、
迎え撃ってるらしい。
つまりカネの臭いが
プンプンするって
ことだな?
ウエストサイドへ行けば
雇い賃ががっぽりと
もらえるに違いない。
おぉっ!
こんなところで
油を売ってられるか!
傭兵さんたちの多くは
すぐさま酒場を出て行った。
残った傭兵さんたちも
早々に食事を切り上げと去っていく。
こうして酒場には僕たちと
数人のお客さんだけが残されたのだった。
みんな出て
行っちゃったね。
残っている傭兵は
女の子ひとりか。
大剣を持っているから
彼女は傭兵だろ?
…………。
その子は物静かで、
コップの水をちびちびと飲んでいた。
ちなみにテーブルの上には料理がない。
すでに食事を終えているのだろうか?
あの子、
店に入ってから水しか
飲んでいませんよ?
ちょっと怪しいですよね。
へぇ、エルムくんは
ずっと見てたんだ?
ああいう子が
タイプなんだ?
ち、違いますよ!
僕はあくまでも
様子をうかがって
いただけです!
そういうことに
しといてあげる♪
だから違いますっ!
エルムもユリアさんの前では
タジタジだな。
ロンメルの時とは大違いだ。
やっぱりお姉さん的な立場の人に対しては
強く逆らえないのかも。
カレンに対してもそうだったもんなぁ。
トーヤ、
俺たちはどうする?
ロンメルやクレアさんを
待たないといけないから
どっちみち今夜は
動きが取れないよ。
そうだな。
疲れも溜まってるしな。
休息に専念する方がいい。
えぇ、急いては事を
しそんじるってやつね。
クレアさん!
気が付くと僕らのテーブルのところに
クレアさんが戻ってきていた。
いつの間に接近してきたんだろう?
声をかけられるまで
気付かなかったよ……。
私たちは明日になったら
ある傭兵グループと一緒に
動きましょう。
この町を守っていた
傭兵グループの中でも
最強と呼ばれていた
人たちと協力態勢を
取り付けてきたから。
そうなんですか!?
さすがクレアさん!
それに今から動くのは
リスクが高すぎる。
明日にして正解だな。
ロンメル!
今度はロンメルが音もなく
僕たちのテーブルの横に近寄ってきていて
その場に佇んでいた。
クレアさんといいロンメルといい、
動きが素速すぎて予測付かないなぁ……。
今夜は満月だ。
アンデッドは最大限に
力を発揮する。
敵にはアンデッドの集団が
いるようだ。
俺の部下を動員して
対抗することも出来るが
無闇に疲弊させるのは
得策ではあるまい。
そうですね。
カードの1枚を
ここで切ってしまうのは
勿体ないかもですね。
うん、
今夜はゆっくり休もう。
はいっ!
ところでクレアさん。
その傭兵グループって
どんな人たちなんですか?
まだ秘密よ。うふふ。
うーん、気になるなぁ。
クレアさんは微笑むだけで
何も教えてはくれなかった。
でも彼女のことだから
僕たちの驚くようなことを
裏で動かしているんだろうな……。
次回へ続く!