毒薬を塗った石をフォーチュンにセットし
僕はモンスターに狙いを定めて放った。

するとまずはクレアさんが
石の接近に気付き、
事ともなくやり過ごす。

直後、ユリアさんも身を翻して
その場を離れた。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
僕の放った石は
モンスターの額に直撃した。
その部分から毒が染みこんでいき、
悶え苦しみながら動かなくなる。



その後も僕はフォーチュンで
ユリアさんたちの援護をしながら
モンスターたちを倒していった。

やがてその場にいるモンスターを
一掃した頃、
ロンメルが戻ってくる。
 
 

ロンメル

やはり召喚の魔方陣が
仕掛けられていた。
しっかり
潰してきてやったぞ。

トーヤ

お疲れさま。
僕たちの方も片付いた
ところだよ。

クレア

…………。

トーヤ

っ?

 
 
その時、クレアさんは
モンスターの亡骸に歩み寄り、
その肉塊と血を手で触ったり
臭いを嗅いだりしてから怪訝な顔をした。

そして眉を曇らせながら
フゥッと息をつく。
 
 

トーヤ

クレアさん、
どうしたんです?

クレア

このモンスター、
素体となっているのは
力の弱い魔族よ。

トーヤ

えぇっ!?

クレア

薬や魔術的儀式によって
無理矢理モンスターへ
仕立て上げ
られたんでしょうね。

ライカ

やはり陸走船で遭遇した
モンスターと
状況が似ていますね。

トーヤ

はい……。

クレア

強さとしては
最前線投入用の一兵卒
といった感じかしら。
いわゆる捨て駒のような
粗悪な作りね。

クレア

一兵卒と言っても
並の魔族以上の
強さはあるけど。

トーヤ

でもこれを仕掛けた者が
ギーマ老師を
連れ去った連中の一派なら
捨て駒にしますかね?

エルム

それ、
どういう意味ですか?

トーヤ

あっ! しまった!
不老不死の薬の
製法や材料に関しては
みんなには
秘密なんだった……。

ロンメル

不老不死になったのなら
こんなことをせずとも
自らが出向いて
我々を殲滅できるという
意味だろう。

トーヤ

そ、そういうことっ!
さすがロンメル!

ロンメル

…………。

トーヤ

ロンメル、
フォローしてくれて
ありがとう……。

エルム

ということは、
まだ不老不死の薬が
量産できていない
のかもしれませんね。

アポロ

まだ俺たちにも
勝機はあるってことだな。

クレア

不用意な言動には
気をつけなさい、トーヤ。
誰がどこで私たちを
監視しているか
分からないんだから。

トーヤ

ッ!?

クレア

私はテレパシーで
あなただけに言葉を
伝えているのよ。

トーヤ

そ、そうでしたか……。

クレア

彼らはきっと不老不死の
薬の材料を知る前に
作られたのでしょう。
王都を攻める道具として。

トーヤ

かもしれませんね。

ライカ

いずれにしても
命を弄んでいることには
変わりないですね。
許せません。

アポロ

ま、この程度の強さじゃ
こうして俺たちの
足止めにすら
ならなかったけどな。

アポロ

俺たちが強すぎたらしい。
強さは罪だぜ、フッ。

ユリア

アンタは何も
してないでしょーが。

トーヤ

いえ、アポロは僕たちを
守ってくれていました。
何もしてなかったわけじゃ
ないですよ。

ユリア

トーヤくん……。

アポロ

おーっ、わが心の友ぉ!

 
 
アポロは泣くほど大喜びをしながら
僕に抱きついてくる。

その姿をユリアさんは呆れ顔で見ていた。
 
 

クレア

ただ、素体が強い魔族で
しっかりと
作り込まれていた
モンスターだったとしたら
私でも手こずるかも。

トーヤ

え? そうなんですか?

クレア

いずれにしても
王都の近くで
このレベルのモンスターが
集団で現れるわけだから
副都へ近付くほど
気を引き締めないと。

トーヤ

はい、そうですね。

 
 
クレアさんはいつになく
緊張感に満ちた瞳をしていた。

彼女ほどの実力者が
こんなに警戒するなんて
よっぽどのことだと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、僕たちはネーデルの村を通過し、
日没直後にウェイブの町へ到着した。

数百年前にはここに魔王の別邸があって
側近に町の統治を任せていたそうだ。
その名残で比較的大きな町として
今も賑わっている。



でも――
あちこちの建物や道には
真新しい穴や傷が付いている。

つまり街の中でも
激しい戦闘が起きたんだろうな。
 
 

ライカ

町のいたるところに
破壊の痕がありますね。

ユリア

モンスターの襲撃が
続いているんでしょうね。

エルム

でも陥落せずに
それを退けている
ということは、
自警団が優秀なんでしょう。

トーヤ

ここなら魔法も
使えるしね。

クレア

詳しい情報は
私が仕入れてくるわ。
みんなは宿を見つけて
休んでなさい。

 
 
そう言い残すと、
クレアさんは町の雑踏の中へと消えた。

元々は諜報活動や隠密活動の方が
得意らしいもんね。
それをしている方が落ち着くのかも。


でもクレアさんはきっと
魔族の動きという観点で
情報を集めるんじゃないかなぁ。

だとすると、町の周囲の環境については
情報不足になるかも。
 
 

トーヤ

ロンメル、夜はキミが
活動的になる時間だよね?
町の周辺を
探ってもらえる?

ロンメル

承知。
部下のヴァンパイアや
獣どもを総動員しよう。

トーヤ

じゃ、残った僕たちは
宿を探して
酒場で食事にしよう。

アポロ

俺たちはそこで
情報収集ってわけだな。

トーヤ

そういうこと。
宿屋での部屋の交渉は
エルムにお願いするね。

エルム

はいっ。では、
お部屋は女子部屋と
男子部屋の2つで
いいですよね?

ユリア

私は大部屋で一緒でも
構わないけど?

ライカ

私もです。

エルム

兄ちゃん、
どうしましょう?

 
 
エルムは僕に許可を求めるような視線を
向けてくる。
でもこういうことは今までの旅の中では
実際にあった状況だからなぁ。


要するに新たに旅に加わった
クレアさんの反応が気になるだけで……。
 
 

トーヤ

でもさ、
それだとクレアさん、
怒らないかな?

ユリア

その時は
男子が野宿すれば
いいだけじゃん?

トーヤ

ユ、ユリアさん……。

ユリア

あはは、冗談♪
エルムくん、
2部屋押さえておきなさい。

エルム

では、
宿屋を見つけたら
そうします。

 
 
こうして僕たちは町の中を進んでいき、
宿屋を見つけて部屋を確保した。

よーっし、
今夜は柔らかいベッドの上で
ゆっくりと休めるぞーっ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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