僕たちの前に現れたモンスターたちは
かつて陸走船で遭遇し、
苦戦した相手によく似ていた。


確かあの時は
幼い女の子がクロウの薬によって
変身させられていたんだよね。

目の前にいるモンスターたちも
同じような境遇なのかな……。
 
 

ライカ

トーヤさん、
また毒薬を作りますか?

トーヤ

ここでは空気中に
霧散してしまって
効果が薄いですよ。

ライカ

ですから皮膚から
吸収されるタイプの毒を
石に塗りつけて
フォーチュンで
攻撃するんですよ。

トーヤ

あぁ、それは名案です!

アポロ

おいおい、
なーに物騒なことを
話してんだ?

トーヤ

アポロ……。

 
 
アポロは右手で前髪を掻き上げると、
ため息混じりに僕たちを見やった。

そのあとニタニタして胸を強く叩く。
 
 

アポロ

この場はドーンと
俺様に任せておけ。

トーヤ

で、でも……。

ユリア

アポロこそ引っ込んでて。
アンタは万が一の時、
トーヤくんの盾にでも
なればいいの。

ユリア

魔法容量が
限られてるんだから。

アポロ

う……うむ……。

 
 
ユリアさんにツッコミを入れられ
何も言い返せなくなるアポロ。
彼は大人しく僕たちの横に佇む。

すると今度は手綱を握っていた
ロンメルが立ち上がり、
こちらへ向かって叫ぶ。
 
 

ロンメル

俺は後ろを守る。
トーヤとライカは
毒薬作戦を実行しろ。

ロンメル

俺たちだけでも
充分だろうが
備えあれば憂いなしだ。
毒薬の作成にそう時間は
かからんのだろう?

トーヤ

うんっ!

ロンメル

良い返事だ。
この場を見事に
切り抜けてみせろ、
リーダー!

 
 
そう言い残し、
ロンメルは風のような速さで
馬車の後部へと向かった。



――相変わらず行動が素速い。

僕も負けじとすぐにみんなへ指示を出す。
 
 

トーヤ

ライカさん、
調薬の手伝いを
お願いします。

ライカ

はいっ!

トーヤ

エルムは馬車の
手綱を握ってて。

エルム

分かりました!

トーヤ

クレアさん、
ユリアさんと一緒に
最前線で戦って
もらえますか?

クレア

えぇ、もちろん。
リーダーはあなただから。
指示に従うわ。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
僕は毒薬の調薬に取りかかった。


即効性があって
皮膚から吸収されるタイプだと
アルメルクロメールがいいかな。

動物のタンパク質にだけ作用するから
弾が外れても植物などの環境への負荷は
最小限に留めておけるし。



すると僕の用意している薬品類を見て
ライカさんは
何を調薬しようとしているのか
分かったみたい。

必要な道具や材料を取り出すのを
的確な判断で手伝ってくれている。


一方、ユリアさんとクレアさんは
モンスターたちへ魔法での攻撃を
試みようしていた。

そうか、
ここまで来れば魔法が使えるのか!
 
 
  
 
 

 
 
 
 
 

ユリア

はぁああああぁー!

 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

クレア

……ふ。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

っ!? すごい……。

 
 
ユリアさんの黒い炎の魔法が炸裂。
間髪を入れずに剣での攻撃を繰り出し、
トドメを刺した。

また、
クレアさんが軽く手を振りかざすと、
そこから見えない刃でも
放たれたかのように
モンスター数体が瞬時に切り刻まれて
醜悪な肉塊と化し沈黙する。


さすが女王様の使い魔。
桁外れの実力だ……。
造作もなくやってのけている。
 
 

ぐるるるる……

 
 
 
 
でもモンスターたちは次々に現れる。
まるでどこかから召喚さ――っ!?


そうか、そういうことかもしれない。

僕はすかさずエルムへ指示を出す。
 
 

トーヤ

エルム!
周囲に目を凝らしてみて!
どこかに魔方陣のような
ものはない?

エルム

えっ?

エルム

…………。

エルム

あっ!

 
 
直後、エルムは森の右奥を指差した。

その方向を見てみると、
地面からモンスターが湧き出しているのが
確認できる。

ここからだと実態はよく分からないけど
あそこに元凶があるに違いない。
 
 

トーヤ

ロンメル、
森の右奥を探ってみて!

ロンメル

分かった。
アポロよ、
この場は任せたぞ。

アポロ

がってん承知っ!!

 
 
ロンメルがモンスターの湧き出る場所へ
向かった直後、僕の毒薬も完成した。

これでユリアさんやクレアさんの
援護が出来る。
 
 
 

 
 
 

トーヤ

ライカさんは結界魔法で
馬車を守ってください。
僕は攻撃に移ります。

ライカ

分かりました。

トーヤ

ライカさん、
頼りにしてます。

ライカ

っ!?

ライカ

は、はいっ!

 
 
 

 
 
ライカさんは結界魔法の詠唱に入った。

それと同時に僕は毒薬を石に塗りつけ、
狙いを定めて
モンスターへと放とうとする。


かつては自分の皮膚に付かないように
細心の注意を払っていただろうけど、
今はあまり気にしていない。

だって僕には状態異常無効化の
能力があって
毒に冒される心配がないから。



そして今にも石を放とうという時、
隣にいたアポロが
僕の服を軽く指で摘んで引っ張る。
 
 

アポロ

お、おい、トーヤ。
ユリアには
当たらないだろうな?

トーヤ

善処するよ。

アポロ

こらこらっ!
そこは大丈夫って言えよ!

トーヤ

だって誰にでも
ミスはあるものだから。
でも外すつもりはないから
安心してよ。僕を信じて。

アポロ

トーヤ……。

アポロ

お前、
少し格好良くなったな。
安心感があるし、
しっかりリーダーっぽい。

トーヤ

アリガト。
アポロは万が一に
備えてて。

アポロ

おうっ!

 
 
 

 
 
僕はモンスターやユリアさん、
それにクレアさんの動きを
しっかり見定めて石を放った!




いっけぇええええええぇーっ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第168幕 リーダーとしての責任感

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