僕はロンメルと戦って
勝たなければならない。

そのためにはアレスくん、女王様、
クリスさんの中から助太刀をひとり選んで
協力しなければ無理だ。


今回の戦いにおいては、
アレスくんと女王様は適任とは
言えないと思う。
 
 
 
 
 

クリス

…………。

 
 
 
 
 
――そうだ、
僕が選択すべきなのはクリスさんだ。
クリスさんは破邪魔法を
最も得意としている。

破邪魔法は僕たち魔族やヴァンパイアなど
『邪なる存在』にとって最大の脅威。
下位の魔法であっても
状況次第では致命傷になり得る。



それに彼女は身を守るための
結界魔法も得意だ。

僕は結界魔法の中からフォーチュンで
ロンメルを牽制しつつ、
クリスさんに破邪魔法で
攻撃してもらうのが最適だろうな。



それが僕にとっての唯一の勝ち筋――
 
 

トーヤ

決まったよ、ロンメル。

ロンメル

ほほぅ、誰にする?

トーヤ

クリスさんに
助太刀をお願いします。

ロンメル

ほぅ? 勇者や
元魔王でなくてよいのか?
そいつは3人の中で
最も見劣りするぞ?

クリス

なんだとっ?

 
 
すかさず不満を爆発させるクリスさん。

でもロンメルの言っていることは
客観的に見てきっと正しいと僕も思う。



そしてそれはクリスさん自身だって
分かっているに違いない。
指名されても驚いていないのは
その理由についても理解しているから。

聡明なクリスさんなら
気付かないはずがないもん。
 
 

トーヤ

ハッキリ言って
個々の総合戦闘力では
女王様が一番だと思う。

トーヤ

でも、戦いには
相性というものがある。
今、この場でロンメルを
倒すことが出来るのは
クリスさんだけだ!

クリス

ト、トーヤ殿……。
照れるぞ……。

ミューリエ

ふむ……。

アレス

……っ?

 
 
女王様は僕の考えていることを
察しているみたい。

一方、アレスくんは
分かっていないんだろうな。
キョトンとしているもん。
 
 

ロンメル

ふ……ふふふ……
あーっはっは!
これは愉快!

ロンメル

成長したな、トーヤ。
この短時間で
その結論に辿り着いたか。
冷静な分析力と判断力だ。

トーヤ

ふふっ♪

ロンメル

俺の負けだ。
言う通りにしよう。
現在の契約を
解消してやる。

トーヤ

えぇっ!? いいのっ?
戦ってもいないのに!

ロンメル

戦うまでもない。
俺も痛い目に遭うのは
ごめんだからな。

 
 
想定外の申し出だった。
でも戦わなくて済むのは嬉しい。

勝ち負けじゃなくて、
ロンメルと傷付け合いたくなかったから。
だって大切な仲間だもん。
 
 

ロンメル

その選択は正解だ。
この場で
俺にトドメを刺すことが
出来る力を持つのは、
クリスだけだ。

ロンメル

ちなみにもしトーヤが
勇者や元魔王を選んでいたら
見切りを付けて
お前を殺していただろう。

トーヤ

えっ?

ロンメル

好き嫌いや
表面的な強さで選ぶなど
指揮官として最悪。
愚の骨頂だからな。

ロンメル

あらためて俺は
心底からトーヤに
使い魔として
仕えることを誓おう。

トーヤ

ロンメル……。

ロンメル

お前といると退屈しない。
それに万が一のことがあって
お前の血が
不意に失われるのは惜しい。

ロンメル

だから守ってやる。
その代わりこれからも
血を分けてくれ。
――俺をトーヤの
使い魔にしてくれるか?

トーヤ

う、うんっ!
これからもよろしく!
ロンメル!

アレス

よかったね、トーヤくん。

レオン

では、これで実証実験が
できますね。
準備をするとしますか。

ミューリエ

……レオン。

 
 
こうしてロンメルは僕の使い魔になった。
本当の意味で主従の関係になったんだ。
こんなに心強いことはない。

でもそうなるとエルムの方が
先輩ってことになっちゃうんだけど、
ロンメルはそれでいいのかな?

エルムにそのことをいじられそう。


でもきっと仲良くやっていけると思う。
なんだかんだで、
2人は気が合うみたいだもん……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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