お師匠様は僕の血液を使って
実証実験をするという。

でもそれを勝手にやるわけにはいかない。


なぜなら――
 
 

トーヤ

僕、ロンメルと
主従契約を
しているんです。

トーヤ

それで血液を勝手に
ほかの誰かに
与えてはいけないんです。

 
 
僕はみんなに事情を詳しく話した。
主従契約に至った経緯や
その条件のことなど。

それを聞くと女王様は眉を曇らせる。
 
 

ミューリエ

それは参ったな。
まずは契約を解除しないと
トーヤ自身が
神の裁きを受けてしまう。

トーヤ

女王様、
ロンメルをここに呼んで
事情を話していいですか?

ミューリエ

やむを得んな……。

 
 
その後、僕は魔方陣を使って
ロンメルを呼び出した。

そして今までの経緯などを説明する。
 
 

ロンメル

なるほど、
そういうことか……。

トーヤ

だから契約を解除して
もらえないかな?

ロンメル

断る!

トーヤ

えぇっ!?

ロンメル

トーヤの血は
一滴たりとも渡さん。

トーヤ

う……。

 
 
やっぱりぃ……。

ロンメルが僕と契約を結んだのは
血が目的だからなぁ。
そう簡単に頷いてくれるはずもない。



――と、思っていたんだけど、
その直後にロンメルが僕に視線を向けつつ
ゆっくりと口を開く。
 
 

ロンメル

だが、
どうしてもと言うなら
考えてやってもいい。

トーヤ

えっ? ホントっ?
どうすればいいのっ?

ロンメル

俺と戦って勝ってみせろ。
参ったと言わせるか殺せば
お前の勝ちだ。

トーヤ

なっ!?

ロンメル

――とはいえ、
トーヤだけでは
天地が引っ繰り返っても
無理な話だろう。
それは俺も分かっている。

ロンメル

だからひとりだけ
助っ人を許してやろう。
この場にいるレオン以外の
3人の中から
好きなヤツを選べ。

トーヤ

う……ぐ……。

ロンメル

いいか、やるからには
全力でかかってこい。

ロンメル

俺は手加減などしない。
殺す気で戦うから
覚悟しておけ。

トーヤ

…………。

アレス

トーヤくん……。

 
 
困った。ロンメルは本気だ。

僕を殺そうと
全力で襲ってくるに違いない。



一方で僕の側はロンメルを倒す寸前で
参ったって言わせないとな……。
仲間である彼を
殺すことなんてできないもん。

もちろん実力差を考えれば
それは容易なことじゃないけど。


だってロンメルは不老不死だし、
生半可な攻撃は通用しない。
実際に戦ったことのある僕には
それがよく分かってる……。
 
 

ロンメル

さぁ、誰を選ぶ?

トーヤ

もう少し
考えさせてよ……。

 
 
僕がパートナーに選べるのは、
アレスくんと女王様、そしてクリスさん。
 
 

アレス

…………。

 
 
アレスくんは相手の戦意を失わせ、
動きを封じる力を持っている。
この力には魔王ノーサスですら抗えない。


――それはおそらくこの世で最強の力。



ただ、その発動には少し時間がかかる。
つまりそれまで僕だけで
攻撃を防ぎきらなければならない。

ちなみにアレスくん自身は
あまり物理攻撃が得意じゃない。
攻撃魔法も使えないはずだし、
使えたとしても初歩的なものだろう。


ロンメルがアレスくんの力の発動を
大人しく待ってくれるわけないよね……。



もし僕にもっと戦う力があれば、
アレスくんの能力を最大限に
活かすことが出来るのに……。

――自分の無力さが悔しい!
 
 

ミューリエ

…………。

 
 
女王様はどうだろう?

物理攻撃も魔法攻撃もこの世界では
トップクラスの使い手だ。
集団戦や不意打ちでない限りは
無敵だろうな。


――うん、
やっぱりここは女王様しかいない!!
 
 

トーヤ

えっと――

ロンメル

決まったのか?

ミューリエ

…………。

トーヤ

ッ!?

トーヤ

あっ!
も、もう少し待って!

ロンメル

よかろう。
しっかり考えろ。

 
 
僕は女王様を指名しようとしたんだけど、
寸前で言葉を呑んだ。
なぜなら僕は
大切なことを失念していたから。



確かに女王様はほぼ無敵。
でもそれはロンメルだって同じだ。
いや、長期戦になったら
むしろ僕たちの方が不利かもしれない。

だってロンメルは不老不死なんだから。
怪我の回復力だって尋常じゃない。



そんな相手に対して、
女王様は僕を庇いながら
いつまでも戦えるだろうか?


――ううん、きっとそれは無理。
ロンメルのタフさと回復能力は
桁違いだもん。
いつかは隙ができてやられちゃう。


もちろん、戦っているうちに
何か必勝の作戦が見つかるかもだけど、
現時点では不確実性の方が高い。


――となると、
勝てる可能性が高いのは短期決戦。
こちらが疲労する前に
一気に片を付けるしかない。

それらを考えれば、
この状況において最適な助っ人は……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第164幕 助っ人選び、技から見るか? 総合力から見るか?

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