お師匠様が落ち着いてから
僕たちは話を再開させる。


まず知りたいのは僕がどうやって
不老不死の薬に対抗できるかということだ。

僕の攻撃だけは何らかの理由で
ダメージを与えられるという
ことなのかな?
 
 

レオン

不老不死の薬は
細胞を活性化させ、
さらに老化の因子の働きを
阻害します。

レオン

それで不老不死の作用を
得ているわけです。

クリス

なるほどな。

レオン

それを中和する
効果を持つのが
トーヤの血液です。

トーヤ

僕の血液っ!?

レオン

正確にはトーヤの細胞なら
なんでも構いません。
――が、効果が大きくて
扱いやすいのが血液です。

レオン

それを一滴でも相手の体に
注ぎ込めれば、
こちらの勝ちです。

アレス

では、あらかじめ血液を
採取しておいて、
それをみんなで
使うというのは?

レオン

成分の劣化が早いので
効果が発揮されるのは
肉体を離れてから
30分程度でしょう。

アレス

じゃ、トーヤくん自身が
その場に居合わせないと
ダメですね。

ミューリエ

うむ。だからこそ
トーヤたちが本隊となる。

クリス

おそらく敵は
アレス様たちが本隊だと
信じて疑わんだろうな。

アレス

囮としてバッチリだね。

 
 
なんだか責任重大だな……。


グループリーダーってだけでも
プレッシャーだったのに、
僕自身が世界の運命を左右するほどの
切り札だったなんて。




ん? ちょっと待てよ?
もしかして僕の特殊能力は――
 
 

トーヤ

そうか、僕に状態異常の
無効化能力があるのは
そういうことだったんだ!

レオン

やはり旅の中で
それに気付いていましたか。
えぇ、副次的な効果ですね。

アレス

そうだったのっ!?
すごいや、トーヤくん!

トーヤ

この力に助けられたことが
何度もあったよ……。

 
 
きっと僕に成長の能力があるのも
純粋な魔族じゃないからだろうな。

今となれば色々と納得することがある。
 
 

ミューリエ

トーヤ、お前には
苦労ばかりかけて
申し訳がない。

トーヤ

いえ、とんでもないです。
僕はみんなのお役に立てれば
本望です。

トーヤ

ところで女王様は
僕がお師匠様の弟子で、
こういう存在だと承知して
お城に雇ってくれて
いたのですか?

ミューリエ

いや、偶然だ。
あとで知って驚いたがな。

アレス

これは必然だよ、きっと。
僕たちは出会うべくして
出会ったんだ。

アレス

神様が僕たちを
導いてくれたんだよ。

ミューリエ

……ふふ、かもな。

トーヤ

うんっ!
僕もそう思います。

クリス

真相がどうであれ
ボクはアレス様や
みんなと出会えて
良かったと思っている。

 
 
うん、それはクリスさんだけじゃなくて
僕も同じ気持ちだ。

アレスくんたちだってそうだと思う。
 
 

レオン

では、そろそろ
実証実験をしましょうか。

トーヤ

実証実験ですか?

レオン

トーヤの血液が
本当に効果があるのか
試すのですよ。
――私の体で。

トーヤ

えぇっ!?

レオン

理論的には
効果があるはずです。
でも実際に試しては
いないのですよ。

レオン

それを確かめる必要が
あります。

アレス

敵と対峙してから
『効果がありません』じゃ
困りますもんね。

レオン

はい。そういうことです。

トーヤ

分かりま――あっ!
ダメです、それは!

 
 
お師匠様に同意しようとした時、
僕は大切なことを思い出した。


――それは僕の血液に関すること。

“彼”との約束があるから
勝手な判断で使うわけにはいかない。



まさかこんなことになるなんて
困ったな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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