衝撃の事実だった。

お師匠様とギーマ老師は
たくさんの魔族の命を犠牲にして
不老不死の薬を作り上げていたんだ。


世間から隠れて暮らすようになったのには
そういう理由があったのか……。
 
 

ミューリエ

その薬の開発を
指示したのは私だ。

トーヤ

女王様がっ?

レオン

いえ、それは
正確ではありません。

レオン

ミューリエ――いえ、
ミュラーの先代の魔王が
指示したのです。

ミューリエ

だが、魔王の意識は
その大きな力とともに
多少なりとも受け継ぐ。
私にも責任が……。

レオン

それは違います。
ミューリエとは別の
人格なのですから。

アレス

そうだよ、
ミューリエは
悪くないよ!

ミューリエ

アレス……。

クリス

罪を憎んで
人を憎まずだな。

ミューリエ

クリス……。

 
 
みんないい人たちばかりだ。
僕も女王様は悪くないって思う。

女王様は魔王の力を
受け継いだかもしれないけど、
人格まで一緒というわけじゃないもん。


――女王様は女王様だよ!
 
 

クリス

なるほど、読めてきたぞ。
その不老不死の薬の
実験台になったのは
レオン殿自身だな?

トーヤ

えぇっ!?

レオン

その通りです。
私は不老不死。
その罪を背負って
永遠に生きていく。

レオン

これが私自身に
課せられた罰なのです。

トーヤ

お師匠様……。

 
 
重苦しく語るお師匠様を見て
僕は胸が苦しくなった。

まさかお師匠様が
そんな暗い過去を
背負っていたなんて……。


今まで僕には明るく振る舞っていて
何かを背負っているような素振りを
感じさせたことなんてなかった。
 
 

クリス

生きることが罰か。
ぬるいな。

トーヤ

っ!? クリスさん!
あなたはお師匠様を
まだ苦しめるつも――

レオン

良いのです、トーヤ。
クリスさんの
おっしゃる通りです。

 
 
お師匠様は僕の言葉を遮り、
諭すように言った。
だから僕は仕方なく矛を納め、
クリスさんに対して敵意の視線を向ける。

すると当のクリスさんは
なぜか柔らかな瞳でお師匠様を見ていた。
 
 

クリス

だが、レオン殿は
漠然と生き続けるだけでは
なかったのだろう?

クリス

万が一にも不老不死の薬が
悪用された時のことを考え
何か対策を模索
してきたのではないか?

トーヤ

えっ?

クリス

その姿勢、
立派だとボクは思う。

レオン

恐縮です。

ミューリエ

相変わらずさすがだな。
それに気付いたか。

クリス

――うむ。
この裏に潜む事実にも
なんとなくな……。

トーヤ

っ?
裏に潜む事実?

クリス

レオン殿、
あなたは新たに
罪を背負うことになるぞ?

レオン

覚悟してますよ。

 
 
どうやらお師匠様とクリスさん、
そして女王様の間では
何かの意識が共有されているみたい。

裏に潜む事実とか新たに罪を背負うとか、
どういうことなんだろう?
 
 

アレス

僕には何が何だか
分からないよ……。

トーヤ

僕もです……。

レオン

…………。
私は不老不死の薬に
対抗する薬の開発を
進めてきました。

アレス

それは不老不死の効果を
打ち消す薬ですか?

レオン

そのようなものです。
そしてそれは
長きに渡る研究の末、
完成しました。

トーヤ

さすがお師匠様!

 
 
でも僕の反応に対して、
お師匠様は寂しげな表情をした。
儚げで今にも消えてしまいそうな存在感。

なぜそんな顔をするんだろう?
 
 

レオン

私はトーヤから
お師匠様と呼ばれる
資格などありません。
そういう男なのです……。

レオン

でもこれだけは
信じてください。
私はトーヤのことを
ひとりの魔族として
大切に育ててきました。
かけがえのない家族です。

トーヤ

お師匠様?

 
 
 
 
 

レオン

不老不死の薬に対抗する
その手段として
生み出された存在――。
それがトーヤです!

 
 
 
 
 

トーヤ

……え?

レオン

私の血肉や
様々な生物の体。
そして魔術的儀式によって
人為的に造り出されたのが
トーヤなのです。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

…………。

 
 
……ちょっと何を言っているのか
分からない。




僕……が……造り出された存在……?
 
 

 
 
 
次回へ続く……。
 

第161幕 トーヤ、出生の秘密!

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