屋上の扉を勢い良く開ける。小斗が屋上に初めて足を入れる。強い日差しと暖かい風が当たり、蝉の鳴き声があちらこちらで鳴り響いている。
屋上の扉を勢い良く開ける。小斗が屋上に初めて足を入れる。強い日差しと暖かい風が当たり、蝉の鳴き声があちらこちらで鳴り響いている。
屋上は落下防止の為に、とても高く網目のフェンスで囲まれていた。そのフェンスに鮫野木が手をかけてグラウンドを眺めていた。
鮫野木くん
…………やあ、小斗さん
鮫野木は小斗に気づいて振り向いた。
小斗は息を整え、鮫野木に一歩ずつ近づいて行った。
ああ、別に……
……
小斗は足を止めて鮫野木に話しかける。
どうして、ミコちゃんの代わりに生きようとしているの?
苦しいからさ、アイツが居ないと
だから、死のうとも思った。けど、それは逃げなんだよ
逃げ?
鮫野木は頷いた。頷いたまま地面を見つめる。
俺が彼女を死なせた事、それは俺にとっての罪だ
罪? 罪だからミコちゃんみたいにしてるの
そうなるな。俺より若林が生きてなきゃいけない。代わりになることで罪を償う
――やっぱりバカじゃん
小斗が押し込めた思いを解き放した。伝えたいこと、伝えないといけないこと、全て話した。
小斗の頬に熱い涙が流れる。
私はね。鮫野木くんがミコちゃんを理由に自分から逃げている事をバカって言ったんだよ
だから、ミコちゃんみたいにしている君を見て、最初はおかしいと思った。気持ち悪いとも思った
で、分かったの君は怖くって逃げているんだね
に、逃げてない。俺はただ……若林の
鮫野木は顔を隠すように両手で塞ごうとした。小斗はその手を取った。
違う、そうやって逃げているだけなの自分から
自分、自分に逃げている? そんなこと
屋上に響く声が鮫野木の心に刺さる。その度に若林と過ごした記憶が思い浮かぶ、その中には小斗雪音も居る。
強い風が吹く。まるで自分を押してくれてるようだ。
鮫野木くん……逃げないでよ
…………
このまま、自分に嘘を付いてると自分が死んじゃうよ。鮫野木くんじゃなくなるよ
ふっと音の表情を覗く、彼女は泣いていた。
鮫野木はようやく小斗が泣いていることに気が付いた。
だから逃げないで向き合ってよ
私も付き合うからさ
ユキちゃん……
俺のためにユキちゃんが泣いている。自分を心配して、理解しようとして、泣いている。なのに俺は……。
鮫野木くんは鮫野木くんだよ、若林命にはなれないんだよ
だからさ、約束して無茶はしないって
なぁ、ユキちゃん
何?
俺は俺のために生きて良いのか?
当たり前じゃん
回想終了
あの日、若林が死んだ日から、命を救われた日から三年と一ヶ月、思えばちゃんと墓参りに行ったことなかったけ。
あのさ、ユキちゃん
何?
俺、ちょっと無茶すすぎましたかね?
ちょっと? 一人でいろいろしてきたんでしょ!
確かに園崎桜に会った。まぁ、ここじゃ日泉桜だけど、後は怪しい人と会って野沢を助ける方法を教えてもらったが、ユキちゃんにとっては無茶なことだったんだな。
そうでけど、必要なことだったし……ごめん
もう良いよ。怒ってないから
どうせ、淳くんがやりたいとでしょ?
……全くです
図橋をつかれた鮫野木は片手で髪の毛を掴んだ。
まぁ、こっちだって――殴ってごめん
別に良いよ。それぐらい
そですか
小斗は頬を膨らませた。それを見た鮫野木はつい笑ってしまう。
フッハハ
なに笑ってるの?
いや、いつも通りだなって
やっぱり、この感じが良いよ。アニメや漫画みたいな非日常的な展開は俺みたいな奴には似合わない。こういうのはアニメや漫画に出て来る主人公がやるべきだ。俺には身が重すぎる。
でも、元の世界に帰るにはかなり無茶をしないといけないんだよな。まぁ、どうにかなるでしょう。