第二試練が開始し、

扉を抜けた先は以前暮らしていた家の中で、

美咲はその不思議な光景に驚く。

あちこち歩いて回りながら、

リビングにあった写真立てを抱えて、

亡き父と母を思い出していた。

そうだった。
あの日、私は決めたんだ。
誰かを守るって!!

涙を拭って立ち上がり、

写真立てを棚に戻す。

…………。

…………。

…………。

…………。

その写真で微笑む父と母、

そして自身も写る写真に微笑み返すと、

リビングを抜けていき、

玄関の扉に手をかけた。

敬介は暗い闇の中で、

本当に光術士になるべきか悩み、

その苦しさから投げ出すことを決める。

床に座った時に手をついたら、

何かに触れたので、

その正体を確かめるべく探っていた。

これって、天野さんから借りたノートの付箋?

視界は真っ暗なので、

それが本当に付箋かどうかは分からないが、

大きさや感触がそれにしか思えない。

そういえば、ノートのあちこちに付箋が貼ってあったな。

美咲から学校でノートを借りた日、

敬介は教室でそれを1ページずつ眺めていた。

付箋が貼ってあると、立体的で注目しやすいな。
物理は苦手なのに、頭に入ってくる。

ノートに書かれた字の綺麗さと付箋は、

絶妙なバランスで敬介の頭を刺激する。

ん?

そして、

最後のページを開くと、

テスト対策とは違う事が書かれていた。

光術士になってから、

色んな事があったけど、

これからも一緒に頑張ろうね。

みんなの笑顔を守るために。

そのメッセージは何故か照れ臭く、

ふいに窓の外を見た。

頑張るか。

光術士になるって決めた日、天野さんに約束したんだったな。

あなたの気持ちはそんな簡単に諦められるものだったの?
公園での真剣な表情があったから、先生に会ってもらおうって思ったんだよ。
たしかに先生の言い方は悪かったよ。
だけど、誰かを守りたいって本気で思ったんなら、最後までその気持ちを貫きなさいよ!
形山君なら、きっとできると思ったから、同じような怖い思いをした形山君なら、誰かの痛みを分かってあげられる、そう思ったから、私…………。

天野さん……。
ごめん。
俺、まさかああいうことになるとは思ってなかったんだけど、つい腹が立っちゃって……。

誰かを守りたい気持ちは嘘じゃないんだ!!
だから、あの男……。
いや、先生に光術を習わないといけない。
それしか、俺のように辛い思いをする人たちを救うことができない。
ちゃんと分かってたんだけど……。
天野さん、もう一度、一緒に先生の所に行ってくれ!
今度は絶対に逃げたりしない。

そうだ。
もう逃げない。
誰かを守るんだ。
そのためには、こんな所で諦めちゃいけない。

美咲のノートに貼ってあった付箋をきっかけに、

光術士を目指した最初の頃を思い出し、

諦めていた敬介は立ち上がる。

進むんだ、前へ。
こんなに暗い闇の中でも、信じられる仲間がいる。
光を見つけるんだ。

敬介の全身に光力がみなぎる。

暗闇の中を堂々と進む敬介の前には、

少しずつ大きくなっていく眩い光があった。

…………。

温かい光に包まれた敬介は手を伸ばした。

眩しすぎる……。

形山君!!

天野さん!!

光の先には、

見覚えのある薄暗い長い廊下が広がっている。

そして、

向かい合う扉から出てきた美咲と再会した。

制限時間ギリギリでクリアか。

廊下には大きな鈴の音が響き、

第二試練の終了を告げた。

第二試練終了!

第3章--認証試練編--(77話)-第二試練⑦-

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