第一試練が終わり、

第二試練までの待機時間の間に、

同じ高校の一年生である相坂修太と話していると、

修太の知り合いである他の参加者三人も訪れた。

その中の一人である仁という大男から、

自らだけではなく、

美咲やカラウのことまで侮辱された敬介は激高し、

仁と睨み合う一触即発の状態に。

しかし、

その中の一人である雪に制止され、

なんとか衝突を避けることができたのだった。

形山君、大丈夫?

うん。
その……、ごめん。

こちら側に戻ってきた敬介に、

歩み寄った美咲は胸の前で手を抱えて、

心配そうに見つめた。

あなたも落ち着いたかしら?

ああ。

雪も仁へと声をかけたが、

返事をすると仁は壁際へと歩いて行き、

そのまま壁にもたれ掛かかり腕を組んだ。

君達、突然すまなかった。

蓮は仁の代わりに二人に頭を下げると、

仁の元へと駆け寄った。

一応、今後のために忠告はしておくけど、基本的に光術士の世界で、あなたたちのような人達を歓迎していないわ。
喧嘩を売られても、あまり騒がないようにした方が賢明よ。

先程、

仁を制止した雪でさえ、

敬介と美咲に一言告げて去って行った。

感じ悪いやつらだな。
大宮の方がまだマシだった。

私達って、こんなに風当たりが強かったんだね。
全く実感なかった。

お互い、

もう妙な参加者に絡まれないように、

雪達が行った方とは真逆の壁側に行った。

そして、

仁と蓮の元へ雪と修太が到着すると、

さっそく雪は仁に声をかけた。

仁。
あんな風に喧嘩を売ったら、第三試練での計画も無駄になるでしょ。
分かってるの?

ああ、すまん。

まぁまぁ。
仁も分かっただろうから。

雪に頭が上がらない様子の仁だが、

蓮のフォローもあって小言は早々と終わった。

話の区切りがついたのを窺うと、

今度は修太が話し出した。

それより、さっき仁さんに色々言われてキレちゃった形山先輩なんだけど、怒った瞬間に光力がダダ漏れで、こっそり測ってみたんだ。

お前の力でか。
で、どうだった?

仁は、

先程まで睨み合いをしていた敬介が気になるようで、

壁にもたれていた体を離して少しだけ前に出た。

光力の量だけで見たら、仁さんと互角くらいだったよ。

何だと!!

明らかに自分の方が参加者の中でも優っている。

ましてや、

正統ではない異端の者に負けるはずがないと、

自信たっぷりだった為、

苛立ちから拳を壁に叩きつけた。

仁、興奮し過ぎ。

先程まで優しくフォローしていた蓮も、

今回は少し冷やかに注意した。

すまん……。

またも、

やり過ぎてしまった仁は素直に謝り、

その場に胡座をかいて座り込んだ。

全く、あなたにはもう少し私達への配慮をしてほしいものだわ。

あはは。
俺はいつもの仁さんらしくて、良い意味で緊張もほぐれるよ。

む……。

修太が笑ったことに、

何か言いたい様子の仁ではあるが、

次は口だけじゃ済まないと思い黙っていた。

ねぇ、修太。
彼はやっぱり強いのかな?

あくまでも測っただけだからね。
量が多くても、感情に流されてダダ漏れさせてるようじゃダメかな。

そうなのか。

顔の前で手を横に振りながら否定する修太の言葉に、

蓮は少し残念そうだった。

結局、それを確かめるのが第三試練よ。
あの子の横にいた女の子も気になるしね。


雪は美咲を思い浮かべると、不敵に微笑んだ。

時は第一試練の終了後。

広間から出て行った鈴香は、

近くにあった小部屋で、

回収した参加者の解答用紙を眺めていた。

パラパラと用紙をめくっていくと、

敬介と美咲の用紙がそれぞれ目に付いた。

ふーん。
やっぱり、カラウ以外にも関わってるやつがいたんだ。

■第十八問■

あなたが光術を学んだ師をフルネームで述べよ。
※なお、この設問については試練の対象外とする。

□第十八問・解答□

矢島 光一

ネズミ捕り成功ってとこか。

小部屋での口調は広間でとは全く違い、

矢島の名前に反応した。

第3章--認証試練編--(70話)-ネズミ捕り-

facebook twitter
pagetop