参加者が全員着席し、鈴香は淡々と説明を始めた。
参加者が全員着席し、鈴香は淡々と説明を始めた。
さっそく、第一試練について説明します。
簡単にいうと歴史の試験に近いと思ってください。
この試練では、光術士が何の為に戦うのかを歴史を紐解いていき、その使命について深く知っていただくものとなってます。
万が一にも、カンニングやその他不正を行った者は退場となり、永久に認証試練への参加を禁じられ、光術士の力を剥奪されます。
では、問題用紙を配ります。
説明が終わると、
前の席から順に一人ずつ問題用紙を配り始めた。
敬介は一番後ろの席に座っているため、
問題用紙が手元に置かれるまで、
目を閉じてゆっくりと呼吸した。
…………。
鈴香は敬介の机に配り終えると、
再び前へと戻っていった。
制限時間は三十分です。
では、第一試練「深識」開始!!
開始の合図とともに、
鈴香の懐から取り出された砂時計は、
机と一緒に準備された台に置かれる。
よし、まずはどんな問題かだ。
手元に置かれた問題に目を向ける。
そこには、
問題用紙が二枚と解答用紙が一枚あった。
パッと見は学校の試験みたいだな。
さて、一問目は。
■第一問■
光術士の力には大きく分けて、
二つの系統があるとされている。
その二つを答えよ。
系統……。
前に矢島さんが説明してくれたやつか。
□第一問・解答□
物質型
物体型
■第二問■
光術士の使命とは?
説明せよ。
説明か。
えっと……。
□第二問・解答□
シャドーの世界と繋がる次元の門を閉じるため、
それを取り囲む六門と人々を守り、
戦うこと。
こんなんで大丈夫か?
■第三問■
六門の古き守護者は?
古き守護者?
そんなの本には載ってなかったような。
ダメだ。
次の問題に行こう。
■第九問■
光術士の中でも、
大きな影響力を持っていたとされる人物は?
誰だったかな……。
そうだ、あの人。
□第九問・解答□
浦上 乃木亜
試験問題はまだまだ続いていき、
参加者達は制限時間内に終えることができるように、
ペンをはしらせた。
ちっ……。
…………。
…………。
…………。
よし……。
…………。
残り時間が15分になった頃には、
すでにほとんどの者が解答を終えており、
第一試練の終了を待っていた。
やばいな。
これが最後の問題だけど、半分くらいしか書けてない。
■第十八問■
あなたが光術を学んだ師をフルネームで述べよ。
※なお、この設問については試練の対象外とする。
これってアンケートか?
おっさんはフルネーム知らないし、矢島さんの名前にするか。
□第十八問□
矢島 光一
砂時計の砂が全て落ちきった。
はい。
これにて第一試練は終了です。
お疲れ様でした。
終了後、
鈴香の後ろで待機していた黒装束達は、
速やかに参加者の用紙を回収して回り、
鈴香に手渡した。
では、第二試練の準備のため、しばらくの間お待ちください。
そういって、
鈴香と黒装束達は全て広間から出て行った。
広間からはそれまであった緊張の糸も溶けて、
少しずつ談笑が始まった。
はぁ……。
敬介が机に突っ伏していると、
美咲が寄って来た。
形山君、どうだった?
敬介の肩に手をかけて尋ねた。
半分しか書けなかった。
俺、ダメかも。
さらに意気消沈し、
机から体を起こせなくなってしまっている。
形山君も?
私も半分くらいしか書けなかった。
天野さんも?
同じく少し落ち込みながら答えた美咲の声に、
体を起こして反応する。
うん。
全然聞いたことないものばっかりだった。
最後のアンケート?もカラウ先生は書けなかったから、光一さんの名前書いたし。
俺と同じだ。
二人で第一試練について話していると。
ん?
形山先輩。
お疲れっす。
お前!
そうだ、何でこんなところに?
修太の顔を見ると、
名前を呼ばれる際に驚いていたことを思い出し、
すぐに席から立ち上がった。
この認証試練を受ける為ですよ。
それは分かるけど、お前光術士だったのか?
これで認められれば、正式にですけどね。
形山君、知り合い?
うん。
ちょっとだけ。
俺達と同じ学校の一年生だよ。
そうなんだ。
私は天野美咲。
よろしくね。
相坂修太です。
初対面の美咲と修太が挨拶を終えると、
またも、敬介達に近づいてくる達がいた。
修太、何してるの?
…………。
どうも。
第一試練の前に敬介が見かけた女の子と、
知り合いらしき二人がやってきた。
さっきの子。
雪先輩。
同じ学校に通ってる先輩に会ったんで、挨拶してました。
そうなの。
私は吹石 雪(ふきいし ゆき)。
春光女学院の三年よ。
雪は敬介と美咲を見ると簡単に名乗った。
…………。
並桐 蓮(なみきり れん)。
高校二年だ。
隣のムスッとしてるのは高田 仁(たかだ じん)。
形山敬介、茜桜の二年。
私は天野美咲。
それぞれが対面して挨拶をするが、
あくまでも体裁よくしているだけのようで、
妙にピリピリした空気になっている。
そして、ずっと敬介らを睨んでいた仁が口を開く。
おい!
お前ら、正統な光術士じゃねぇんだろ?
仁は敬介を指差して、声を荒げた。
何?
聞いてるぜ。
「異端のカラウ」の弟子だってな。
異端?
どういうことだ?
はっ。
やっぱり知らねぇのか。
光術士の面汚し共が。
師が師なら、弟子も弟子だな!!
何だと!!
お前が、あのおっさんの何を知ってんだ!!
形山君…………。
突然の侮辱を受けた敬介は、怒りから声を荒げる。
普段からおちゃらけているカラウのこととはいえ、
なぜか他人の侮辱がとても許せなかった。
それに侮辱の対象には美咲も含まれていたからだ。
今それを、証明してやろうか!!
ああ。
やってやるよ!!
二人はお互い距離を詰めていき、
一触即発の状態だった。
はぁ…………。
仁、そこまでにしときな。
このままだと殴り合いになりそうな雰囲気で、
それを察した雪は仁を静止した。
ちっ!
…………。
お互いに背を向けて離れていき、
それぞれの仲間の方へと戻った。