広間に集まった者達は順に前へと呼ばれ、

受け取った番号札と同じ席に座っていく。



そして、全体の3分の2が呼ばれた頃。

次は……、相坂修太くん。

ん?

次の者の名前が呼ばれると、

どこかで聞いたことがある名前な気がし、

敬介は前に出ようとする者を目で追った。



すると、

散らばった参加者の真ん中ぐらいにいた、

赤い髪の人物が歩き出す。

はーい。

あ!

見知った顔が前で番号札を受け取るのを見て、

思わず声が出てしまった。




声を聞いた鈴香は、

一瞬だけ鋭い目つきで敬介を睨み、

笑顔に戻るとまた名簿に目を向ける。




その視線は突き刺さるようで、

つい目を逸らしたくなる程の眼力だった。



自らの席に移動している修太は、

途中笑みを浮かべながら敬介を横を通り過ぎていく。

次は、天野美咲さん。

静けさのせいで、

長い時間を過ごしているような気分になっていると、

美咲が呼ばれた。

はい。

返事をすると敬介に軽く視線を送り、

前へと進んだ。

その後も名前は呼ばれ続け、

とうとう最後の一人になった。




すでに着席している者達は、

全員でその一人を見ている。

最後は……、形山敬介くん。

はい。

多くの視線を受けながら前へと出る。

受け取った番号札には「三十ニ」と書かれており、

残った席に向かいながら深呼吸をした後、

着席した。

とりあえず、今はこれで全員です。
三名だけ第一試練を免除になっているので、第二試練から合流となります。

大宮が見当たらなかったのは、そのためなのか。

広間に到着してから現在まで、

大宮の行方に対しての疑問は解消された。

夕暮れ灯台で、

参加者達の名前が呼び上げられていた頃。

もしもし。
矢島です。

島本だ。
今大丈夫かい?

はい。

よし。
こないだから調べていた件について報告があってね。
君達が倒した内の一人、金髪の太った男を覚えているかい?

覚えてます。
名前は幻重です。

その男なんだが、半年前に失踪した土田大悟というやつと似ていてね。
先日、形山君の尾行をしている時に偶然発見したのもあって、以前そいつと関係のあった仲間を調べたんだ。そしたら……。

島本はズボンのポケットから手帳を取り出し、

パラパラとめくった。

失踪後に突然現れたので声をかけたところ、失踪前に比べ酷く好戦的。
最近は「愁いの沼(うれいのぬま)」に頻繁に出入りしていると言っていたんだ。
不慮の事故が多発する場所だが、何か関係ありそうかい?

愁いの沼ですって!


矢島は場所を聞くと突然声を荒げた。

もちろん知ってます。
そこは、光術士の世界ではとても重要な場所ですから。

重要?

はい。
光術士が戦うシャドー達は、しばらくの間こちらの世界とシャドーの世界を繋ぐ門の封印によって、こちら側にはこれなくなっていました。
しかし、時が経つにつれ封印の力も薄れ、シャドー達がこちら側に来るようになったんです。
門を閉じるために、各所に散らばった六門と呼ばれる地を楔にしたのですが、その一つが愁いの沼。

なら、そこにシャドーが行く理由といえば……、その六門とかいう封印の破壊が目的ということか?

ええ。
ですが、三幻僧は全て倒したので、急を要することはないと思いますが……。

すまんが、それは無理そうだ。
今回最後の情報だが、そこに訪れる度に、髪が緑色の人物と会っていたらしい。
証言した以前の仲間が見張っていて分かったそうだ。
あの三人の中に緑の髪はいなかったはずだから、別に仲間がいるとみて間違いないだろう。

なんですって!
それが事実なら、六門の封印が破られるのは時間の問題です。
一刻も早く、幻重が接触していた人物を探さなければ。

ああ。
今から愁いの沼に行こうと思っているんだが、一緒に来てくれないかい?

危険です!
僕が一人で行きます。
万が一にも敵と出くわせば命の保証はできません。

何いってんだ!
危険は百も承知さ。
それで刑事をやってる。
恐ろしいのは脅威が迫っていることを知っていて、手も足も出せずに犠牲が出ることだ。
だから俺も行くぞ。

島本さん……。
ありがとうございます。
では、これから一緒に来てください。

ああ。

第3章--認証試練編--(68話)-接触者-

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