夕暮れ灯台に到着した敬介と美咲は、

灯台から出てきた男に案内され、

会場へと入って行った。

入り口を通ると、

上に行く階段と下に行く階段が目に入る。

案内人の男は、

後から入った二人が扉を閉めたのを確認すると、

下に続く階段に向かって歩いて行った。

敬介と美咲は何も言わずに、

数歩遅れて付いて行く。

階段は石造りの狭い螺旋階段となっており、

2.5m上の天井には、

小さく燈ったランプが吊り下げられており、

階段を薄暗い不気味な空間にしていた。

…………。

背後からはよく見えないが、

案内人の横顔はぼんやりと照らされ、

階段の雰囲気と相まって、

さらに不気味さを醸し出している。

なんか不気味な感じの人だな。

うん。

敬介が案内人に気づかれないように、

小さく振り返り小声で言うと、

美咲もまた小さく返事をした。


案内人は口を開かずに黙々と階段を降っていく。

3分程階段を降りると木製の扉があり、

案内人は一度立ち止まり、

その扉を開けた。

扉の向こうからは、

今よりも明るい場所であることが分かるくらいに、

光が階段に漏れている。

その光はなぜだか二人に妙な安心感を与えた。

そして、

案内人が扉の向こうへ行くと、

二人は一緒に深呼吸をして先へと進んだ。

敬介の目の前には、

先程までの狭い階段が嘘のように思えるくらいに、

大きな空間が広がっていた。

例えるなら、

学校の体育館くらいに広く天井も高い。

さらに、

そこには同じく認証試練を受けるであろう者が、

ざっと見渡した限り30名程おり、

グループで固まっている者や一人で瞑想してる者、

年齢も含め様々な者達が集まっている。

…………。

姉さん、緊張するね。

弱気じゃダメよ。

…………。

弱そうなやつばっかだな。

まぁまぁ。

はぁ。

今年は受からないとな。

うん。
今年落ちたら終わりだからな。

こんなに沢山いるのか!

緊張と驚きから思わず声が出てしまった。


人が多いが会場全体は静かなため、

その声に気付いた数人と目が合い気まずくなる。

光術士を目指す人って、私達と同い年くらいの人もいっぱいいるんだね。

敬介と美咲は少し広間を歩きながら、

参加者を眺めた。

…………。

あれ?
あの制服着てる女の子って、春光(しゅんこう)の生徒じゃない?

敬介が目線を向けた先を美咲も確認した。

そうだね。
それより、こんなに沢山の人が会場にいるのに、女子校の女の子を見つけるの早かったね。

え?
いや別に、え?

少しだけ冷ややかな目で美咲が言うと、

敬介はパッと美咲に背を向けて、

少々苦笑いしながら頭をかいた。

ふふ。

美咲は別に怒って言ったわけではなく、

ちょっとした冗談で言ったので、

笑みを浮かべている。

お互い抱えていた緊張が少し和らいだ頃。

突如広間全体に鈴の音が鳴り響いた。

その音の先には、

案内人の男と女性が立っている。

…………。

…………。

広間にいた全員がその鈴の音に注目すると、

男は口を開いた。

只今から、特例の認証試練を執り行う。
通常であれば次回の開催は一年先ではあったため、実力のある正統な血族の諸君にはチャンスと思っていただきたい。
後の説明は彼女に任せる。
以上だ。

男はそういって、

側にいる女性に任せて広間を出て行った。

俺達のような人間は、歓迎されてないみたいな言い方だな。

そうみたい。

気持ちが和らいだと思った途端、

それは打ち崩された。


そして、

案内人と交代して皆の視線を集める女性は、

笑顔で様子を伺っている。

えー、お集まりの皆さん。
夕暮れ灯台へようこそ。
この度、認証試練の進行を務めさせていただくことになりました鈴香(すずか)です。
よろしくお願いします。

丁寧な挨拶を終えると、深々とお辞儀をした。

鈴香が再び体を起こすと、

黒装束の体格の良い者達が広間に入ってくる。

手には木製の机と椅子を抱えており、

一分も掛からずにそれを規則正しく並べた。

並べ終えた黒装束達は、

鈴香の後ろに横一列で整列する。

準備が出来たようなので、それぞれの席に着席していただきます。
名前を呼びますので、順に前へ出てきて番号札を受け取り、対応の席へとお座りください。

並んでいた黒装束の一人が鈴香の横に片膝をつき、

腰にぶら下げている袋から、

「一」と書かれた番号札を取り出すと、

鈴香へと手渡した。

只今からは、返事以外の一切の私語を禁じますので、ご注意ください。
一人目、木元 純(きもと じゅん)さん。

はい。

一人目は前に出て行き、

一番の札を受け取ると席へ座った。

第3章--認証試練編--(67話)-集う者達-

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