俺達は死んだ。

俺が戦ったところで勝てるはずもなく、気がつけば獣にノドを噛みちぎられ・・・。

私一人ではどうにもならなかった・・・
暗闇の中、どこからともなく襲いかかる獣の群れに、仲間をかばいながら戦えるはずもなく・・・

寝起きに獣の群れはキツイ・・・。

目が覚めた時には血の匂いと既に死んでいるお兄ちゃんの死体・・・。

俺達はあっけなく殺されたのだ。

俺達の死体は獣の群れがバリバリと音を立て
内蔵を骨ごと噛み砕きながら貪られた。

俺達が弱い、弱かった
ただそれだけだ・・・。

このまま死ぬなんて・・・情けなさすぎる
俺達は運命に選ばれたんじゃないのかよ・・・

ククク・・・

俺達の魂は、暗闇の中
獣たちの咀嚼音に飲み込まれるように
深い深い闇へと誘われる事になる

もう決して目覚めぬ眠りに意識が落ちるように
光が認識できなくなった。 














・・・。

うそ?ここで終わるの?
うーん、それじゃあまりにも可哀想過ぎる

突然の光、謎の声、謎の少女

すべてがどこか懐かしい感じであった。


すると、俺達の意識は、まるで天高く放り投げられたように
飛躍する感覚に襲われた

世界に溢れる奇跡の一部をあなた達に差し上げます。

いいですか、奇跡を使ったのですから代償を払いなさいよね。

少女の声が聞こえなくなると 俺達は・・・。

あれ?

え?

なっ・・・

にゃんと!!

く、首が・・・ノドが

わ、私の胸

腕も、足も、内臓も

な、なんとも

「「「「なんともなってなーーーーい!」」」」


各々はそれぞれで抱き合い
無事な事に喜んだ。

一体アレはなんだったんだ?私ら死んだよな?
というか、もう抱きつくな、離れろ

いいだろ!生きてることを確かめてるんだぞ!

よし、お前だけ殺す!

すんませんした!

あれは夢だったのかにゃ?

夢にしちゃ、今でも獣に食われた時の痛みは
鮮明に思い出せるが・・・

まさか、集団幻覚でも見てたのか?

その可能性は否定できないけど、幻覚作用のある物でも食べたのかしら?

食べ物は街で買った普通の干し肉にゃ

流石にオオトカゲは食べなかったからね・・・


ん?

おいまてよ、オオトカゲといえば・・・

オオトカゲの肉とかは普通にあるみたいだぞ

盗られてなくてよかったにゃ!

・・・。

いや待て!まだトカゲの肉があるってことは!

男が気づいたときには、自分たちの周りに
獣達が取り囲んでいた。

どうやら、夢から覚めた・・・とは違うみたいね

こいつら、さっきはよくも殺ってくれたな!
リベンジだ!

馬鹿、さっきやられたんだから今度は逃げるんだよ!

で、でも・・・既に取り囲まれているニャ

いや・・・今度は違う
なぜなら私が起きている。

角子はなにやら呪文を唱えだすと

獣の群れの一角に呪術を解き放った。

吹き飛べ!『爛れの忌柱』(フォビドゥン)

角子の呪術は、爆炎が炎の柱となり
辺り一面を焼き尽くす凶悪な技だった。

だが、その威力に獣達の一部は吹き飛び
その炎の威力に恐れ慄き他の獣たちも震えすくみあがり
逃げ出していった。

マジかよ!

お前つえーな!!

フン、当たり前だ
呪術を詠唱する時間さえあればこんなものよ

で、でも・・・流石に炎が強すぎて・・・

気がつくと辺り一面に炎が引火して
今度は自分たちが炎に取り囲まれていた。

まずいぞ!燃え死ぬ前に俺達も逃げるぞ!

おい、トカゲ肉はどうするんだよ?

命あっての物種ニャ!トカゲステーキとして取りに来ればいいニャ!

フフフ、トカゲ消し炭になってたりして

お前のせいだろうが!とにかく脱出!!

四人はまだ炎の弱い場所を見つけて
一目散に逃げていったのだった。










・・・・・・。

逃げられたか

チッ、まさかこれ程とはな

第五話 運命に選ばれし者 ”死”

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