デリンさんはこちらに向かって
歩み寄ってきていた。
程なく僕の姿に気付いて目を丸くする。
そして優しい笑顔になりかけたんだけど
すぐ隣にいるサララを認識した途端、
一転して不機嫌そうな表情に変わる。
デリンさんはこちらに向かって
歩み寄ってきていた。
程なく僕の姿に気付いて目を丸くする。
そして優しい笑顔になりかけたんだけど
すぐ隣にいるサララを認識した途端、
一転して不機嫌そうな表情に変わる。
サララ、
なぜお前がここにいる?
あの……えっと……。
今すぐ失せろ。
……死にたいのか?
…………。
あ、あのっ、デリンさん!
ご無沙汰してますっ!
僕はすかさず間に入り、
デリンさんの意識をこちらへ向けさせた。
するとデリンさんは
サララに向かって舌打ちをすると、
僕に向かって笑みを見せる。
トーヤ、戻ってきたのか。
怪我人だらけで
困っていたところだ。
回復薬の調薬を頼む。
はい、分かってます。
アンタに言われなくても
トーヤには
すでに調薬してもらうって
話になってんの。
そんなことより、
なんなのその態度?
最低ねっ!
なんだと?
トーヤに対しての態度と
サララに対しての態度が
違いすぎない?
サララはアンタの
使い魔なんでしょ?
何も知らないヤツが
知ったような口を利くな。
こいつは破門した。
すでに使い魔ではない。
…………。
するとレインさんは大きなため息をつき、
呆れ果てたような顔をして肩をすくめる。
素直じゃないわね、
このツンデレ魔族……。
サララを危険な目に
遭わせたくないから、
ひどい態度を取って
遠ざけようと
してるんでしょ?
っ!?
バ、バカなことを
言うなっ!
じゃ、なんでさっさと
サララを滅しないの?
気に入らないのなら、
そもそも破門なんかせずに
殺せば良かったじゃない。
あたしならそうするけど?
違いますかぁ?
非情な魔族のデリンさん♪
うぐ……。
確かにレインさんの言う通りだ。
デリンさんにはその力も権限も
あったはずだもん。
やっぱりデリンさんは
なんだかんだ言っても優しさのある
魔族なんだ。
アレスくんと出会って
それが強く表に出るようになっただけで、
もともと冷たいだけの魔族じゃない。
……いずれにせよ、
サララを破門したのは
紛れもない事実。
付きまとわれるのは
迷惑だ。
って、言ってるけど、
サララはどう思ってるの?
私は……
私は破門されたとしても
ずっとご主人様の
使い魔ですっ!
今も昔も、
これからもっ!
魂の込められたサララの叫びが
その場に響いた。
どれだけ彼女が
デリンさんのことを慕っているのか、
周りにいる僕たちにもハッキリと分かる。
デリンさん……。
…………。
……ふん、勝手にしろ。
ただし、今は緊急事態だ。
余計なことはするな。
邪魔にならないように
大人しくしていろ。
手間をかけさせるなよ?
このドジな使い魔め。
…………。
だってさ。
サララ、そばにいても
いいみたいよ?
はい……はいっ!
サララは嬉しそうだった。
僕もデリンさんがサララのことを
受け入れてくれて嬉しい。
じゃ、サララは
エルムと一緒に
待機してて。
分かりましたっ!
では、サララちゃんも
私と一緒に行きましょう。
こうして僕たちは行動を開始した。
僕はティアナさんやライカさんと一緒に
調薬室へ移動。
ここへ立ち入るのは旅に出て以来だから
すごく懐かしい気分だ。
襲撃による衝撃か何かで
物が散乱していたり壊れている物も
あったりしたけど、
予備の道具があるから調薬はできそうだ。
材料も充分に残っているし、
王城の敷地内にある薬草園へ行けば
きっと薬草類も生えていると思う。
さぁ、腕の見せ所だぞぉ~っ!
次回へ続く!