僕たちはレインさんと一緒に
王城へと移動した。


その途中に町の様子を見たけど、
どこも破壊されていてひどい有様。
火がくすぶっている場所もたくさんある。

モンスターや住民、兵士さんの遺体も
普通に転がっている。
ここまでひどい状態だなんて……。


城の中も怪我だらけの兵士さんが多くて、
まるで野戦病院だ。

志気だって下がりっぱなし。
みんな表情が曇っていて重苦しい空気が
辺りを支配している。
 
 

セーラ

トーヤくぅん!

トーヤ

あっ! セーラさん!

 
 
廊下を歩いていると、
前方からセーラさんが手を振りながら
駆け寄ってくる。

うわぁ、懐かしいなぁ!
 
 

セーラ

元気そうで
良かったですぅ!

セーラ

ガイネさんは
お城の医務室で
治療に専念してます。
容態は少し回復しました。

トーヤ

それは良かった!

セーラ

……カレンちゃんは?

トーヤ

あ……それは……。

 
 
僕は即答できなかった。
どう話せばいいか分からなかったから。

するとセーラさんは僕の頭を
ポンポンと軽く叩いてくる。
 
 

セーラ

いいですよ、
あとでゆっくり
話してくれれば。

トーヤ

はい……。

 
 
やっぱりセーラさんは優しい。

いつも僕を温かく見守ってくれて、
本当のお姉ちゃんみたいだ。
 
 

セーラ

トーヤくんが
帰ってきたこと、
みんなには私から
伝えておきますぅ。

セーラ

だから今は
回復薬の調薬を
お願いするのですぅ。

トーヤ

分かりました。

レイン

じゃ、トーヤは
調薬室へ行って回復薬を
増産してもらえる?
可能な限り多くね。

トーヤ

はいっ。

ライカ

私もお手伝いします。

 
 
ライカさんが前へ出て声をあげた。
その瞳には決意のような光が灯っている。

そうだよね、
ライカさんも薬草師なんだもんね。
その技術を活かして怪我に苦しむみんなを
助けたいって思ってるはずだもん。
 
 

レイン

あなたは?

ライカ

ライカと申します。
私も薬草師なんです。

ティアナ

私も作ろう。
3人で調薬すれば
かなりの量ができるはずだ。

レイン

助かるわ。
ふたりにも調薬を
お願いするわね。

ロンメル

俺はどうすればいい?
簡単な回復魔法なら
使えるが?

トーヤ

じゃ、怪我人の治療を
お願いするよ。

ロンメル

承知。

レイン

じゃ、
ヴァンパイアくんは
私についてきて。

エルム

兄ちゃん、僕は?
調薬のお手伝いは邪魔に
なってしまいますよね。

ティアナ

そうだな、
素人は遠慮してくれ。
うろちょろされると
調薬の成功率に関わる。

トーヤ

そ、そんな
言い方をしなくても……。

ティアナ

これは怪我人の命に
関わることだ。
厳しい言い方にもなる。

エルム

えぇ、その通りです。
僕もそれは
よく分かってます。

 
 
エルムは状況を理解しているみたい。
賢い子だもんね。


確かに薬草師としての立場で見れば、
ティアナさんの言っていることは正論だ。

調薬に専念するなら、
知識と技術を持っていないエルムは
足手まといになる。


しばらくどこかで待機していてもらうのが
一番いいんだろうな……。
 
 

トーヤ

セーラさん、
エルムのことを
お願いできますか?

セーラ

分かりましたぁ。
では、エルムくん。
私と一緒に行きましょう。

エルム

はいっ!

トーヤ

サララはどうする?
デリンさんに
会ってきたら?

サララ

あ……う……。

レイン

なんでデリンが
出てくるのよ?

トーヤ

そっか、レインさんは
知らなかったんでしたね。
サララはデリンさんの
使い魔なんです。

レイン

そうなのっ!?

サララ

……はい。

レイン

あいつにこんな可愛い
使い魔がねぇ……。

サララ

っ!?

 
 
――その直後だった。

サララは息を呑み、
狼狽えながらもある一点を見つめ続ける。


僕もその方向へ視線を向けてみると――
 
 

デリン

…………。

 
 
そこにいたのはデリンさんだった。

怪我をして廊下に座り込んでいる
兵士さんに声をかけつつ
こちらに歩み寄ってきている。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第152幕 再会、そして……

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