誰かが僕たちの方に向かって
声をかけてきた。
依然として姿は見えないし、
気配も感じられない。

ロンメルですら気付かないなんて
何者なんだろう?
 
 

ロンメル

姿を見せろ!
周囲を全て吹き飛ばしても
いいんだぞ?

あら、怖い怖いっ♪
でもそんなことは
させないけどね。
その前にあたしが
あなたを滅しちゃうから。

ロンメル

大した自信だな?
俺は本気でやるぞ?

そういうせっかちな男は
嫌われるわよ?
そもそもあたしは
あなたたちの敵だなんて
言ってないんだけど?

 
 
その直後、
瓦礫の影からその声の主が姿を現した。

それは僕の見知った顔――。
 
 

レイン

…………。

トーヤ

レインさんっ!

レイン

久しぶりね、トーヤ。
元気そうで良かった。

ロンメル

……トーヤ、知り合いか?

トーヤ

うんっ。レインさんは
女王様の相談役で
大魔法使いなんだ。

レイン

あらあらぁ♪
大魔法使いだなんて
お世辞はいいわよぉ。

ティアナ

レインっ!?
まさかデモンキラーの
異名を持つあのレインっ?

レイン

……へぇ、
やっぱり魔界では
そこそこ名が
売れてるみたいね。

レイン

そう、
それはあたしのことよ。
数え切れないほどの魔族を
滅してきたわっ♪

 
 
 

 
 
 
一瞬で場の空気が凍り付き、
僕以外の全員が身構えた。


レインさんはみんなが
イメージしているほど悪い人じゃないし、
敵でもないのに。

もし争いになったらどうしよう……。
 
 

トーヤ

だ、大丈夫だよ!
レインさんは仲間だから。

ロンメル

……どうかな?
油断ならんと思うがな。

レイン

どう感じようと
自由だけどね。

ロンメル

そうだな。

 
 

ロンメル

っ!

レイン

はっ!

 
 
 

 
 
 

ぎゃぁああああぁーっ!

 
 
 

 
 
不意にレインさんとロンメルは
同時に魔法を繰り出した。

でもそれはどちらも
明後日の方向へ飛んでいって炸裂し、
そこから断末魔の叫び声が響く。
 
 

トーヤ

えっ?

レイン

気付いていたのね?
やるじゃない。

ロンメル

見くびるな。
あれだけ殺気を
漂わせている輩なら
気付いて当然だ。

 
 
そうか、僕たちを襲おうとしていた
モンスターが隠れていたのか。

レインさんもロンメルもそれに気付いて
攻撃したんだね。
どちらもさすがだなぁ……。
 
 

レイン

それよりもトーヤ、
大したものじゃない。
かなりの数のモンスターを
食い止めたみたいだから。

トーヤ

いえ、僕は
補助していただけです。

トーヤ

主力はティアナさんと
ロンメルですよ。
エルムにも助けられましたし。

レイン

でもリーダーは
あなたなんでしょ?
すぐに分かったわよ。

トーヤ

いえ、そんな
リーダーだなんて……。

ライカ

それよりもあなたは
どうしてここへ?

レイン

モンスターを倒すためよ。
でもいつもと比べて
数が少ないから
周囲の様子を探っていたの。

サララ

それで私たちを
見つけたわけですねぇ。

エルム

あの、あれでいつもよりも
数が少なかったんですか?

 
 
確かにエルムの疑問はもっともだ。

僕たちが倒したのはあくまでも一部で、
その多くは王城へ向かっていった。
おそらく数百体はいたと思う。


あれで少なかったなんて……。
 
 

レイン

まぁね。一時は王城が
陥落寸前になったから。

トーヤ

えぇっ!?

レイン

気付いていると思うけど
結界によって魔族は
魔法が封じられている。
城の兵士たちは物理攻撃で
戦うしかないでしょ?

ロンメル

確かにそれだと
苦戦するだろうな。

レイン

ま、仕方なくあたしが
魔族のために最前線で
戦ってあげてるってわけ。
デモンキラーなのに、ね?

 
 
レインさんは皮肉っぽく言った。
ロンメル以外のみんなは
口を噤んでしまう。


仕方なくだなんて、
絶対にレインさんの本心じゃない。
素直じゃないだけなんだ。

僕は彼女のことをよく知っているから
それがよく分かる。
 
 

レイン

それよりもトーヤが
戻ってきてくれて
助かったわ。
すぐに王城へ来て!

トーヤ

どうしたんですか?

レイン

お城は怪我人だらけで
大変なのよ。
回復薬は使ってしまって
あまり残ってないし。

レイン

魔族は魔法が
封じられてるから、
回復魔法を使えるのは
シーラとアレスくらいで
手が回らない状態なの。

トーヤ

あっ!
ふたりとも無事に戻って
いるんですね?

レイン

えぇ、
ガイネも保護してる。

 
 
その話を聞いて僕はホッした。

アレスくんと別行動になって以来、
連絡を取り合っていなかったから
どうしているか気になっていたんだよね。


王城にいるならガイネさんは
そう簡単に連れ去られることは
ないだろう。

本当に良かった……。 
 
  

 
 
 
次回へ続く!
 

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