事務的な五日町、
ところどころ雑談を挟む夜暮、
無口の数奇。
お互い話を邪魔することもなく、
スムーズに用件は済んだ。
すみません、お役に立てなくて。私も、届けは出したものの警察の方から連絡がなくて困っていたんです
夫のことでなにか分かったら、知りたいくらいです
全力で捜査中です。
どうか、信じてお待ちください
事務的な五日町、
ところどころ雑談を挟む夜暮、
無口の数奇。
お互い話を邪魔することもなく、
スムーズに用件は済んだ。
収穫は無しみたいですね……
今、一番『薄ピンクのキャブ』の持ち主に近いのがココってのは変わりませんけど
そうですね
で、数奇さん気づいてます？
…………何に、ですか？
彼女ですよ、彼女。
何か感じません？
……確かめるんですか？
あ、譲ってくれます？
数奇も気づいていたことを確かめて目を細めると、
夜暮は素早く海似みちるの方へ向き直った。
みちるさん。
……最後に、ちょっと聞いて良いですか？
？
まだ、何か？
貴女、もしかして妹さんがいませんか？
みちるは、小首をかしげた。
ええ、います。
……私の旧姓、『遠区』っていうんです
調査書
No.XX 遠区 霞
調査対象自身には取り立てて「問題」の兆候はない。
精神的に不安定な面があるが、
性格面を考慮すると
現時点では介入の必要性はないと判断。
■■■■■■に所属する
墨野 博叉(すみの ひろさ、別項目にて調査報告)
の妻であるが、
調査の結果、機密保持措置の
対象には認定されていない。
関連資料
墨野 博叉(追記：死亡)との情報については
以下より続くデータを参照せよ。
‡２
外までお送りしましょうか？
いえ、結構
……やっぱりね
ドアの閉まる音を聞いて、夜暮は囁いた。
なんとなく笑い方があのヒトに似てると思ったんですよ
僕、女の顔を見分けるのは得意ですし
何か言いたげだな
そりゃあ、ねえ？
数奇さんも思いませんでした？
……
まあ、いいですけど。
五日町さん、墨野の死因ってなんでしたっけ？
毒殺だな
墨野が死ぬ直前に潜入してたのってどこでした？
その情報をお前に開示したことは一度たりとも無い
……だが、少なくとも毒薬は扱っていない所だ。
どちらかといえば重火器
銃殺は想定していたが、毒殺は正直、あの潜入先の手口にしては慎重すぎると感じた。
もしあの組織の者が手を下したならば、という仮定の話だが
なるほどなるほど。
で、墨野の家には同居人(笑)がいましたよね？
「遠区」霞という女だな
ですよね？
同居人、というか恋人の姉なら、墨野に毒を盛ることも比較的たやすいですよね？
いきなりその推論は無謀だ
ただの推論だな。
思いつきで事件を語るな
五日町は迷路のような廊下を
迷うことなく先導して進んでいく。
あはは、分かってますよ。
ただオモシロイなって思っただけです
だって、もし僕が今「思いつき」で言った事が正しかったら
！
五日町が足を止める。
それはエレベーターホールに
着いたからではなく、
まして、
夜暮の言葉に反応したからという
わけでもなかった。
「思いつき」とはいえ、正しかったりなんてしたら――
重厚な鉄扉の前には、
シンプルな張り紙がされていた。
エレベーター前の扉。
この複雑な造りの建物のこの階で、
現在確認した唯一の出口である。
――僕ら、なかなかヤバい人に喧嘩売ったことになりますよね？
例えばサリチル酸メチルを多く含むウィンターグリーン油は、キャンディのような甘い香りで誤飲を誘うんですよ
