エルムにはラーニングという
特殊能力があった。
それを使えば魔法や技をコピーし、
忠実に再現できるという。


でも魔法力のないエルムは
どうやって能力を行使しているのだろう?

何か秘密があるみたいだけど……。
 
 

エルム

……おっしゃる通りかも
しれません。
分かりました、
皆さんにお話しします。

エルム

この能力の使用に
必要な対価は生命力です。
その技のレベルが高いほど
命を削るんです……。

トーヤ

なっ!?

エルム

だから無闇には
使えません。
本当に奥の手なんですよ。

ティアナ

やはりな……。

 
 
そういうことだったのか。
それならティアナさんの意見にも
納得できる。


確かにその事実を知らなかったら
僕たちはエルムに力の行使を
お願いし続けてしまっていただろうな。

そして手遅れになった時、
安易に頼ったことを後悔したことだろう。
 
 

ロンメル

……見直したぞ、エルム。

エルム

えっ?

ロンメル

自分の命を削ってまで
お前は戦った。
その根性は認めてやる。

エルム

お前なんかに認められても
嬉しくない。

トーヤ

ふふ……。

 
 
嬉しくないなんて言いつつも、
エルムは満足そう。
少しは2人の心の距離が縮まったのかも。

そうであったら僕は嬉しい。
 
 

ロンメル

だが、エルムには
無理をさせるのも
仕方がないかもしれん。
この状況では……な……。

エルム

お前に言われずとも、
覚悟は出来ている。

エルム

兄ちゃん、もしもの時は
遠慮せず僕に
命令をしてください。
特殊能力を使え、と。

トーヤ

で、でも……。

エルム

僕は兄ちゃんの使い魔。
兄ちゃんが全てなんです。

サララ

トーヤくん、
ご主人様ならエルムくんの
想いを受け止めてあげて
ください。

サララ

私も使い魔なので
エルムくんの気持ちが
よく分かるんです。

トーヤ

サララ……。

トーヤ

……分かった。でも僕が
エルムの能力に頼るのは、
本当に危機の時だけ。
何よりも命が大切だから。

トーヤ

いいね、エルム?

エルム

……はいっ!

ライカ

ふふっ。

ロンメル

相変わらず甘いヤツだ。

 
 
僕はエルムのご主人様だけど
単なる主従関係にはなりたくない。
ともに助け合う間柄でありたい。


――それが僕の目指す形なんだ!
 
 

トーヤ

さて、これからどうする?

ティアナ

王城へ急ぎましょう。
被害を受けている
はずだから。

ライカ

魔法が使えませんからね。
王城が陥落していなければ
よいのですが。

ロンメル

あの程度なら
物理攻撃しか出来なくても
防げているだろう。

ロンメル

マトモに戦える兵士の数が
充分にいればの話だがな。

サララ

でもでもぉ、
兵士さんたちは
強い者になびく傾向が
ありますからねぇ。

サララ

ピンチになったら
寝返る可能性があります。
魔族ですから……。

 
 
――そうだよね、サララの言う通りだ。


アレスくんがノーサスと対決した時、
最初こそ多くの兵士が戦っていたけど、
旗色が悪くなると一目散に逃げ出す者が
続出したと聞いている。

それが原因で城が思った以上に早く
陥落したと言われているし。


もっとも、アレスくんが城へ着いた時点で
かなりの数の兵士さんたちが
何者かによって滅せられていたという
噂もあるんだけどね……。

その噂の真意は定かじゃないけど、
僕はあり得る話だと思う。
勇者であるアレスくんを影で支えていた
誰かがいてもおかしくないから。
 
 

なるほどね……。
モンスターの数が
少ないと思ったら、
こういうことだったのね。

アンタたちが
殺ってくれちゃった
わけか……。

トーヤ

っ!?

 
 
不意にどこかから声がした。

姿は確認できないし、
気配も感じられない。
ロンメルでさえ気付いてない様子だもん。


つまりきっと相手は只者じゃない――。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第150幕 主従の形と潜む影

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