敬介が矢島に電話してから数分後、

矢島が公園へとやってきた。

二人とも、お待たせ。

矢島さん。

さっそくだけど、届いた物を見せてもらってもいいかな?

はい。

敬介が黒い封筒を手渡すと、

矢島はすぐに中身の便箋を読み始めた。

光一さん、怖い顔してるね。

うん。

矢島の表情を見て、

美咲が敬介にそっと近づき声をかける。

そうこうしていると、

読み終えた矢島は敬介に近づき、

黒い封筒を返した。

矢島さん、これって?

これに書かれている光術士統一協会は、全国に散らばる光術士の元締めで、見習いや最上級の光術士まで全ての者を管理しているんだ。
封筒や便箋にある刻印からも特殊な光力を感じるから、本物で間違いない。

そしたら、私達の味方ってことになるのかな?

いや、残念ながらそうとも限らない。
僕が心配していたのはそこなんだ。
宛名に灯(ともしび)って書いているだろ?
灯っていうのは、協会の中でも正当な血統以外を光術士とは認めないっていう派閥でね。
今回の封書も、三幻僧の件で敬介君や美咲ちゃんに目がついたんだと思う。

でも、認証試練ってのをやってくれるんだから、割と問題ないんじゃ?

認証試練の目的は、敬介君と美咲ちゃんから光術士としての力を奪うことにあるんだ。

え!
奪うってどういうことですか?

二人が初めて光力を扱う修行をする時に、透明な球を使ったのを覚えてるかい?

あの手のひらで浮かせる修行ね。

覚えてます。
すっごい苦労したから。

あの球はただの球じゃないんだ。
魂光(こんこう)といって、正当な血統以外でも光力を覚醒できるようにするためのもので、とても貴重なものなんだよ。
もちろん、その逆で光力そのものを奪い取るものもあるんだけどね。

おっさん、よくそんなすごいの持ってたな。

カラウさんは光術士としてかなりの実力者だからね。

そんなに凄いおっさんだったのか。

それで本題だけど、その灯は魂光を使っての覚醒に大反対しているんだ。
たとえ優秀と思われる者がいても、正統な者以外を光術士にするべきではないってね。

そしたら、私達のことは放っておかないよね。

そうなるよな。

敬介と美咲は不安そうに顔を見合わせた。

だから、なんとしてでも認証試練を突破してもらいたい。
敬介君と美咲ちゃんは、カラウさんが認めた優秀な光術士だからね。

矢島さん……。

そしたら、今日の任務は僕に任せてゆっくり休んで。
詳しい対策は、また明日話そう。

ありがとう、光一さん。

ありがとうございます。

笑顔で手を振る矢島に、

敬介と美咲は軽くおじぎをして公園を後にした。

ここは夕暮れ灯台。

真夜中ではあるが、人影が4つ灯台を見上げている。

あのカラウの弟子だってやつら、本当に来るかなー?

さぁね。
ああいう人達がいると、私達のような正統な人間が困るのよね。

んなこたぁ、どうでもいいさ。
認証試練の歴史上でも滅多にない、余所者も参加するんだ。
楽しくなりそうだぜ。

みんな殺気立ってるね。
まぁ、しょうがないか。
あのカラウの弟子達だもんな。

第3章--認証試練編--(63話)-黒い封筒③-

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