協力者は鮫野木をすんなりと通り過ぎ、家の中へと入っていく。その遠慮なさに鮫野木は反応が遅れる。
協力者は鮫野木をすんなりと通り過ぎ、家の中へと入っていく。その遠慮なさに鮫野木は反応が遅れる。
ちょと待って! 勝手に入るな
なんだい? 私は君に協力しに来たんだ。落ち着いて話そうよ
話なら、外でも出来るだろ
私は座って話したいの
鮫野木の話を聞かず、協力者はリビングに向かった。
私、インスタントコーヒーで良いから
ソファーに座った協力者は飲み物を頼んだ。悪気なんて一切無い態度な協力者にいらだちを覚える。
あの、友達でも少しは遠慮するぜ
そうだね。でも君が友達、片手で足りるぐらいしか居ないだろ
……うっ
悪か三人しか友達が居なくて、居ないよりはましだろ。
そもそも、友達が少ないのは君が昔、友達を裏切ったからだよね?
…………おい! どうしてそれを知っているんだ!
あの日のことは俺と小斗ちゃんとアイツしか知らないはずだ。
私が協力者だからさ。私だから知っている。後は君を入れた当事者だけ
答えになってないぞ
そんなことより、野沢心ちゃんを助ける方法を聞きたくないかい?
…………
園崎さんが言っていた(全てを見通しているような気がする)そのことがなんとなく分かった気がした。
聞きたいだろ。インスタントコーヒーは良いから、座りなよ。座ったら話してあげる。それが条件さ
分かった
鮫野木は協力者と反対側に座った。協力者と目が合った、鮫野木はとっさに目を逸らした。
ふふっ、そんなに警戒するなよ。別に私は君の敵じゃない
敵、俺には味方には見えない
そうだろうね。私は君の味方でもない
どっちだよ
だから私は協力者なのさ、ただし情報を伝えるだけで直接手助けはしない
そうですか
どうも協力者のペースに慣れない。それ以前にあの日のことを知っている? 俺にとってあの日のことはけして忘れられない。忘れてはいけないことだ。だって原因は俺にある。
さてと、始めに君に質問なんだが……聞いてる?
……何ですか
考え事をしていて協力者の話を聞き逃していた。協力者は鮫野木が返事をしてから話し出す。
君は園崎桜の話を聞いてどう思った?
……
どうして答えられない?
……どうして良いか、分からなくなった
それは六十部紗良の言葉を理解したから?
……助けても、野沢を目覚めさせても一人きりの現実だけだ
野沢が目を覚ましたら本物の現実を知ってしまう。家族が居ない現実。十年、歳が離れた友人。帰る家が無い現実。他にもあるだろう、知ってしまったら余りにも可哀想だろ。
人を助けると簡単に言えるけど、本当の意味で人を助けることは出来ない
人を助けるには、それなりの代償と努力が必要なのさ
代償と努力か……昔の俺はそれをしなかった。今なら出来るだろうか? 当てがあるとすれば協力者だろうが、何処まで信用して良い物か。
野沢心を助けたい。けど、本人が不幸になる
協力者は手を鮫野木の目の前に伸ばしてチョキの形にする。
そんな君に選択肢を二つ用意した。一つは園崎桜が選んだ簡単に助け出す選択肢
もう一つは難しく辛く、本当の意味で助けられる選択肢
さぁ、どちらを選ぶ?
あんたって人が悪いよな。たく……本当
本当の意味で助けるなら、難しく辛い方しかないだろ
野沢を一人にしない方法があるのならば、その道が険しくても行くしかない。助けられるのに助けないのはもうしたくない。
さて、ここに一枚の不思議なチケットがある
協力者は紙を取り出して、鮫野木に見せる。それは六十部が持っていた紙と同じ物だった。あの紙のおかげで現実の世界に帰ってこれた。
六十部紗良が君に使った不思議なチケット、これを野沢心に使うだけ、それで解決するはずだった
今回は緊急用に渡しておくよ。さぁ、最後の一枚だ。考えて使うように
協力者は紙を鮫野木に手渡した。
緊急用って、何かあるのか
さぁ? 未来は決まっていない。要はその時の保険さ
未来? そりゃ分かるはず無いだろ
だろうね。未来なんて分からない方が良い
協力者はニッコリと笑ってる。しかし、鮫野木でもその笑顔が作っていることが分かった。
突然、協力者は席を外し、まるでミュージカルの俳優みたいに話し出す。
君の選択肢で未来はいくらでも変えられる! まだ、野沢心を最高な方法で助けることが君なら出来る
お、おい。今何時だと思っているんだ
君が望む。最高のパッピーエンドが訪れるよう。これを授けよう
協力者はポケットから短剣を取り出した。その短剣の鞘を抜いて剣先を天井に向けた。その短剣が本物だと分かるのに時間はいらなかった。
果物ナイフじゃないよ。本物さ、これで魔女を刺せ。それが君の役目であり代償さ