園崎桜は真剣な雰囲気で鮫野木に話しかける。
園崎桜は真剣な雰囲気で鮫野木に話しかける。
野沢心は私の一番の友人
私が学生の頃、心ちゃんが眠りから覚めなくなりました
それって、本当ですか
園崎は頭を縦に振った。
俺が野沢から聞いた話と違う。野沢は眠ったなんて言ってない。
心ちゃんは十年間、眠っています。今も……これからも
十年! そんなことって、あり得るんですか?
それが本当なら、俺は野沢の夢の中に居たのか? そんなはずは無い。あの街で体験した出来事は夢で片付けられない。
吉良が園崎に意見を言う。
確か、クライン・レビン症候と言う眠り病があるけど。流石に十年は異常かな
僕が聞いた話は十二時間以上、寝てしまうとは聞いたけど十年は長すぎる。昏睡状態では?
お医者様もそのようなことを言っていました。脳死の疑いもありましたが、彼女は間違いなく眠り続けています
鮫野木は疑問を投げかけた。
……あの、野沢は何処かで寝ているんですか?
ええ、東京の病院で入院しています
そう……ですか
そうか、野沢は生きているのか。それなら六十部は野沢心を助けられないとか帰る場所が何処にもないとか言ってたけど……アレ? 野沢が帰る場所って何処だ?
失礼ですが、園崎さんが学生の頃って、中学生の事ですよね
よくご存じですね。十五の時です
野沢、野沢心の両親はどうしてます?
そう、ですね……お二人とも亡くなっています
……そうですか
六十部、お前はこのことを知ってて俺を傷つけないように話していたのか。
心ちゃんは身内すらいない。これも全て、手紙に封入していた呪文と魔法陣のせいです
当時、野沢ちゃんが熱心に解読をしてました。結果、学校で突然倒れて、寝たままになってしまった
私は何も出来ず。歳を取り、園崎家に嫁ぎました。生活も立場もガラリと変わっても野沢ちゃんを目覚めさせることは出来ない
そんなある日の事です。突然、協力者さんが私に会いに来ました
協力者ですか?
鬼灯先生は嫌って、六十部は少し変わってると言ってたけど、前から気になっている協力者と呼ばれる人物はどんな人だろう?
そう、協力者さん。鮫野木くんもいずれ会う事になるでしょう
……どうしてです?
確か六十部が園崎さんに会った次の日に会いに来るって言っていたな。
上手くは言えませんが、彼女は普通の人とは違う……何かを持っています。例えるなら、全てを見通しているような気がします
鮫野木さん、協力者さんには気をつけてください
園崎は不安そうな声で話した。
分かりました
話がそれましたね。協力者さんが会いに来た日、野沢心を目覚める方法を教える代わりにある探偵に依頼をして欲しいと頼まれました
あの、探偵って六十部紗良の事ですか?
ええ、紗良さんです
協力者さんに言われた通り、探偵の紗良さんに依頼をしました
どんな依頼をしたんですか
野沢心の身辺調査と監視です
身辺調査、監視? けど、野沢は東京の病院に居るんじゃ?
はい。私もおかしいと思いました、けれど協力者さんが言うに現実の野沢心じゃないと
現実の……ねぇ
協力者はあの街、裏の世界を知っているのか。
疑問に思いましたけれど、心ちゃんを目覚めさせる為、協力者さんの言うとおりに紗良さんに依頼をしました
六十部にですか
六十部が園崎さんの依頼を受けたのは協力者が一枚噛んでいたのか。
最後に一つ、鮫野木さんに聞きたいことがあります
はい。何ですか?
どうして、あなたは心ちゃんを助けたいのですか?
何で知っているんだろう?
それは、約束をしましたから。助けるって
……なるほど
園崎の小さな笑顔を見える。
ありがとう。あなたが心ちゃんを助けてくれるのね
はい
……俺が救う?
園崎との話が終わって、鮫野木は鬼灯に家まで送ってもらった。鮫野木はどうも引っかかる事があって、会話に参加できなかった。
家に帰って特にやることも無く、動画とかを見て過ごしていた。深夜十二時を過ぎようとした時、インターホンのチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だ?
不思議と思って玄関のドアを開けると優しそうな女の人が立っていた。
えーと? 何か用ですか?
用も何も、君に会いに来たんだよ!
俺に?
アレ、聞いていない? 私はただの協力者だよ
あなたが、協力者
そうだ、そうだった。六十部が言っていた、園崎さんに会った次の日に会いに来るって、言ってたけどこんな時間に来るのかよ。
協力者はニッコリと笑っている。