ギーマ老師が狙われていた理由は
不老不死の薬を作れるということだった。
まさかその薬が実在していたなんて……。
ギーマ老師が狙われていた理由は
不老不死の薬を作れるということだった。
まさかその薬が実在していたなんて……。
では、ティアナさんは
調薬方法までは
知らないんですね?
えぇ、先生しか知らない。
書物も存在しないわ。
悪用されるのを危惧して。
そうですね、
それがいいと思います。
そんな危険なものが
野放しだと大変ですから。
下らん。
ヴァンパイアにとって
不老不死など
当たり前のことだからな。
……不老不死など
何がよいのか。
退屈をもてあます
だけだというのに。
ロンメル……。
そうか、不老不死ということは
悠久の時を過ごさなければならないという
ことなんだもんね。
ロンメルは帰らずの遺跡で
退屈しのぎをしていたくらいだし。
それに自分だけが不老不死になっても
周りのみんなは亡くなってしまうわけで、
黄泉への旅立ちを常に見送る立場になる。
そんな悲しみに
耐え続けなければならないなんて
それはそれで地獄の苦しみかも……。
兄ちゃん、
これからどうしましょう?
そうだね、
まずは女王様に
報告した方がいいよね。
ではでは、
王都へ戻りましょう。
それなら魔方陣と
転移魔法を使おう。
それなら王都の近くまで
行けるからな。
王城の中には
行けないのですか?
転移魔法では王都の中へ
直接行けないように、
結界が張ってあるんだよ。
中から出る場合は
大丈夫なんだけどね。
ノーサス様の話だと
出入りが出来るようになる
アイテムも
あるらしいですよ。
へぇ、そうなんだ。
よし、急ごう。
僕たちは魔方陣のところへ移動した。
小屋から離れた場所にあったおかげで
無傷だったのは幸いだった。
そしてティアナさんがスペルを唱えると
魔方陣は輝きながら稼働を始める。
光が収まると、
僕たちは草原の中に隠されていた
魔方陣の上に立っていた。
うん、ここはなんとなく見覚えがある。
王都の西にあるロコロコ草原だと思う。
こんな場所に転移の魔方陣が
隠されていたなんて……。
トーヤさん、
ここがどこか
分かりますか?
うん、見覚えがあるよ。
王都まで歩いて三十分も
かからないと思う。
あのあのっ、
王都の方角を
見てくださいぃ!
えっ?
サララは目を丸くしながら指を差した。
その焦ったような声に、
僕もすかさずその方向へ視線を向ける。
その遥か彼方に見えたのは王都の街並み、
そしてそのあちこちから
激しく立ち上る煙だった。
しかも一か所じゃない。
あちこちが燃えているみたいだ。
トーヤ、気をつけろ。
あの方向から魔物の気配を
感じるぞ。
ひとつやふたつではない。
数百ほどの集団だ。
だからこそ、この位置でも
感じられるわけだがな。
そんな……。
王都では何が
起きているんだろう?
急ぎましょう。
嫌な予感しかしません!
待て、何かおかしい。
ハッキリとは分からないが
違和感がある。
私もそんな気がします。
僕には分かりませんが。
兄ちゃんはどうです?
僕にも分からないな。
私はライカちゃんたちと
同じ気分ですね。
気をつけて進もう。
警戒を怠るなよ。
僕たちは周囲に注意しながら
王都へと急いだ。
この草原なら見通しがいいから
何かに襲撃されてもすぐに分かるけど、
魔法などで遠隔攻撃をされる可能性も
否定できないからね。
僕たちが王都に近付くほど
町のあちこちから立ち上る煙が
ハッキリと見えるようになる。
辺りに漂う焦げた臭い。
爆発音もあちこちで轟いている。
これは何かの襲撃――
ロンメルの言葉が正しいなら
魔物たちに王都が襲われているのだろう。
そして王都の出入口まで辿り着くと、
この騒然とした状況の原因を
ついに目撃することとなる。
ぐがぁああぁ!
魔物の集団!
どうやら王都は
こいつらに
襲われていたらしいな。
結界を張ります。
待っててください。
…………。
ライカさんは結界魔法の詠唱に入った。
僕はフォーチュンを握りしめ、
落ちていた石ころを装填する。
一方、ティアナさんは手甲を装備している。
もしかして接近戦闘能力があるのかな?
だとすると、心強いけど。
今、接近戦が出来るのは
ロンメルくらいしかいなかったから。
セーラさん、クロード、カレン――
接近戦に強いみんながいないもんなぁ。
だからこそ、僕ががんばらないと。
そんな……そんな……。
どうした、ライカ?
魔法が……
発動しません……。
えっ!?
ライカさんの話を聞いて
ロンメルとサララ、ティアナさんが
魔法を試し始めた。
するとロンメルは問題なく発動したけど、
サララとティアナさんは
うんともすんともいわない。
……サララの場合は
いつものようにただの失敗かもだけど。
どういうことなんだ、これはっ!?
次回へ続く!