本日のメニュー
①神楽の種類
②鎌鼬
ご無沙汰していました。本編もいよいよ日常パートから逸脱してきたところです。こっからさらに加速度的に物事は動いていきます。
本日のメニュー
①神楽の種類
②鎌鼬
①神楽の種類
神楽は様々な基準で区別することができますが、まずは大陸から伝わってきたものか、日本独自のものかという区分が良いでしょう。ちなみに後者は国風歌舞(くにぶりのうたまい)と言います。
国風歌舞というのは、大陸の影響を受けていない元々日本にあった雅楽の神楽を指しますが、大陸の楽器を使っているものがあったりと、若干の矛盾が見られるものもあります。
実は、雅楽と言ってまず頭に思い浮かぶ音色の笙(しょう)や篳篥(ひちりき)などは、大陸から渡ってきた楽器で日本のものではないのです。
本編に登場した奈緒の神楽は、和琴(わごん)と神楽笛(かぐらぶえ)を用いたシンプルな演奏ということになっています。楽器としては、奈緒自身の持つ神楽鈴(かぐらすず)も一応カウントしていいでしょう。
しかし、ここで注意したいのが神楽(雅楽)というものは、さらに二つの区分があることです。雅楽というものは、その名の通り「みやびなおんがく」、すなわち、元々は天皇やその周辺(宮中)の人々が楽しむ、あるいは儀式として執り行われるものであったのです。それが神社においても行われるようになっていったのです。要するに、一般の人が神社で見ることができる神楽は、また違った神楽であるということです。そしてこれら二つの神楽は、宮中の御神楽(みかぐら)と、民間の里神楽(さとかぐら)の二つに大別されます。
国風歌舞の中には、宮内庁が一般に公開を認め音声や動画として視聴することができるものもあります。しかし、極度に儀式的要素が強いものは、一般に公開されておらず、その儀式自体も天皇および神職しか参加できません。
さらに細かく…。神楽の形式にもさまざまな種類があり、
①ただ音に合わせ踊るもの
②ストーリーがありセリフがあるもの
③祈りを捧げながら舞うもの
のようなものあります。要するに「これ」という型があるものではないと言えます。
古事記の「天岩戸」がモデルである神楽歌(かぐらうた)は、御神楽の中では①に当てはまるものでしょう。
奈緒の神楽のモデルは、大歌(おおうた)というもので、天武天皇が琴を弾いていたときに、天女が舞い降りてきてそれに合わせ歌い舞ったという伝説を起源とする神楽です。
自分でも細かい設定をしたと思いますが、逆にこういった知識は物語を構成していくうえでのヒントにもなります。
奈緒の神楽についてまとめると、以下のようになります。
里神楽ではあるが、非常に御神楽に近い。日本古来の楽器のみを使った純和製の神楽である。「天皇が楽器を鳴らし、それに天の使者(神様?)が合わせ踊った。」ことを起源としている。
②鎌鼬
さて、鎌鼬というと鎌を持った鼬、あるいは3柱の悪神を指すことは有名です。性質が似ているため、中国における窮奇というものと同一視されることもあります。3柱の神とする場合には、1柱目の神が人を転倒させ、2柱目の神が刃物で切り付け、3柱目の神が薬をつけていくとか。(あるいは、神ではなく鼬が3匹となる場合もある。これは、2つの言い伝えの混同か。)そのような理由のためか「鎌鼬によって傷はできるが、血はほとんど出ない。」というのが通説となっています。
しかし、私がモデルとしたのは、三好想山(尾張藩士)の『想山著聞奇集』(随筆)のものです。気になった人はウィキペディアにもあるので参照ください。
いずれにせよ、この手の言い伝えは日本各地にあります。その中で一番有名な鼬の姿が『画図百鬼夜行』や『狂歌百物語』などの妖怪画の中で描かれ広がりました。それにより、イメージが一つに集中し収束したということなのでしょう。
鎌鼬という現象を科学的に説明することはいくらでもできる。もはや、超常現象と呼ぶのも愚かしい。鎌鼬という現象の検証のポイントは
①鎌鼬の傷ができる直前に『つまずく』、あるいは、『転ぶ』こと。
②鎌鼬による傷は、広く浅いこと。
の2つ。
山道を歩いているうちに、気づかずに木の枝や茨に引っかかり皮膚の表面に傷ができる。しばらくは気付かないが、転んだ拍子に無理な体勢となる。そして、傷がある部位の皮膚がひっぱられ傷が開く。
あたかも転んだ直後に傷ができるように感じてしまうが、傷ができた瞬間に本人は枝葉にぶつかったぐらいの認識でまったく気にしていないため、すぐ忘れてしまう。
怪奇現象などそんなものだ。
まあ、そういうことでしょう。
さて、次回よりやっと『和風ファンタジー』パートが始まりますね。ここから第1章としていいのか分かりませんが、一区切りで第0話にもつながるのでそういうことにしたいと思います。
今回も読んでいただきありがとうございました。