幻角との戦いで、

かなりのダメージを負ってしまった敬介。

激高した大宮が拳を放つが軽く受け止められ、

両者睨み合う。

一方で、

境界面より出現したシャドーを討伐していた美咲は、

茂みの奥に潜んでいた刑事の男と遭遇した。

そんなに身構えなくても大丈夫さ。
俺の名前は島本。
さっきも言ったが、刑事をやってる。
向こうで戦ってる黒髪の男の子とも1回会ったことあるんだ。

形山君と?

まぁ、ちょっとした捜査でね。
さっき、彼が倒した男いるだろ。
やつは土田大悟といって、半年前に失踪したはずなんだ。
やつが彼を尾行しているのもあって、俺も気になって跡をつけさせてもらった。
途中部下とははぐれちまったが。

そうだったんですね。
でも、その男は似ているだけじゃ?

俺も最初は他人の空似とも思ったんだが、最近起きていた失踪事件と重なる不審点が多くてね。
そしたら、こうやって不思議な力を使って戦うやつらがいるじゃないか。
君も含めてね。

さっき、光術士って言ってましたがどこまで知ってるんですか?

まぁ、今までの戦いは観てたからな。
普通じゃないことはよく分かっている。
それと、君たちの後ろには誰か指示を出している人物がいるんじゃないか?

この刑事さん、
カラウ先生のことも知ってるの?

島本がどの程度知っているのかはわからないが、

質問の鋭さにドキッとしてしまい、

困った感情が顔に出る。

えっと……。

まぁ、無理に言わなくてもいい。
戦いを見ていて思ったが、君たちが人間を守ろうとしているのはよく分かった。
それに、俺達刑事が敵うような相手じゃなさそうだ。

それは助かります。
どうしても話せないことなので。

だろうな。

格の違いが分かったか?

ぐふっ。

はぁ、はぁ、はぁ…………。

うぐっ!!

やめろ!大宮!!
死んじまう!!!!

あれから幻角に挑み続けていた大宮だったが、

本気を出した幻角の連続攻撃に、

体はもうボロボロだった。

次で死んだな。

くそっ!
動け!俺の体!!

大宮が何も言わずに、

ゆっくりと幻角に向かって歩くのを見た敬介は、

自分がなんとかしようと、

動かない体に鞭打つように太ももを叩いた。

死ね。

打面掌!!

かはっ!!

そして、

幻角の打面掌は容赦なく腹部に打撃を加え、

音にならない声を漏らしながら大宮は倒れた。

お、大宮……。

仲間が死んで、
やっと立てたのか?

大宮が倒れると、

それまで動かなかったはずの体が軽くなり、

敬介は立ち上がった。

しかし、

自身の情けなさからこんな状況になったと思い、

同時に光術士への恐ろしさも感じた。

そして、

敬介の中に負の感情が沸々と湧き上がってきたのだ。

幻角!!

お前は俺が殺す!!

咆哮の後に、

敬介は勢い凄まじく走った。

はぁっ!!

乱撃(らんげき)!!

通常は1発しか打たない腱撃を、

何度も連発で幻角の体中に入れていく。

幻角は敬介のとてつもない連撃に手も足も出ず、

そのまま後方に吹っ飛ばされ、

園内の岩に激突した。

なんだこいつ?
急に力が強くなりやがって。

砂煙の中から出てくると、

幻角は苦悶の表情を浮かべた。

すると、

視界の中に倒れている幻重が入り込んだ。

……………………。

ふっ。
運が向いてきやがったか。

…………。

幻角が何か思いついた頃、

敬介が歩いて向かってきた。

やるなら今か。

影吸面(えいきゅうめん)!!

幻角が掌を地面に当てると、

そこから影力が幻重の元へと伸びていき、

幻重の体を包み込んだ。

……………………。

影力で包まれた幻重の体は消えてなくなり、

一つの影力の塊が宙に浮かび上がっている。

こい!

幻角が呼びかけると、

その塊は幻角の手元までやってきた。

これでてめぇをブチ殺せる。

かなりのダメージを受けていたはずの幻角は、

幻重の影力を体へ吸収して自身の力へと変えた。

第2章---三幻僧編---(58話)-点線面⑧-

facebook twitter
pagetop