夜の商店街を鬼灯は歩いていた。商店街は仕事終わりのサラリーマンやOL、大学生、キャッチセールスなどで昼とまた違う賑やかさが漂う。
 鬼灯は人を避けつつ、カフェ止まり木に向かった。

 カフェ止まり木の営業は終わっている。窓越しに美見がカウンターでマスターとコーヒーを飲みながら話していた。

ミミタン

……あっ、鬼灯ちゃん


 鬼灯に気づいた美見が近づいてきた。

ミミタン

鬼灯ちゃんもコーヒー飲む?

鬼灯先生

いい、外で待ってる

ミミタン

遠慮しないで。ほら、カウンターに

鬼灯先生

悪いな


 美見はカウンターの椅子を動かした。鬼灯は言われるまま、カウンターに腰をかけた。数分後、マスターと話しつつコーヒー飲んだ。飲み終わったとき美見が話しかけてくる。

ミミタン

美味しかった、それじゃ行こっか

鬼灯先生

良かったのか、制服を持ち出して

ミミタン

大丈夫、これは自作だから

鬼灯先生

器用だな、私には無理だ

ミミタン

今度、教えてあげようか?

鬼灯先生

やめとくよ


 席から立った鬼灯はマスターに挨拶をして、店を出た。

鬼灯先生

それじゃ、また来ます。マスター

ミミタン

お疲れ様です

マスター

……


 店から出て鬼灯と美見は商店街へと向った。商店街に入るとメイド姿の美見がかなり目立って注目していた。

鬼灯先生

目立つな

ミミタン

そうだね、私は慣れてるけど、鬼灯ちゃんは恥ずかしい?

鬼灯先生

うん、少しな。学校と違って、視線の種類が違う

ミミタン

そうなの?

鬼灯先生

そうなの


 鬼灯はスマートフォンを操作して、BARオーシャンを探した。

鬼灯先生

もう一つ先か

 少し歩いて、雑居ビルがあった。そこの三階にBARオーシャンの看板を見つけた。鬼灯達はエレベーターに乗って、BARオーシャンに向う。

 エレベーターから出て、目の前にBARオーシャンがあるのが分かった。看板の外見が海を連想させる。

鬼灯先生

ここだな


 扉を開けると五名ぐらいの客が楽しそうにお酒を飲んでいた。店内は海を再現しているらしく、海の絵やサーフィンボード飾っていて、他にいくつか水槽が置いてあって熱帯魚やクラゲを飼っているようだ。

店員

いらっしゃいませ。好きな席へどうぞ

 店のカウンターから、店員が気軽に話しかけてきた。鬼灯と美見は定員と話しやすいようにカウンター席にすわる。

店員

注文が決まったら、声をかけてください

鬼灯先生

あの、店長はいますか?

朝倉

居ますよ。私が店長けん唯一の店員です。名を朝倉(アサクラ)です。よそしく


 どうやら、このチャラい人が店長らしい。

鬼灯先生

ああ、よろしく。そうだ、注文は決まっているんだ

朝倉

はい、何にしましょう


 鬼灯は吉良が言っていた。蒼い海の底を頼むことにした。

鬼灯先生

蒼い海の底を一つ

朝倉

OK、隣のメイドさんはどうする?

ミミタン

えーと、私は……

???

私と同じウーロン茶だよ。アサちゃん

ミミタン

――ふへっ


 いつの間にか美見の隣に知らない女性が座っていた。

朝倉

なんだ、タマちゃんの友達だったの。OK、急いで用意するから待っててね


 そう言うと朝倉はシェイカーを取り出してカクテルを作り始めた。
 鬼灯は突然、現われた女性に質問をした。

鬼灯先生

誰だ、お前

???

誰って、聞いていない? 私はただの協力者、協力者だよ。鬼灯先生

鬼灯先生

吉良が言ってた協力者はあんたのことかタマちゃん

協力者

タマちゃんって、呼ばないで偽名だから。せめて協力者と呼んで


 協力者と語る女性はニヤニヤとしながら、話を続けた。

協力者

いやーそれにしても、メイドさんを間近に見ると、んんーーん良いね。ねぇねぇ、ミミタン臭いかいで良い?

ミミタン

えっ、その、駄目です

協力者

そうか、まぁ、知ってたけど

協力者

それで……臭いかいで良い?

鬼灯先生

おい、いい加減にしろ!


 鬼灯の張り上げた声で一瞬、店内が静かになった。

協力者

まあまあ、鬼灯先生。怒らないで、スキンシップだよ

鬼灯先生

スキンシップ? 私にはそう見えんが

協力者

へぇー、そんなことより、そろそろ六十部先生から電話が掛かってくるから、覚悟してね

鬼灯先生

覚悟だと?

協力者

私は協力者って言っても、情報を伝えるだけ

協力者

誰の味方でもない。私は私の味方、情報を与えるのは敵を作らないため

鬼灯先生

どういう意味だ?

協力者

カクテルが出来たら分かるかも


 話をしているうちに朝倉がカクテルを持って来た。

朝倉

お待たせ、蒼い海の底とウーロン茶二つ

協力者

どもども、ささ、乾杯しよう

協力者

嫌、その前に――


 鬼灯のスマートフォンが鳴る。

協力者

六十部先生だね

鬼灯先生

……


 スマートフォンを確認すると六十部武蔵から電話が掛かっている。鬼灯は嫌な予感を感じながら電話に出た。

鬼灯先生

もしもし、何のようだ…………

鬼灯先生

――何、鮫野木が目を覚ました……だと、本当か!


 協力者はニヤニヤと笑っていた。

エピソード28.5 私はただの協力者

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