弓で刀に挑むなんてバカなやつだ。

くっ……。

双十線を腹部に受け、

かなりの深手を負ってしまった矢島だが、

なんとか立ち上がろうと右腕を震わせている。

その手にはもう光弓は無い

それ以上動くと死ぬぜ。
さっきは色々とぬかしてたが、見ろ!!
俺にはなんの傷も無い。

倒れている矢島が幻流を見上げると、

幻流は大きく両手を左右に伸ばして腹部を見せた。

所詮、お前は援護がお似合いの裏方野郎ってことさ。

……………………。

それに比べて、俺は前線で敵をぶっ殺しまくる。

……………………。

お前のようなバカから先にな!!

勝ったという優越感からなのか、

見下しながら立ち上がることのできない矢島を罵倒し続けている。

じゃあ、そろそろあっちのムカつく野郎共をぶっ殺しに行くか。

……………………。

幻流は右後方を一瞥し、微笑んだ。

じゃあな。
弓野郎。

……せな……さ。

あ?

お前、は……。

へっ。
もうお前に用は無い。

向こう、には……行けない。

体力がほとんど残っていない矢島は、

かすれ声で言った。

ずっと矢島を見下ろしていた幻流は痺れを切らし、

敬介らの元へ行くため振り返ろうとする。

行ってやるよ。
ん?

振り返るために体を曲げようとするのだが、

全くと言っていい程に体がビクともしない。

なんだ、これは?
体が全く動かない。
弓野郎が何かしたのか?
いや、こいつはたしかに俺が切った。

何とか体を動かそうとするのだが、

何度試しても変わらない。

くっ。

お前も僕もリタイアさ。

何?
俺はお前を切ったんだぞ。
お前は何もできていない。

僕も切ったさ。
君の、影力の源を。

まさか!!

幻流は手に持ってた刀を見る。

両手にそれぞれ持っていた黒い刀は、

柄の部分を残してあとは消え去っていた。

てめぇ……。

僕は君を切ったんじゃない。
その影石でできている刀を切ったんだ。

じゃあ、俺はもう……。

終わりだ。

想像以上にダメージを受けすぎて、刀を消滅させるのに時間がかかってしまった。
あとは幻角ただ一人。

みんな、頼む…………。

幻流を消滅させることに成功はしたものの、

矢島のダメージも相当なもので、

そのまま倒れこんでしまった。

降りしきる雨も次第に止み始めるが、

時は経ち、夜となっていた。

境界面は破ったろうが、もうシャドー共は外に放たれた。
目的は達しているんだよ。

ぐはっ!!!!

幻角と戦いを始めていた敬介と大宮は敗れ、

地面に倒れていた。

そこに、幻角が敬介の腹部に蹴りを入れて追い討ちをかける。

なんとか立ち上がり、大宮は攻撃を仕掛ける。

てめぇ……、吼波!!

破面掌(はめんしょう)。

破!!!!

幻角が大宮の吼波を右掌で受けると、

その光力は四方に飛散した。

第2章---三幻僧編---(55話)-点線面⑤-

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