僕たちは舟に歩み寄った。
するとエルムやライカさんは
ティアナさんを目の当たりにすると
思わず目を背け、
顔を曇らせながら瞳に涙を溜める。
でもライカさんは僕と同じ薬草師。
すぐに患者さんと向き合って
手を差しのべようとしているようだ。
ロンメルは相変わらずポーカーフェイスで
ティアナさんを見下ろしている。
彼の瞳にはこの状況が
どう映っているのだろう……?
僕たちは舟に歩み寄った。
するとエルムやライカさんは
ティアナさんを目の当たりにすると
思わず目を背け、
顔を曇らせながら瞳に涙を溜める。
でもライカさんは僕と同じ薬草師。
すぐに患者さんと向き合って
手を差しのべようとしているようだ。
ロンメルは相変わらずポーカーフェイスで
ティアナさんを見下ろしている。
彼の瞳にはこの状況が
どう映っているのだろう……?
あっ、トーヤ。
ティアナさんの容態を
診てもらえる?
……あ、うんっ!
僕は返事をしたもの、
なんとなく違和感を覚えた。
原因は分からないけど、
なんかしっくりこない気がする。
――おっと、それを考えるのは後回し。
今はティアナさんの容態を
診ることの方が先決だ。
僕は舟の上で横たわるティアナさんへ
歩み寄って意識を集中させる。
…………。
これは酷い。
全身打撲痕だらけだし
抵抗力が弱って
体力も低下している。
このままでは
感染症にかかる可能性も
ありますね。
そうですね。
――ロンメル、
ティアナさんを部屋へ
運んでくれる?
承知。
ただし、慎重にね。
あまり衝撃を
与えないように。
ならば念動力で
運んでやろう。
ロンメルがティアナさんに両手をかざすと
彼女の体はフワリと浮き上がった。
浮遊魔法みたいなものかな?
その後、僕たちは部屋のベッドに
ティアナさんを寝かして薬を投与。
簡単に体も拭いてあげた。
傷に障るから
綺麗に拭いてあげられないのが
可哀想だけど……。
どうですか?
うん、もう大丈夫。
しばらく療養は
必要だけど。
ティアナさんは
生まれつき体が
丈夫みたいなんだ。
回復力も強いよ。
では、ティアナさんの
容態が安定するまで
しばらくここに
滞在しましょう。
……その必要は……ない!
ティアナさん!?
なんとティアナさんは意識を取り戻し、
上半身を起き上がらせようとしていた。
するとライカさんが慌てて駆け寄って
その体を支える。
信じられない回復力だ。
僕の想像していた以上にすごい。
これならもう少し強い回復薬も
使えるかもしれない。
いや、その必要がないくらいに
自己治癒能力が高そうだ。
今は一刻も早く
先生にこの危機を
伝えないといけない。
トーヤ……だったか。
キミの薬はよく効く。
薬草師として
天賦の才があるよ。
そんな僕なんか……。
私の身を持って
キミの実力を把握した。
先生の弟子入りを
認めてあげる。
やったぁ!
それよりも
危機というのはなんだ?
先生の力を
悪用しようとしている
連中が迫っているの。
えぇっ!?
私は拷問によって
心と体を弱らされ、
さらに自白薬と魔法で
先生の居所を
吐かされてしまった。
ティアナさんは悔しそうだった。
でもそんなに自分を責めないでほしい。
だってこんなに酷い仕打ちを受けたら
やむを得ないもん。
でもすぐに到達は
出来ない場所だから
今ならまだ先回りできる。
移動の手助けを……。
わ、分かりました。
でもあまり無理しないで
くださいね?
無理くらいするわよ。
先生の命、そして
魔界の運命がかかっている
かもしれないんだから。
それはどういう――
なぜ私が先生の弟子だと
バレてしまったの?
それを知っているのは
リムたち直弟子だけなのに。
ティアナさんには僕の問いかけが
聞こえていないようだった。
何かに取り憑かれたようにブツブツと
独り言を繰り返している。
まだ意識や感覚が
本調子じゃないんだろうな。
それにしてもギーマ老師の命や
魔界の運命がかかっているというのは
どういう意味なんだろう?
落ち着いたら聞いてみよう。
彼女たちが
裏切るはずはない。
なのに……なぜ……。
トーヤ、
とりあえずティアナさんの
意思を尊重しましょう。
動くための手助けを。
そうだね。
ロンメル、また念動力を
使ってもらえる。
……承知した。
ティアナさん、
僕たちはどうすれば
いいですか?
私の施療院へ
連れていってくれ。
道は指示する。
では、トーヤ。
お前たちは舟に行って
準備をしていろ。
分かった。頼んだよ。
僕たちはティアナさんのことを
ロンメルに任せ、
部屋を出て舟へと移動しようとした。
でもその時、
なぜか彼はライカさんを呼び止める。
悪いがライカは
俺の手伝いをしてくれ。
えっ?
……あ、はい。
手伝いって何だろう?
――あっ、ドアの開け閉めとかかな?
ロンメルは念動力を使うために
手が塞がっているもんね。
次回へ続く!