リーベ

エンゲージコアに
蓄えられた魔気を元に、
刻弾は具現可能です。
ここから先は
その刻弾を具現化させる
方法をお教えします。

 刻弾の詳細がリーベから語られた。
 

 リスクはあるが、絶大な威力を持つ刻弾を発生させる。それがこの講義の目的のようだ。

リーベ

無論、初めに言ったとおり
この講義は強制ではありません。
自分には必要ないと思われる方は
参加しなくても構いません。

ユフィ

覚えておいて損はないはず。
使う使わないは、
状況やその本人次第ね。

 ユフィの言葉に誰も異論を挟まなかった。確かに選択肢は多い方がいい。ギリギリの局面、戦術は多いに越したことがないのだ。

リーベ

それでは皆さんこちらへ。

 こうなる事が分かっていたように、リーベは全員を奥の扉へと導いた。

リーベ

ここから先は迷宮と同じ、
魔気が充満する部屋になります。
個人差はありますが
身体に確実に負担が
かかります。
心して下さい。

 扉は固く閉ざされ重々しさを感じる。そして扉以上に重いリーベの物言い。それを聞いた後は、より一層その扉は重く、そして神秘的に映った。

アデル

少し怖いですね。
大丈夫でしょうか。

シャセツ

ふん。
ならばそこに居ろ。

ダナン

てめぇ!
少しは腕が立つからって
図に乗るなよ。捻るぞ。

シャセツ

喚くな。
面倒臭い。

アデル

喧嘩はやめて下さい!
私なら大丈夫です。
ダナンさんも落ち着いて。

ダナン

アデルちゃんがそう言うなら
俺はいいんだがよ。

シャセツ

フン。
……やれやれ、
俺は入るぞ。

 扉に進むシャセツ。誰も何も声を発さないのを確認して、リーベは扉を結晶師ニグに開けさせた。

 二重になった扉の先、さらに二重の扉の先に部屋は広がっていた。部屋は統一された色彩であり、荘厳でいてどっしりとした装飾が施されている。

シャセツ

…………。

ハル

なんだか重苦しいっすね。

リーベ

この部屋はこの訓練場の中で
特別な場所。
迷宮ほどではありませんが
魔気が充満しております。

ジュピター

こりゃマジで堪えるな。
オイラ苦手かも。

ユフィ

確かに……。
でも迷宮は
もっと重苦しいんでしょう。

リュウ

実際には何も見えない、
聞こえない、触れない。
……でも、
何か……、何かある。
正体の分からない感じだな。

アデル

リュウさんのその意見。
すごくしっくりきます。
ゆっくりゆっくりと
身体が蝕まれそうな……。

リーベ

お二人のご意見は
魔気の雰囲気を
上手く表現されていますね。

 誰もが感じる違和感。神妙になるのは自然であり無理もない場所だった。タラトは言葉を発さず、背中をボリボリと掻いた。

リーベ

『五感の裏側』……。
魔気に関わる者達の口癖です。
本来の危険の正体が
感じ取れない気持ち悪さ。
残念ながら
慣れるしかありません。

シャセツ

もうわかった。
早く始めろ。

 シャセツが無駄話を嫌うのはもう御馴染みだ。その言葉に誰も続かなかったのは、実のところ全員がそれを望んでいたのか。それとも現状を言い表す事が出来なかったのか。――全員、ただ、リーベに視線を集めるしかなかった。

分かりました。
つい話が長くなるのは
私の悪い癖です。
百聞は一見に如かず。
まずは御覧頂きましょう。
我々人間の絶大な戦力
――刻弾を。

 ~錬章~     45、刻弾

facebook twitter
pagetop