――八日目、講堂。
――八日目、講堂。
講堂に集まっているのは、メナ以外の八人。その中でハルは、怪訝な表情を浮かべている。
そこに昨日、ここに来るように申し付けた結晶師ニグが入ってきた。
おはようございます。
全員お揃いのようで。
それではすぐに、
全員じゃないっす!
どういう事でしょうか?
メナが呼ばれてない理由が
分からないっす。
…………、
早いからです。
彼女には早い。
それだけです。
結晶師ニグは、細い目を開けてあっさりした声色で告げた。声を荒げているハルと対照的だ。
は、早いって……
詳細は私が話しましょう。
ハルの言葉を遮ったのは、講堂に入ってきたばかりの結晶師長リーベ。結晶師ニグに目配せをして、演台に進んだ。
ここに集まって頂いたのは
以前に話した戦力について
説明する為です。
それじゃあ、
尚更メナだけ呼ばないのは
おかしいじゃないっすか。
ハルの意見をきっちり最後まで聞き届け、リーベは返答する。
刻弾……、
我々がそう呼んでいる戦力。
それを扱うには、
結晶が身体に馴染まなければ
いけないものなのです。
こくだん……。
それがエンゲージコアを
着用するもう一つの理由なのね。
……だからって
メナをのけ者にするなんて
酷いっす。
刻弾を扱えるかどうかは
その者にとって
生死に関わる事です。
我々は適正に判断し
お伝えしただけです。
それに能力があるないではなく
馴染みにくい体質なだけです。
マリオンさんが他の人より
劣っているなどという
事ではありません。
静かで澄んだ声は、ハルを少し落ち着かせた。そこに明るく快活なダナンの声が飛び込んでくる。
まぁまぁ、先に覚えて
教えてやりゃあ
いいじゃねぇか。
いよっ、旦那ぁ!
良い事言う!
残念ながら
ハルはアホだから
すぐにメナに
追い抜かれそうだがな。
ハル、アホ。
げん、き、だせ。
タラトにアホって
言われるのは
ハルぐらいだな。
モジャモジャ……
クリクリ……
三人のやり取りを見ていたハルは、険しい顔色をいつもの明るいアホ面に戻した。
ははは、
ジュピターは
クリクリでモジャモジャっす。
…………、
そうっす。
旦那の言う通りっすね。
流石ハル。
皆で早く覚えましょう。
顔色をまた険しくしたハルは、シャセツに視線を合わせる。それに気付いたシャセツも応戦する気構えのようだ。
ふ~ぅ、
やはり貴様と話すと疲れる。
そぉ~言わないで
仲良くするっすよぉ~。
離れろ!!
懐くなっ!
おい、貴様っ!
変な所を触るんじゃない!
あ、あの……。
そろそろ…………。
いつも沈着冷静なリーベが、皆が集まる講堂で騒ぎ立てるハルにペースを乱される。しかしどこか暖かいリーベの表情は、今までよりも近しい存在に思えた。