僕はラグナさんから酷い仕打ちを受けた。
するとそれを目の当たりにしたカレンは
冷静さを失ってラグナさんに
斬りかかろうとする。
僕はラグナさんから酷い仕打ちを受けた。
するとそれを目の当たりにしたカレンは
冷静さを失ってラグナさんに
斬りかかろうとする。
ダメだよっ、
カレンっ!
僕は慌ててカレンを背中から抱きしめて
必死に動きを止めた。
すごい力で激しく暴れている。
僕なんかの力じゃすぐにでも
振りほどかれてしまうかもしれない。
カレンさんっ!
カレンちゃん!
冷静になってくださいっ!
すかさずライカさんやサララも
前側からカレンの体にしがみついて
僕の援護してくれた。
でもまだカレンの興奮状態は収まらない。
カレン、
落ち着いて!
僕は大丈夫っ!
大丈夫
だからぁっ!
っ!?
くっ……。
やっと僕の声が届いたのか、
カレンの体から少し力が抜けた。
だけどいつまた
飛びかかっていくか分からないから
体を離すことは出来ないけど、
ひとまずは勢いを止められたと思う。
エルムは憎しみを含んだ目で
ラグナさんを睨み、
ロンメルは不機嫌そうに佇んでいる。
するとラグナさんは小さく舌打ちをして
僕たちを蔑むように見やる。
カレンお嬢様に
汚い手で触れるな。
下民と中民。
サララ殿も
ご遠慮いただきたい。
…………。
……くっ!
私は私の意思と
ご主人様以外の命令には
従いません!
……クズどもが生意気な。
うぅううぅっ!
ラグナッ、
アンタまたそういう――
……気に入らんな。
カレンもラグナとやらも。
っ!?
…………。
不意にロンメルが間に割って入った。
そしてまずはカレンの方へ視線を向け、
呆れたような顔をしてため息をつく。
まずカレン。
あんな安い挑発に乗るな、
愚か者が。
騒ぎを起こせば
お前以外の全員が
牢屋行きだ。
それが分からぬのか?
っ!
いくら俺でも
数十人の魔族が相手では
分が悪い。
数十人?
物陰に兵士が潜んでいる。
殺気を押し殺しているが
俺には分かっている。
えぇっ!?
…………。
ラグナさんはかすかに口元を緩めた。
つまりロンメルの言っていることは
きっと本当なのだろう。
直後、ロンメルはラグナさんの方を向き、
なぜかニタニタと怪しく微笑む。
そしてラグナ。
トーヤのこととなると
カレンは冷静さを失うと
知っててやったのだろう?
何のことでしょう?
主であるグラン侯爵から
カレンに群がる虫を
退治してから連れてこいと
命令されたか?
それとも自分の判断で
それをやって、
点数稼ぎをしたかったのか?
…………。
いずれにしても
まさに飼い犬だな。
フッ、笑える。
犬の分際で
俺のトーヤに
手出しするなど
不愉快極まりない。
――殺すぞ?
ロンメルは一転して
明確な敵意をラグナさんへ向けた。
するとそれに反応するかのように、
ラグナさんも鋭い目つきになって
ロンメルを睨み返す。
ふたりの間には激しい火花が散っている。
ヴァンパイアの分際で
魔族に逆らうとは
身の程を知れ。
俺の実力に
気付いているのだろう?
恐れを感じるぞ、ククク。
その言葉、
そっくりそのまま返そう。
どうやらふたりは
牽制し合っているようだ。
やっぱりロンメルは頼りになる。
それにしてもロンメルが本気で戦ったら
どれだけ強いんだろう?
僕たちも帰らずの遺跡で戦ったけど、
全く歯が立たなかったもんなぁ。
全ての能力が高いというのは
もちろんだけど、
不死というのがやっぱり最大の強みだ。
どんなに強い魔族でも寿命はあるし、
大きなダメージを受ければ
死んでしまうもん。
カレンよ、
サララと一緒に
グラン侯爵に会ってこい。
ティアナの身柄を
抑えられている以上、
そうするしかないだろう。
それはそうだけど……。
カレンはまだ抵抗があるみたいだった。
でも今の状況を考えれば
ロンメルの言っていることが最善だと
僕も思う。
ほかに手段はなさそうだし。
カレン、僕たちは
宿屋で待ってるよ。
だからお願いできる?
……う、うん。分かった。
サララ、
カレンのことを頼んだよ。
お任せくださいっ!
これで文句は
ありませんよね?
ラグナさん!
まだ問題がありますか?
……では、参りましょう。
カレンお嬢様、サララ殿。
ラグナさんはライカさんや
エルムの問いかけには無反応だった。
視線を合わせようともしない。
こうして僕たちはカレンやサララと別れ、
宿屋へ向かうことにした。
次回へ続く!