副都ではアンカー以上に身分による差別が
色濃く残っているようだった。

それとラグナさんは僕たちのことを
色々と知っているみたい。

やりにくいなぁ……。
 
 

ラグナ

では、カレンお嬢様。
まずは
お屋敷へお戻りください。

ラグナ

そののち、
ティアナのところへ
ご案内いたしましょう。

カレン

ど、どうして
ティアナさんのことを!?

ラグナ

詳細についてはご勘弁を。
ただ、グラン様は
何でもご存じとだけ
申し上げておきましょう。

ラグナ

さぁ、参りましょう。

カレン

お断りよ!
自分たちの力で捜すから!
さっさとどこかへ行って!

ラグナ

残念ながらティアナの
消息を突き止めても、
会うことはかないません。
牢の中におりますゆえ。

カレン

牢っ!?

ラグナ

貴族院に刃向かった罪で
城の地下牢に
押し込められております。

カレン

くっ……。

 
 
まさかティアナさんが
牢屋に入れられているなんて
思いも寄らなかった。


体制に批判的な相手は
片っ端から排除するなんて
かつての魔界と変わっていない。

身分制度だけじゃなくて
そんなところまで同じだなんて。



女王様の想いが全く伝わっていない。
聞く耳すら持っていないのかも。
それが悔しい。
 
 

ラグナ

もし面会をお望みなら
どうすればよいのか、
カレンお嬢様なら
お分かりですよね?

カレン

……家に帰って
お父様に頭を
下げろっていうの?

ラグナ

私の口からは
申し上げられません。
カレンお嬢様自身が
ご判断ください。

カレン

っっっ!

トーヤ

カレン……。

 
 
カレンは悔しそうだった。

でも断るという選択肢が
なさそうな状況だから当然かもしれない。



――よっぽどお父さんや家のことに
嫌悪感を持っているんだろうなぁ。

でもこの町の状況を考えれば
心の優しいカレンが
反発したくなる気持ちも分かる。


やがてカレンは
苦虫を噛み潰したような顔をしながら
半ば自棄になって叫ぶ。
 
 

カレン

……分かったわ。
頭くらい下げてやるわよ!

ラグナ

結構なことでございます。
グラン様もお喜びに
なることでしょう。

カレン

ただし!
家に行くのはここにいる
全員一緒じゃないとイヤ!

ラグナ

カレンお嬢様、
お立場をお考えください。
これからグラン様に
お願い事を
するのでしょう?

ラグナ

お屋敷に中民や平民、
ましてや下民のような
汚れたゴミを入れては
グラン様のご機嫌を
損ねるだけです。

 
 
 

カレン

っ! ラグナっ!
今の発言っ、
取り消しなさいッ!

 
 
 
 
怒りと憎悪に満ちた瞳で
ラグナさんを睨み付けるカレン。
感情が一段と高ぶったような気がする。

一方、ラグナさんは涼しい顔をして
肩をすくめる。
 
 

ラグナ

いくらカレンお嬢様の
お申し付けでも
それは出来かねます。

ラグナ

そのような事実が
グラン様に知れたら
お叱りを受けて
しまいますゆえ。

 
 
 
 
 

ラグナ

特に下民など
クズ以下!
存在価値すら
ない!!

 
 
 
 
 
冷たくて蔑むようなラグナさんの瞳。

そして僕に向かって唾を吐き、
それが頬へと当たる。
 
 

トーヤ

あ……あぁ……。

 
 
 
 
 
 
 

  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その瞬間、かつて王城で
みんなから差別を受けていた頃のことを
思い出してしまった。



――胸が苦しくて痛い。

思わず涙が滲んでくるけど、
なんとか流れ出すのを我慢して
ハンカチで頬の唾を拭く。
 
 

トーヤ

…………。

 
 
 
 
 

カレン

うぁああああぁっ!

 
 
 
 
 
カレンは目を血走らせ、
レイピアを抜いてラグナさんに
向かっていこうとしていた。

完全に頭に血が上り、我を失っている。


いけないっ、止めなきゃ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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