ラグナさんはカレンの前まで歩み寄ると、
膝をついて深々と頭を下げた。

それに対してカレンは
苦虫を噛みつぶしたような顔をして
唇をワナワナさせている。
 
 

ラグナ

カレンお嬢様、
お久しゅうございます。

カレン

…………。

ラグナ

本日、カレンお嬢様が
副都にご到着なさることは
分かっておりました。

ラグナ

そうなれば
ここへ立ち寄ると思い
お待ちしておりました。

カレン

……相変わらず
手回しがいいのね。
どうせお父様の
差し金でしょう?

ラグナ

お答えしかねます。

カレン

……ふんっ!

ラグナ

副都にいらっしゃる間は
お世話をするよう
グラン様より仰せつかって
おります。

ラグナ

どうかご理解くださいませ。

カレン

…………。

トーヤ

カレン……。

 
 
今にも泣き出しそうになっている
カレンに僕は歩み寄り、
肩に手をかけようとした。


でもその瞬間――
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

痛っ!

 
 
ラグナさんは手から魔力の塊を放ち
その勢いで僕の手を弾き飛ばした。
さらに即座に2撃目を準備する。

その目は敵意に満ちていて
本気で僕を殺そうとしているみたいだ。
 
 

トーヤ

…………。

ラグナ

汚らしい手で
カレンお嬢様に触るな!
下民の分際で恐れ多いっ!

トーヤ

っ!?

ラグナ

ここは王都ではない!
副都では身分こそが絶対!
立場をわきまえよ!
殺すぞ?

トーヤ

ひっ……。

 
 
ラグナさんの目を見て、
忘れかけていた感覚を思い出してしまった。


王都で暮らしていた時、
影では僕に向けられていた差別の視線。
虐められていた毎日。

差別なんかに負けないって
気持ちは今でもあるけど、
怖いことには違いない。
 
 

カレン

ラグナッ、やめなさいっ!
もしトーヤやみんなを
これ以上傷付けるなら
私は許さないから!

ラグナ

承知いたしました。
ですが解せませぬ。
下民など奴隷以下の存在。
生きている価値など
ありませんのに。

カレン

そういうところが
嫌いなのよ!
お父様もこの町も!

カレン

女王様は身分による
差別を撤廃したのに……。

ラグナ

女王陛下も貴族院を
敵には回せません。
特に魔界が流動的な今は。
副都は今まで通りです。

サララ

それで身勝手な
振る舞いを
しているわけですか。
酷いですねぇ。

ラグナ

ですが上民である
サララ殿には
副都の方が居心地が
良いのではないですか?

ラグナ

あなたの一声で
気に入らない相手を
抹殺出来るのですから。

サララ

っ!? 私のことを
知っているんですかっ?

ラグナ

もちろんです。
元・四天王のデリン様の
使い魔ですから。
有名ですよ。

ラグナ

……おっと、デリン様の
現在のご身分は
王国軍総司令でしたね。

トーヤ

…………。

 
 
ラグナさんはどうやら僕たちの情報を
色々と承知済みらしい。
どうやって調べたのかは分からないけど。


気を付けておかないといけないな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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