あの家には父も母も居ます。けれど、本物ではありません。それは良く出来た偽物、ロボットみたいな物でした。僕はその偽物の家族と暮らすことになりました。
三人については行方不明ってことになっています。警察に本当のことを話しても信じてくれないでしょう。こうして僕は悠々と生きている。あの悪魔は今もこの街で優雅にしているでしょう。
あの家には父も母も居ます。けれど、本物ではありません。それは良く出来た偽物、ロボットみたいな物でした。僕はその偽物の家族と暮らすことになりました。
三人については行方不明ってことになっています。警察に本当のことを話しても信じてくれないでしょう。こうして僕は悠々と生きている。あの悪魔は今もこの街で優雅にしているでしょう。
どうです、あり得ないでしょう
そうだな、ここに来る前は相手にもしないな
……
信じるんですね
まぁな、それに言っただろう。多少のことでは驚かないて
……そうでしたね
さて、最後にやることがある
野沢は話し終わると日泉の所まで歩き、目を見つめてモジモジしながら話す。
……あの、日泉さん。僕はあなたにちゃんと謝らないといけない
ん?
日泉さんが毎日、話しかけてくれてありがとう。あの時の私はどうかしてた。だから、迷惑で無視してたわけじゃない
うん
悪かったのは僕で、日泉さんは全然悪くない
ごめんなさい
野沢は頭を深く深く下げた。
う、うっ、良いんだよ。話してくれてありがとう
信じるの? さっきの話
当たり前だよ。だってだって、わーん
日泉は泣きながら、野沢に抱きついた。
何ですか、みっともない
だって~嬉しいだもの
嬉しいなら、笑えよ
二人の誤解は解けたようだ。けれど、野沢がとった行動は、お互いを傷つけ、三人の犠牲を出してしまった。この真実は変えようがない。
良かったね。淳くん
ああ
急に肩を掴まれた。びっくりして、後ろを振り向くと六十部が真面目な表情をしていた。
鮫野木くん、話があるんだけど良いかしら
はい。どうしました
いいから、来なさい
わ、分かりました
早々と歩き出した六十部を鮫野木は追いかけていった。
何処に行くの?
ちょと、六十部が話したいことがあるから聞いてくる。多分、これからのことを話すんだと思うけど? お前はここで二人の相手でもしててくれ
うん、分かった
みんなの前で話せないこと、どんな話なんだ? 少し不安になりながらも、六十部の後に付いていった。
六十部が足を止めた場所は野沢達が居る中庭の近くにある。体育倉庫の前だった。六十部は周りを確認すると話し出した。
周りには誰も居ないようね。鮫野木くん
はい、そうですね
ところで話って何です。みんなには話せない内容ですか?
ええ、そうよ。特に日泉桜が居る場所では
……そうですか
どうしたんだろう? 六十部がこうも一人の人間を避けるなんて、なんだか六十部らしくない。
ところで優しい鮫野木くん。あなたはまだ野沢心を本当に助けるつもり
そうですけど?
残念だけど、私達がどう頑張っても野沢心を助けられないわ
えっ
俺は耳を疑った。六十部は真剣な目で鮫野木を見つめている。
ハハ、冗談ですよね
私の目を見てもそう思う
どうしてですか?
理由は単純よ。彼女に帰る場所は何処にもない……から
――――六十部、何、言ってるんだ? ああ、あいつの家は今は廃墟になってるんだっけ。そうか、帰れないよな
そうじゃない。私が言ったのはそのまんまの意味よ
……嘘だろ
…………
沈黙の後、六十部は重い口を開いた。
あなたには本当のことを話さないといけない。私がここに居る理由を
理由? 友達を探しに来たんじゃないのか?
それは、本当の理由を隠すための偽りの理由
鮫野木の胸を苦しめる。恐らく六十部が話すであろう真実を聞きたい自分と聞きたくない自分が胸の中でせめぎ合っているんだろう。
本来、私はある人から依頼を頼まれて、あの廃墟に調べに来たの
その依頼者は園崎桜(そのざきさくら)旧姓。日泉桜よ
それって、どういう意味だ
私も一瞬、自分の目を疑ったわ。けど、依頼者の園崎桜と日泉桜の人相は似すぎている。日泉桜が園崎桜の十年前の姿だと言われたら認めるしかないわ
そう言うと六十部は胸ポケットから手帳を取り出し、鮫野木に一枚の写真を見せた。
これは……!
どう、鮫野木くん。あなたはこれを見て、どう思う?
どうって、認めるしかないじゃか
写真に写っている人は六十部が言っていた園崎桜の事だろう。そしたら日泉桜はあまりにも似ている。いや、同一人物にしか見えない。
六十部。お前は一体、何者なんだ
そうね。改めて自己紹介しましょう。私は六十部紗良、あなたと同じ高校の同共生。そして私立探偵よ
まじか
目の前に堂々と可憐に佇む。六十部紗良は嘘、偽りなど語っていない。真剣な表情が全てを語っていた。彼女は俺と同じ高校に通うクラスは違うが同級生で探偵であることを除けば普通の女の子だ。