え、な、何言ってんだよ。
身を粉にして働いてきたお兄さんにそんなどっきりは、




冗談がすぎる。

おおかた、いつまで経っても
検挙できない自分に
嫌味のつもりで言ったのだろう。








そう、思ったけれど。



下がりなさい紫季。
それ以上その男に近づくのは危険だ

そうだろう?

灯里!

待ってくれ。犯人ってそれはどういう、

現場できみが立ち去るところを見たと言う証言があったそうだ。
被害者はきみの同僚……木下さんといったっけ













どういうことだ。

最初に木下女史が殺害された夜は
俺はあの場所にはいなかった。




行ったのは
過去に戻った時の、

そ、んな

西園寺様の屋敷を覗き見ていたこともあったって?
きみがそんな奴だとは思わなかったよ



侯爵邸に行ったのも、


待てよ。そんな、証拠は、

見たと言う人がいる。
その目が証拠だ

そん……!















どういうことだ?


西園寺侯爵の家に行ったのは
あの事件のあった後。

何回目かの十一月六日の後の……



戻った先の、
七日。



















今日は十一月六日ではないのか?


最初の世界に
戻ったのでは、ないのか?


俺はやってない! 俺は

動くな。
それ以上近寄るつもりなら容赦はしない




灯里の手に

光るものが見える。


そんな物騒なもん、

紫季。電話を

はい



紫季が走り去って行く。
多分、警察に連絡するつもりだろう。


……このままじゃ……!




言い訳は
きっと通じない。


くそっ!






そんな。
























そんな。


















逃げたぞ!

探せ!





ここは、元の世界ではないのか?


元の世界に
戻してくれたんじゃないのか?



……何故……















































遠くで
鐘の音が聞こえた。










【陸ノ壱】十一月六日、三度・肆

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