その時だった。


暗い廊下の先から
足音が聞こえたのは。











そして、明かり。






ゆらゆらと揺れながら
近づいてくる。





嫌な想像が浮かぶ。



もし、そうなら









馬鹿な。考えすぎだ







……でも、




























































なんですか。夜中に何度も大声を上げて





現れたのは
恐れていた相手ではなく

いつも帰宅すると
出迎えてくれる彼女だ。






明かりをつければいいことなのに
ランタンを持って現れるところが

いかにも彼女らしい。








紫季!

……よかった


晴紘は胸を撫で下ろす。

演出は多少違うが
今のところは記憶にある日常と
変わっていない。



最初の十一月六日に
戻って来られたのかもしれない。

















……灯里は?

灯里様でしたら工房にいらっしゃいますが?

撫子の……修理?

よくご存じで

そこまでご存じの上で、先程の大声なのですか?

人形の修理とは大変繊細なもので、些細な音でも気が削がれてしまうものなのです。それを、

いや、えっと、悪かったって






いる。


この世界には灯里も存在している。










で、さあ。
つかぬことを聞くけど、今日は何月何……

……それより



紫季は晴紘の言葉を遮った。






なんだ? 今度は






今日は六時に帰ると仰ったのはどのお口でございますか?









……なんて
記憶のとおりに怒られるのだろうか。


と、思っていると


























先の連続殺人の犯人が晴紘様だというのは本当のことですの?

え!?







彼女の口から発せられたのは
予想だにしない言葉だった。











【陸ノ壱】十一月六日、三度・参

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