空は闇に覆われている。




夕陽が残していったオレンジ色は
稜線の彼方に消えた。



灰味がかった時計塔も、
白く砂埃が舞う道も、

空と同じ色に染まっている。






































時計塔が時を刻む。
一時を告げる鐘が鳴る。

その音に、
草むらを飛び出したトカゲが
足下を走り抜けていった。








時計を見る。

一時五分。













また……戻ったのか


しかしこの世界が
元の世界だという保証は
どこにもない。









犯人というのは本当ですの?

このまま帰っても
同じことを繰り返すかもしれない。















どう……したらいいんだ




あの時計塔の女は
十一月六日に戻すと言った。

しかしこのざまだ。








戻すというのは嘘だったのか?

それとも
「なにか」が作用して
元に戻れないでいるのか?





このまま帰っても、同じことに……


それなりの月日を過ごした相手が
自分を信用してくれない。


そればかりか
罪を犯したと思われている。







その事実が足を重くする。

絆、と呼ぶには弱いよな

俺たちの関係は……






























もしかしたら
違っているかもしれない。

そんな淡い思いは
すぐ
諦めに取って代わられてしまった。


所詮はただの居候だし


晴紘は
足を森園邸とは違う方角に向けた。

























































気がつけば
とある住宅地にきていた。

起伏の多い立地のせいか、
住宅地だというのに
すぐ近くに都心が見える。





ここは……










何故ここに
足が向いたのかはわからない。


だが、今、
晴紘の前には
西園寺侯爵の屋敷があった。












なんで……

真相を知りたいと
無意識に思っていたのかもしれない。

思えば
ここが一番怪しい。

しかし。




























冗談ではない。


相手は華族だ。
また「覗いていた」などと
あらぬ嫌疑をかけられる。




















晴紘が踵を返しかけた
その時。

では、ごきげんよう

女の声が聞こえた。















晴紘は慌てて

生垣の陰に身を潜めた。








【陸ノ弐】十一月六日、四度・壱

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