クロードの放った吹雪の魔法が外れ、
それによって船室内の火が消えた。
ホッと息をついたウィル船長だったけど、
まだ戦う気があるのか僕を睨んでいる。
そっちがその気なら、
また火の魔法で攻撃してやるっ!
バカも~んっ!!!
船の中で火系の魔法を使うな!
なんつ~ことをするんだっ?
お前、心中する気かっ!?
えっ?
……やれやれ。
分かったよ。
非礼は詫びるし、
危害も加えないと約束する。
だから大人しくしてろ。
ナイフを持った
無知なガキほど
危険なもんはないからな。
ウィル船長は椅子にドカッと腰をかけると、
深いため息をついた。
彼は何が言いたいんだろう?
僕に対する揶揄だとは思うんだけど……。
例えば、
幼い子どもは面白半分に躊躇なく虫を殺す。
そういう子が強力な武器を持ったら
危なくて仕方がないということなのかな?
でも僕はカレンたちを守るために
魔法で攻撃しただけ。
戦いなんだからそれくらいは普通だ。
ど、どういうこと?
船にとって火事は大敵。
だから船においては
火系の魔法を使わないのが
暗黙のルールなのです。
緊急事態を除いて
ってことではあるけどね。
そ、そうなのっ!?
し、知らなかった……。
まったく、
とんでもねぇガキを
乗せちまったもんだ。
お前ら、
きちんとそのガキを
管理しておけよ?
も、もとを正せば
カレンを虐めたり
トラップを仕掛けたりした
ウィル船長が
悪いんじゃないかっ!
うぐっ!?
そ、そんなことあったか?
記憶にねーなー。
と、とにかく
ここから出ていけ。
俺は忙しい。
まだ言いたいことはあったけど、
クロードに促されて
僕たちは船長室から出た。
ま、揉めごとが収まるのなら
それに越したことはないもんね。
僕たちも無用な戦いは避けたいし。
ただ、警戒は緩めずにいよう。
もう危害は加えないと
ウィル船長は言っていたけど、
何をしでかすか分からないもん。
トーヤ、
守ってくれてアリガトね。
すごく嬉しかった。
てへへ……。
それにしても驚きました。
まさかトーヤが
魔法を使うなんて。
そうだ、トーヤ!
なんで魔法が使えるの?
それはね――
僕はふたりに事情を説明した。
魔法力が大きく上がったということや
隠れて練習していたことなんかを。
今まで僕の特殊能力のことを
知らなかったクロードは
特に驚いていたみたいだった。
男子、三日会わざれば
刮目して見よ――ですね。
でも無理はしないでね?
うん、分かってる。
僕は薬草師。
戦闘では回復がメインなのは
これからも同じだよ。
だけど万が一のために
ふたりにも色々と
魔法を教えてほしいな。
分かりました。
うんっ!
僕の申し出にふたりは快く応じてくれた。
備えあれば憂いなし。
僕も強力な魔法が使えるようになれば、
パーティの戦力が大幅に上がる。
戦いがないのが一番いいんだけどね……。
次回へ続く!