こんな卑劣なことをするなんて許せない!

僕はウィル船長に体当たりをして、
全体重と勢いをそのままに弾き飛ばす。
いくら力が弱くたって
それくらいなら僕にだって出来る。
 
 
 
 
 

トーヤ

うぉおおぉっ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

ウィル

んぐぁっ!

 
 
ウィル船長はそのまま床へ尻餅をついた。
そして目を丸くしながら
僕を指差して唇を震わせている。


きっと麻痺薬が利かないことが
信じられないんだろうな。

でも僕には状態異常無効化の能力がある。
こんなもの、僕には通用しない。
 
 

トーヤ

僕はお前を許さないッ!

ウィル

なっ、なぜ動ける!?
この麻痺薬はドラゴンですら
効き目があるんだぞっ?

トーヤ

ぼ、僕は薬草師だ!
効かなくする手段くらい
いくらでも知っている!

 
 
僕の特殊能力のことを
話すわけにはいかないので、
リアリティのある嘘で誤魔化した。

まぁ、薬草師というのは本当だしね……。


幸い、ウィル船長はそれを信じたみたい。
歯ぎしりをして悔しがっている。
 
 

トーヤ

カレンをいじめるヤツは
誰だろうと許さない!

カレン

トーヤ……。

トーヤ

船だって別の便に
変えればいいんだ。
お前なんか
魔法でやっつけてやるっ!

カレン

えっ?

クロード

トーヤが魔法をっ?

 
 
カレンとクロードが驚くのは無理もない。

だって僕の魔法力が上がったことは
話していなかったし、
隠れて魔法の練習をしていたことも
知らないはずだから。

夜、みんなが寝静まったあとに
ロンメルに教わりながら
練習していたんだよね。


そして僕は魔法を操れるようになった。
その成果を今こそ見せてやる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

闇よ、魔族の神よ!
我が求めに応じ、
その邪悪なる力をこの手に!

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
僕がスペルを唱えると、
掲げた手に小さな炎の塊が出現した。

それをウィル船長へ向かって放つッ!
 
 

トーヤ

ファイアーっ!

ウィル

いぃっ!?

カレン

んなっ!

クロード

トーヤ!?

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕の放った炎はわずかにウィル船長を逸れ
奥の壁に当たった。
やっぱりまだコントロールが難しい。

飛び散った火の粉は
周りに置いてある書類などを焦がす。
 
 

ウィル

あわわわわっ!

 
 
 

 
 
上着を脱いで激しく扇ぎながら、
慌てて火を消そうとしているウィル船長。

魔法は命中しなかったけど、隙はできた!


僕は急いでカレンとクロードに
状態異常を治す薬を飲ませた。
これで形勢逆転だ!

早速、動けるようになったクロードが
スペルの詠唱に入る。
 
 
 
 
 

クロード

フリズ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
クロードの放った吹雪の魔法は
ウィル船長には当たらず、
燃え続けている壁や書類の方へ。


命中精度が高いクロードが
狙いを外すなんて珍しい。

そのせいで火は全て消滅する。
 
 

 
 
 
 
 

クロード

ふぅ……。
これで安心ですね。

ウィル

た、助かった……。

 
 
ウィル船長は大きく息をつくと、
僕の方を向いてギロリと睨んでくる。

まだ僕たちと戦う気なのか?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第133幕 トーヤの新たな力

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